第23話 ララベルの危機
そんな楽しいララベル生活であったけれど、しばらく滞在したある日。
「あ、ちょ、うわわああ」
目の前を歩いていた少年が横道に連れていかれたと思ったら、なんか麻袋に入れられそうになっていた。
襲撃犯は黒いバンダナの三人組だ。
「あっ、フィオちゃん」
「レナ様、行きますよ」
「はいっ」
私たちは急いで後を追い、三人組に魔法を使う。
杖を一応、急いで出す。
「シャドウ・バインド」
おなじみのフィオちゃんも拘束魔法が発動、三人とも動けなくなる。
「ウォーター・シュート」
頭から水を掛けたら、三人ともヘタってしまった。
「降参かな?」
「こ、降参だ……くそ」
ピューと口笛を吹いて、門兵を呼んでもらう。
「お前ら、なにやってる!」
「誘拐か?」
「なにを企んでいたんだ」
まあ、とにかく三人ともお縄になったのだけど……。
どうもララベルの町長さんの家にお邪魔して話をすることになった。
丘の上にある邸宅で、それほど豪華というほどでもなかった。
町長さんの第一印象はいい人そうなのかな。
「というわけで三人組の誘拐犯だったんです」
「そうか。でもそいつらもトカゲの尻尾切りだろうな」
「そうですか。というと、もっと大きな組織なんですか?」
「どうも海賊が混ざりこんでいるらしくてな、頭の痛い話なのだが」
「そうですか」
「子供がよく誘拐されているらしい」
「んん、じゃあ、私とフィオちゃんが囮になれば」
「囮ですか。危ないですよ」
「これでも、カッパー級冒険者ですし」
「そ、そうですか。では、やってみますか、囮」
ということで、私とフィオちゃんで、町を歩く。
そして町の警備員の中から、ひそかに私たちを追いかける人たちがいる。
「ね、フィオちゃん」
「そうだね。レナ様」
適当な話をしながら薄暗い町を歩いていく。
と黒いバンダナのどこかで見たことがあるような人たちが私たちを囲む。
「それ、かかれ」
「う、うう」
まだまだだ。
狙いはこの人たちではない。
私たちはそのまま捕まったフリをして、麻袋に入れられていく。
今頃は、衛兵の人たちが跡を追っているはずだ。
「ふ、ふうう」
「やっと出してもらえた。ここどこだろ」
「それほど遠くはなかったですね」
「そうみたい」
どこかの倉庫みたいな場所だ。
子供ばかり狙って、売り払っているのだろうけど、なんだか不気味だ。
「お前たちは、これから奴隷になって売られるんだぞ」
「怖いか。怖いだろ」
「ふんっ」
「かわいげがないガキだぜ。まったく」
別にかわいげがなくてもいい。
まったく、と思っているのはこちらだ。
それからしばらくして。
外が騒がしくなってきた。
「子供たちはどこだ!」
「お前たちが隠しているのは分かっている!」
お、衛兵たちが集まってきたらしい。
んじゃ、そろそろやりますかね。
すっと魔法で縄を火魔法でちょいちょいと切り、外に脱出する。
「わーわーわー」
「ぎゃーぎゃぎゃー」
「きゅぴぴぴい」
私たちは騒いで外を走り回ると、さすがの海賊たちも右往左往しはじめる。
さらに衛兵が集まってきて、それどころではないらしい。
母屋に向かって一直線に走り、中のバンダナ海賊を一人ずつ無効化していく。
「あなたが親玉かな」
「そうだが、どうして誘拐した子供がここに」
「なぜでしょう」
「く、はやくなんとかしろ! みんな、どうした!」
「外はみんな、やっつけたわよ」
「く、子供のくせに!」
親玉のおじさんは、別に権力はあったみたいだけど、実力はそうでもないらしく、すぐに降参して捕まった。
その際、レクスが突っ込んで頭突きをしたものだから、気絶していた。
ナイス、レクス。
再び私たちは町長の家に戻ってきて、話をしている。
「いやあ、よく捕まえてくれました」
「それほどでも」
「ずっと尻尾が掴めず、苦労していたのです」
「ですよね」
「今回の報酬は、こんな感じでございます」
ということで金貨をちょろっと貰いました。
なんだかこうやってお金貰っていると、私たちのほうが悪い仕事しているみたいな気分になってくるから不思議だ。
ひひひ、お代官様~みたいなやつ。
「レナ様もフィオ様も、それからレクス様でしたっけ、お三方とも、お強いようで、頼りになります」
「あはは、ありがとう」
「せっかくですので、お魚でも食べていってください」
またお魚料理をたっぷりいただいた。
ご飯美味しいっ。
ここにこないと、これほどは食べられないからね。
もしくは魚さえあれば、料理自体はできるけど、けっこう捌いたりするのは面倒だ。
お醤油はないんだけど、魚醤とかはあるので、ある程度代用できると思っている。
美味しい魚料理を、お腹いっぱい食べて、うれしいな。
町に潜んでいた海賊が捕まり、町もなんだか前よりも雰囲気がよくなった気がする。
「らっしゃい、らっしゃい、魚安いよ」
「魚、魚あるよ」
「貝とかどうだい、貝」
みんな客引きにひっきりなしだ。
子供たちも、外で遊べるようになったらしく、元気に走り回っている。
うんうん、いいんじゃいかな。こういうの。
陰ながら、応援しちゃうね。
私たちは別に勇者でも聖女様でもないので、いいんだ。
こうやって町が元気になってくれて、スローライフがしやすい世界になってくれればね。
ということで、お魚を満喫した私たちは、一路、王都に戻ることになった。




