7話+ ドヤァ。
7話+ ドヤァ。
クロッカは生まれた時から壊れていた。
いわゆる精神的潔癖症で、
だから、彼女にとって、この世界は耐えきれない汚物だった。
醜さの塊。
本当なら、一秒たりとも、こんな世界で生きていたくはなかった。
だから、何度も消えてなくなりたいと思った。
死にたいと思った回数は数えきれない。
しかし、彼女は逃げずに戦った。
戦って、
戦って、
戦って、
そして、だから、
――ついに出会えた。
おそらくは自分と同じ、精神的潔癖症のはぐれ者。
高潔さと強さを併せ持つ狂人。
センエース。
『龍神族の中でも歴代最高クラスの天才であるクロッカ』に認められた傑物。
――クロッカは思う。
『あの異次元砲の威力を鑑みるに、おそらく、潜在能力は、お兄様に匹敵する』
まだ荒いが、
しかし、強大な可能性を秘めた天才であることに間違いはない。
帝都へと帰る途中の馬車の中で、
クロッカは、ポツリと、
「私は、お父様とお兄様を殺す。そして、私はこの世界における唯一の支配者となる」
そのトンデモ発言を耳にして、
右ナナメ前に座っている執事ラーズは、
ため息を枕にし、
「大胆な発言ですな……できれば聞かなかったことにしたいのですが。いえ、さすがに、ここで逃げるわけにはいきませんね」
こほんとセキをはさみ、
「お嬢様、考え直した方がよろしいかと」
そう提言した。
そんな心底しんどそうな顔をしているラーズに、
クロッカは続けて、
「私はすでに、お父様よりも強大な力をもっている。決して不可能ではないわ」
「実行可能か否かの話はしておりませんよ、お嬢様。倫理の話をしているのです」
「そうよ。私は倫理の話をしているの」
「……」
「私は、間違いなく、現存する『龍神族』の『誰』よりも強い」
「はい、お嬢様は確かにお強い。しかし、ご家族全員を『一度に相手取れるほど』ではございません」
「そうね……私以外の全員で徒党を組まれたら、さすがに勝てないわ。お爺様とヒイ御爺様も、老いて一線を退いたとはいえ、魔力の量は膨大……」
現存する龍神族は、クロッカを入れて5人。
父と兄と祖父と曾祖父とクロッカの5人。
「……『十七眷属』たちも……全員が敵にまわると非常に厄介ね」
『十七眷属』
――すなわち『龍神族の系譜に連なる17名』は、
例外なく『超天才ばかり』で、
かつ『龍神族という親分』から『多大な恩恵を得ている』ため、
全員が全員、おそろしく強い。
ちなみに、カソルン将軍も、『十七眷属』の一人。
センにあっさりと飛ばされたが、しかし、カソルンは、
決して『ヤツは十七眷属の中で最弱』というポジションではなく、
むしろ、序列的には三位と、かなり上の方。
センがケタ違いに強すぎるだけであり、
カソルンは、この世界で最高位の実力者。
――と、そこで、
「セン」
クロッカに名前を呼ばれ、
『隣に座って窓の外を見つめていたセン』は、彼女の方に視線を向けた。
「あなたの拳に込められているアリア・ギアスを教えて」
「……」
「2つもワガママを聞いてあげたのだから、そのぐらいは教えてくれてもいいのではなくて?」
「……」
「カソルンを倒したあの拳……『異常なほどの圧力』を感じたわ。歪んでいて、尖っていて、どこか切ない……そんな圧力」
「……」
『黙っているセン』の顔を見つめながら、
クロッカは、フっと柔らかく微笑んで、
「その沈黙が答えね。あなた……おそらく、その拳に『寿命』を懸けているわね?」
「……」
「命の圧縮……『その覚悟』は『強大な力』を与えてくれる。天賦の才を持つ者が、命を削ることでしか得られない極端な『諸刃の剣』……それがあなたの拳の秘密。そうでしょ?」
ドヤ顔でそんなことを言ってくる彼女に対し、
センは、
(……全然違いますけど……『汎用性の低い諸刃の剣』が嫌いだからこそ、必死こいて磨き上げてきた『汎用性抜群の低コスト技』なんですけど……)
と思う事しかできなかったとさ。
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