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ドタバタな卒業パーティーが終わると漸く落ち着くことが出来た。
あの後、ベルナルトから手紙と花束が届いた。
『オフェリア・カラフィアート侯爵令嬢。
卒業パーティーで突然婚約の申し込みをしてすまなかった。
エミーリアに感化されたとはいえ、衆人環視の中婚約の申し込みを選択をしたのは俺自身。
気持ちを伝える最後の機会だという思いが先走り、令嬢の気持ちを考えずに行動した結果だ。
幼い頃の失態をどうにか挽回できないかと気が急いてしまい、令嬢には更なる迷惑をかけた。
許してほしいとは言わない。
これ以上令嬢に迷惑の掛かることはしないと約束する。
今後は、令嬢に婚約の申し込みをする事も諦める。
最後に、幼い頃の失言について謝罪をさせてほしい。
母の茶会に参加した令嬢を見た瞬間、俺はカラフィアート令嬢に一目ぼれしてしまった。
自身の感情をどう伝ていいのか分からず、令嬢に対して「友人にはなれない」と宣言した。
あれは、友人ではなく『婚約者になりたい』と伝えたかったんだ。
今更そんな事を言ってもどうにもできないのは分かっている。
ただ、決して令嬢が嫌いだったわけではない。
それだけは信じてほしい。
今まで申し訳なかった。
ベルナルト・リンドフスキー』
「……そう」
彼の手紙に返事を書くつもりは無い。
その返事をきっかけにズルズルと続くのも面倒。
これで私と彼の関係も綺麗さっぱり終わりだと思いたい。
「これで漸くあの二人から解放されるのね……」
学園生活が終わり、学生気分から一人の大人へと生活が変化していく……と言っても、私はニート生活。
この世界では、令嬢が外で働くというのは滅多にない。
婚約している者は結婚の準備に入り、婚約者のいない者は頻繁にお見合いをしているらしい。
私は婚約者はいないが、お見合いもしていない。
釣書とやらは沢山届いているが、お断りしている。
「お嬢様、手紙が届いております」
「誰から?」
「……王族からです」
「王族?」
今は気分ではないから後で気が向いた時にでも読もう~なんてことは相手が王族では許されない。
何故王族から私に手紙が届くのか分からず、不安はあるものの内容を確認。
「お茶会の招待状?」
身構えたが、単なるお茶会の招待状だった。
私だけでなく、卒業した貴族を招待とある。
「卒業パーティーの穴埋めかな?」
ルドヴィークは当事者で被害者のような立場。
あの婚約騒動に巻き込まれた卒業生への配慮としてお茶会を開催したのかもしれない。
私はそう結論を出し、軽い気持ちで参加を決意。
「完璧でございます」
お茶会当日、私の身支度に対する気合の入れように違和感を感じ王宮へ向かう馬車の中同乗している使用人に尋ねた。
「今日はなんだか気合入っているわね」
「当然です。今回のパーティーは王子の婚約者と側近の候補者を決定するものに違いありませんもの」
「えっ……そうなの?」
「お嬢様っ気が付かなかったのですか?」
「う……ん……」
ただのお茶会への招待だと思っていたけど、ルドヴィークの婚約者? 側近候補の選出? そんな事聞いていない。
「本来であれば、王子の婚約者と側近を決定するには遅いくらいです。内定はあったみたいですが、婚約者も側近も白紙になったようです。なので、これから本格的に選ぶそうですよ」
「……そこに私も?」
「当然ではありませんか。お嬢様は侯爵令嬢なのですから」
「ひっ……」
私としてはのんびり過ごしたいのに、そのようなゴタゴタは学園時に懲りた。
もう王子の恋愛事に巻き込まれたくない。
今からでも欠席できないかと思考を巡らせていると馬車が停車する。
「お嬢様。到着いたしました」
「……行きたくない……」
───完───




