表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
312/396

第三百十二話  何度見ても・・・

翌朝、起きてみると、体の節々が痛かった。いわゆる、筋肉痛の痛みとよく似ている。


魔力を使いすぎたためか、それとも、昨夜はヴァッシュと結構長い時間イチャついたからか。きっと、後者が原因である可能性が高そうだ。


言っておくが、そんな激しいことをした覚えはない。ただひたすらに、ヴァッシュのかわいさに胸をときめかせていただけだ。


ヴァッシュに腕枕をしている左腕をゆっくりと引き抜く。それだけで、腕にけっこうな痛みが走る。歯を食いしばりながら、何とか引き抜いて、ちょっと腕を廻してみる。ああ……何とも言えぬ鈍痛が体中を襲う。


「よっこら……イテテ……」


まるでオジイさんのように、ゆっくりとベッドから降りる。そのとき、ヴァッシュが目を覚ました。


「……どうしたの?」


「ああ、ちょっと、筋肉痛だ」


「大丈夫?」


「たぶん、ね」


「今日はゆっくりと休んだら?」


「休んでもいいけれど、ちょっと無理かな」


「何か予定でもあるの?」


「予定はないけれど、ヴァッシュを抱きしめるのがちょっと難しいかなって」


「……バカ」


ヴァッシュは顔を真っ赤にしながら、シーツで顔を隠してしまった。そこまで恥ずかしがることもないだろうに。一体、何を想像したのだろうか。


「きゅー」


そのとき、ワオンが起きてきた。トコトコと俺の足元までやって来る。まだ、眠そうだ。彼女は後ろ足で立ち上がると、前足を上げて、バンザイを取るようなポーズをした。抱っこをしろという合図だ。


「よ~し。……イデデデデ……」


ワオンを抱っこすると、腕と背中に痛みが走る。それでも何とか彼女を抱っこして立ち上がる。すると、顔を俺の肩に当ててスリスリしてくる。やっぱり肩に痛みが走る。


いつもなら、軽々と持ち上げられるワオンが、何だか少し重たく感じた。それでも、彼女を抱っこしながらベッドから離れる。


ふと振り返ってみると、ヴァッシュが上半身を起こして、枕元に置いてあった紐で、髪の毛をポニーテールにしていた。


なぜか、彼女は裸だった。真っ白い肌と少し膨らんだ乳房が、まるで名画のような美しさだった。


彼女は、髪を整えながらゆっくりとベッドから降りてきた。そのとき、ふと、俺の視線に気が付いた。


「……何よ?」


「いや、キレイだなと思って」


「……バカ。もう何度も見ているでしょ」


「いや、何度見ても、きれいだ」


ヴァッシュは顔を真っ赤にしながら、一糸まとわぬ姿でバスルームに向かった。俺も顔を洗おうと思っていたところだったのだが。仕方がない、後にするかと思っていたら、ヴァッシュがバスルームの扉を少し開けて、ひょっこりと顔だけを出した。


「ねえ、お湯を入れてくれない?」


ワオンを抱っこしたまま、バスルームに向かう。大きな盥が置かれていて、ヴァッシュはその真ん中で、両足を抱えるようにして体育座りをしていた。先ほど結んだ髪の毛は、いつの間にか解かれていた。真っ白い肌と美しい金髪に朝日が当たって、何とも神々しい光景だ。


右手を差し出してお湯を出す。


「ちょっと熱めにしてちょうだい」


わかった、と言いながら火魔法を調整して、お湯の温度を上げる。彼女は右手で盥の中の湯をかき混ぜていたが、やがて、傍らに置いてあった小さなバケツのようなものを手に取ると、それで湯を救い、勢いよく頭からそれを被った。パシャパシャと滴がこちらに飛んで来る。


彼女は何度か湯を頭にかぶる。そんなに汗でもかいたのだろうかと聞いてみたが、ヴァッシュはゆっくりと首を振る。


「何となく、お風呂に入りたかっただけよ」


「ふ~ん、そうか。何だったら、体洗うの、手伝おうか?」


「いいわよ。それよりも、そんなに見ないでちょうだい。何だか、恥ずかしいわ」


「いや、できれば、ずっと見ていたいな。本当にきれいだ」


「……」


彼女はチラリと俺を睨んだが、やがて、タオルを手に取ると、それを湯に浸して、ゴシゴシと体を洗い始めた。


「……お湯、体にかけようか?」


「……いいわ」


「……ところで、何で裸で寝ていたの?」


「は?」


「確か、パジャマを着て寝たよね? 寝ている最中に、脱いじゃったか?」


「何を言っているのよ。寝ているときに、アナタが脱がしたんじゃない」


「え? いつ?」


「いつかは覚えていないけれど、真夜中よ。突然、乱暴にパジャマを脱がされて、ビックリしたわ」


「で、その後は……」


「ものすごい力で抱きしめられて……。そのまま、アナタは寝ちゃったのよ」


「そ……それは、知りませんでした。失礼しました」


「……」


何だか気まずい雰囲気になってしまった。何となく、だが、ヴァッシュは怒ってはいなさそうだ。俺は、何かあったら声をかけてくれと言ってバスルームを後にした。


俺が出て行った後も、バスルームでは水が跳ねる音が響いている。かなり入念に洗っているのだろうか?


そのとき、扉がノックされた。入室を促すと、若い男性が入ってきた。彼は、シーアに仕える者だと手短に自己紹介をして、俺の近くに寄ってきた。


「恐れ入りますが、外においでいただけませんでしょうか。村が……大変なことになっているのです」


大変なこと?? 一体何だ??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ