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 二年生に上がる頃には、王子と平民の関係は周知の事実となった。


「エミーリア様、貴方何度も忠告させていただいておりますが立場を弁えるべきです。カラフィアート侯爵令嬢に失礼だと思わないのですか? 」


 突然自身の名が登場し彼女達を探し、気付かれないように近付く。

 

「カラフィアート侯爵令嬢は王子の婚約者有力候補と言われているのに、貴方との悪評が広まりお二人は婚約発表できずにいらっしゃるんですよ。申し訳ないと思わないのですか? 」


「私はルドヴィーク様と友人なだけで……」


「まぁ、アルドロヴァンディ王子をルドヴィーク様とお呼びになるなんてっ。カラフィアート侯爵令嬢のお叱りを受けますよ」


「そんなっ、私はただ友人として……」


 エミーリアという平民の生徒を忠告する令嬢達は、私の名を口にしていた。

 私と令嬢達は挨拶をする程度で特別親しい関係ではない。

 なのに、令嬢達が私の名を口にする意味……

 善意からかもしれないが、私としては身に覚えが無いので止めて頂きたい。

 周囲を見回すと数名の生徒はいるが、この状況に率先して関わろうとする者はいない。

 私の名前が聞こえたので仕方なく令嬢達の元へ向かう。

 

「そこの皆様、私の名前が聞こえたのですがお尋ねしてもよろしいかしら? 」


 本当はこのような場に巻き込まれたくないのが本音。

 エミーリアを取り囲んでいた令嬢達は私の登場に驚くも、瞬時に勝ち誇った表情を見せる。


「カラフィアート侯爵令嬢。私達は令嬢の為を思ってこちらの平民に忠告をしておりました」


「忠告とはなんでしょう? 」


「アルドロヴァンディ王子と親しくしている事を何度も注意しているのですが全く態度を改める様子がなく、私達もどうしたものかと困惑しておりました」


「令嬢達に疑問なのですが、アルドロヴァンディ王子と親密することが何故いけないのでしょうか? 」


「えっ? それは……だって……彼女は平民で……」


 私の想定外の質問に令嬢達はしどろもどろ。


「私は王子がどの方と親密になろうと構いません。王子の交友関係に私が口を出す事ではありませんから」


「カラフィアート侯爵令嬢は……王子の婚約者に内定と……」


「それは噂であって、私と王子に婚約の話は一切ありません」


「そんなっ……えっ……」


「それに私は彼女が平民だとしても何の問題もありません。彼女の学園入学は学園長が許可したもの、私が異を唱えることはありません」


「……そう……ですけど……」


 エミーリアを取り囲んでいた令嬢達は当然自分達を援護してくれると思っていた私が、思いもよらない反応を見せたことで先程までの勢いを失いその場を去って行く。


「……カラフィアート様……」


 私もすぐに立ち去るつもりだったが、彼女の方から声を掛けられるとは思わなかった。


「何でしょう? 」


「その……誤解です。私は王子と……」


「エミーリアッ」


「……ルドヴィーク様っ」


 絵本のように王子は愛する者の危機的状況に駆け付けた……少し遅いけど。

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