11.ケモミミまかみさん
しっぽを揺らしながら上機嫌に歩くまかみさん。
その後ろを、私とモルエはついていく。
今は川沿いを上流側に進んでいる。石室と同じ方面だ。
道中、改めてお互いの自己紹介をする。
「改めまして、わたくしは大口真神……まかみです。集落では主に狩り担当と賑やかしをやってます」
自分で自分のことを賑やかしっていうのか……?
「私は、御巫悠。そして、この子はモルエちゃんっていいます」
「モルエ・ラ・モールと申します。どうぞよろしくお願いします」
「これはこれは、ご丁寧に……っ」
モルエの真面目な挨拶に慌てた様子で、まかみさんもペコペコと頭を下げた。
なんか、憎めないなこの人。どこか、誰に対してもテンパってしまう新人OLさんみたいな雰囲気がする。
「ところで、ハルカさんはどちらの神だったんですか? あまり聞き馴染みのないお名前なんですよねぇ」
「神も何も……私、人間です。訳あってこの世界に来ちゃって……」
「えええええっ!? 人間んんんんっ!?」
まかみさんが大きく仰け反った。
「あっ、でも……すんすん……っ、ああぁ、たしかに、そんな匂いもしますね! 懐かしい香りです!」
と思ったら、急に近づいてきて私の首元をすんすんしてきた。
うぐふっ……くすぐったい!
「でも……やっぱり私たちと同じ匂いもあるんですよね。ほんのりと神臭が……」
「神臭て……え、"同じ"ってことは……もしかして、あなたも?」
「ええ。一応神さまでした。元ですけどね」
私は静かにひれ伏した。
そうかぁ。そりゃあ、ケモミミケモしっぽなわけだ。
「ははー……」
「い、いやいや! やめてくださいよ! あくまで元ですからねっ? それにぶっちゃけ、大した神じゃなかったですし! 名ばかり神みたいな感じでしたんで! 実際、人間さまの方が位が高い感じでしたし、むしろこっちがひれ伏す立場で……!」
そしてまかみさんもひれ伏した。
お互い、しばらく「ははー」と頭を見せつけ合う。
「……まあまあ。このままだと何もできませんし。お互い尊重し合うってことで、ここは頭を上げてはいかがですかお二方?」
モルエのド正論で私たちは同時に面を上げた。
最年少の子に諭される私たちって……。なんか、モルエが一番高貴に見えてきたぞ。
「そういえば、モルエも死"神"ってことは……」
「いえ、大層な名前がついてますが、そんな立場ではありませんよ。そういう種だと思っていただければ。なのでどうか今まで通り接してくださいね?」
私が中腰になりかけるのを遮るように、モルエは即答した。
よかった。ここ数日でかなり馴染めてきたと思ってたのに、急に神化したらどう対応しようかと思ったよ。
「あ、着きました着きました。ここです」
そんなこんなで、ようやく目的地に到着したらしい。……て。
「あれ? とくに何もないですけど……」
私達の視界には、今まで通り小川と大小それぞれの石が転がった草原があるだけだ。
まかみさん、どこかと勘違いしたのかな?
ちょっとドジっ子なイメージもあるし(←失礼)。
少し息を整えるついでに、手近にあった石に腰をおろす。
「……ん?」
この座った心地。
この景色。
はて、この感じは…………。
前回今回とちょっと文量が少なめでした(汗) 次回からまた普通くらいに戻りますو




