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ハラス牛のステーキ丼~白い聖獣と一緒に~5

 うん、やっぱりちゃんと知りたいな。ランフォスさんのこと。

 今は聞かせてもらえないとしても……。知りたいということは伝えておこう。


「……ランフォスさん」

「なに? ニーナちゃん」

「気が向いた時にランフォスさんの隠してること、話してくれると嬉しいです」


 側に行ってしゃがみ込み目を合わせてお願いすると、ランフォスさんは綺麗な青の瞳をぱちくりとさせた。


「ニーナちゃん……」


 ランフォスさんだって、したくて隠し事をしているわけじゃないだろう。

 そもそもが彼は隠し事をするような性格じゃないと……思うし。

 そんなランフォスさんが、隠さなければならないようなことなのだ。それを無理に聞き出すのはきっと酷なことなのだろう。

 だけどいつか私のことを信頼して、話してくれると嬉しいなとは思うわけで。た、旅の仲間なんだし!

 そんな諸々の想いを込めて見つめていると、ランフォスさんの表情がふっと緩んだ。


「そうだね、俺の覚悟が決まったら。ちゃんとニーナちゃんたちに話すね」

「今、僕が聞き出してもいいですよ? ……もちろん、温厚な手段で」


 そう言うキールの手は、バチバチと雷光を纏っている。

 キール! それ、絶対に温厚な手段じゃないよね!?


「キールさん、そろそろお肉が焼けたんじゃないかなぁ!」


 ランフォスさんは私の後ろに素早く隠れて、フライパンを指し示す。

 そこには、いい焼き色になったお肉が鎮座していた。たしかに食べごろって感じがする!

 お口に広がる肉汁の旨みを想像してしまい、私のお腹はきゅうと小さな音を立てた。

 うう……お腹空いたなぁ。


「……キール、お肉が食べたいな」

「わかりました! すぐにご用意します!」


 つい甘えたことを言ってしまうと、キールは俊敏な動作で残りの支度を整えていく。

 お肉はあっという間に切り分けられ、ピンク色の美しい断面を見せる。食べやすい薄さに切られたステーキが熱々のご飯の上に載せられ、肉汁を使って手早く作られたソースがたっぷりとその上にかけられた。すごい、キールの調理はいつ見ても華麗な早業だ……!


「どうぞ、ニーナ様!」


 深めの皿に盛られた出来たてのステーキ丼を、王冠でも渡すかのように恭しく渡される。

 それを受け取り目をやると……そこには素晴らしい光景が広がっていた。

 たっぷりとしたお肉の海、そこにかけられた見るからに濃厚なソース、そしてお肉の下できらめく白米……!


「おいしそう……!」

「さ、冷めないうちにお食べくださいね」

「でも、まだ全員の分が揃ってないよ?」


 お肉が大きいこともあり、フライパンには二枚しかお肉が載らないのだ。まだ二人分しか、食事は出来ていない。


「ひとまずニーナ様と……一応のお客様から先に食べてください。肉を焼くのにはあまり時間がかかりませんし、僕たちの分もすぐにできますので」


 ……それは申し訳ないと思いつつも、私は目の前で湯気を立てる熱々のステーキ丼の誘惑に抗えなかった。


「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな……! シラユキ君、食べよう?」


 キールからもう一つステーキ丼を受け取り、シラユキ君に渡す。


「わ、ありがとうございます!」


 彼はお礼を言ってステーキ丼を受け取り、漂う香りを嗅いでほにゃりと表情を緩めた。

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