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銀髪幼女のスローライフ旅 ~お料理バンバン魔法バンバン~  作者: 滝川 海老郎


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第12話 バーナル男爵

 大通りを外れて、横道に入る。

 横道にしてはちょっと大きな通りで、この先に代官邸があるのが、なんとなく分かる。

 道は石畳で整備してあるようで、ほとんど揺れない。


「割と、道とかは整備してありますよね」

「まあな、よく言えば真面目な仕事ぶりだね。バーナル男爵は」

「なるほど」


 別に悪い人ではないのだろう。

 なんだか、貴族というと、悪い人たちが暗躍しているみたいなイメージ強いよね。

 これは私が前世で変な話ばかり読んだせいかもしれない。

 ラーミ村にも秋に徴税官が来て、野菜や麦、薬草などを回収に来ていたけれど、それほど高い税率ではなかったはずだ。

 きっと地域一帯を治めているフミレス伯爵の人柄が出ているのだろう。


「フミレス伯爵は、どんな人なんですか」

「フミレス伯爵かぁ。あの人は質実剛健かな、実直な人だよ」

「へぇ」

「よくそんなことまで知っているね」

「商人さんに地図とか聞きまして、その時に」

「なるほど。しっかりしている」

「えへへ」


 ギルド長もこうしておめかししていると、いっちょ前の貴族みたいだ。


「ギルド長も貴族みたいですね」

「これでも、準男爵なんだよ」

「へ、へぇ、そうだったんだ」

「なに、かしこまらなくてもいいよ。あはは」

「そうですか……」


 ギルド長は暫定的に準貴族になるため、準男爵が貰えるんだって。

 そうはいっても、これは半分は形式的なものに過ぎないので、大丈夫だそうだ。

 大丈夫なのか、不安しかないけどね!

 準貴族は会議とかにも出ないし、特に権限もないそうだから、ギルド長が言っているように問題ないのかも。


 適当な話をしているうちに屋敷に到着した。

 エスコートしてもらい、両手に花みたいなっているギルド長を挟んで並ぶ。

 今日はパーティーではなく報告会なので、どんどん中に入っていく。

 逆に私とフィオちゃんは緊張してくる。

 こんな貴族の屋敷なんて初めてだし、そもそも来る予定ではなかった。


 対面する前に、カレーを作らなければならない。

 どんなに早くても三十分はかかる。


 執事さんが横から出てきて、私とフィオちゃんを台所に案内してくれた。

 立派な道具が揃っていて、シェフもいた。


「お邪魔します」

「今日は、よろしくおねがいします」


 すでに先に話が通っているらしい。

 ワイバーン肉を出す。


「これがワイバーン肉ですか」

「珍しいですね」

「僕は初めて見ました」


 スタッフの人も珍しそうに見ている。

 それを全部ぶつ切りにして、野菜も刻んでもらう。

 自分でやってもいいけど、手伝ってくれるというのでお願いしちゃった。

 鍋にワイバーン肉を入れて炒めていくと、すでにお肉のいい匂いがしてくる。


「これだけでも美味しそうです」


 そこに野菜も入れて煮たら、ハーブを類を追加していく。


「匂いが変わってきましたね」

「なんだか、嗅いだことのない料理ですね」

「珍しいです」


 こうしてちょっとだけ煮込んで、それっぽくしたものが、はいできあがり。


「ワイバーン肉のカレーもどきです」

「もどき、なのかい?」

「はい、正式な調合とか知らなくて、自己流なので」

「へぇ、そうなんですね」


 完成したものを味見をしてもらう。


「うむ、これは美味しい」

「ワイバーン肉もいい味が出ています」


 それで料理係として先に報告会議をしているバーナル男爵の所へと向かった。

 私はちなみに皮鎧の格好のままなので、どうみても冒険者風の少女だ。


 バーナル男爵は貴族っぽいといえば貴族っぽい緑髪の男性だった。

 結婚して子供がいるかな、くらいの人だ。


「ワイバーン肉のカレーです」

「カレーとな」

「スパイスシチューですね」

「なるほど」


 すでにいい匂いが漂っているので、興味深そうにしていた。


「これに討伐したというワイバーンが」

「入っています」

「うむ」


 そういって一口スプーンで食べる。


「うまい、な。とても美味しい」

「ありがとうございます」

「ワイバーン肉も美味しいが、カレーのスパイスもなんともいえないな」


 その後は、もくもくとカレーを食べる。

 食べる。食べる。食べる。

 一緒に食事にしているギルド長も横で美味しそうに食べていた。

 だけど少しバーナル男爵の気配に気押されしていた。

 それくらい美味しいらしい。

 こんだけ態度に出ていると、さすがにうれしいけどね。

 でもなんだか複雑だよね。


 カレー自体はそれほど流行っていないスパイス屋さんという名の塩屋さんで買ってきただけだし。

 あの匂いにつられて、あれこれスパイスを混ぜてみて、使っただけだもの。

 自分の発明とはいいがたい。

 ワイバーン肉は、ドラゴン肉の下位互換とか言われる、そこそこ高級肉だ。

 普通の人は食べたこともないだろうけど。

 ということで、強い香辛料に強いお肉が合わされば、強強に決まっている。


 私と手伝ってくれたフィオちゃん。

 それからレクスもにこにこして食べているところを見ている。


「それで、こちらのレナの火魔法が決定打になってワイバーンを倒したのです」

「それも彼女が……でも銀髪でかね」

「そうですね」

「属性なしの能無しと言われているが、違うようだな」

「はい。カレーもそうですが、なかなか将来、見どころのある冒険者になりそうです」

「あっぱれじゃな。あっぱれ」


 なんだかこそばゆい紹介をしてくれた。

 フィオちゃんも闇魔法の補助が効いたとほめられて、うれしそうにしていたし。


「そうだな。急だったので、特に褒美として渡せる品も思い浮かばなくてな」

「別に、そういうのじゃないので」

「そうか。では、金貨でいいだろうか」

「もちろんです」


 ということで金貨を十枚ほどいただいた。

 ありがたや~ありがたや~。

 それからやっぱり、銀髪って「属性なしの能無し」扱いなんだね、ほーん。



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