第七話 オルカ「先制攻撃」
(夜這いではない。これは相談を待ちかけるだけ──)
心の中で何度と繰り返していた。
コンコン。
しばらくするとノックの音に反応して、扉が開いた。
「!? オルカ、こんな時間にどうしたの?」
予想外だというのか、かすかに声色がうわずっている。
「少し相談に乗って欲しいことがあって──ダメですか?」
ダメで元々、夜中に部屋に出入りしているのを目撃されるだけでも十分。
外堀は少しずつ埋めていけばいい。
(もし、拒絶されたら──)
しかし、オルカの思惑に反し、レオナルドは廊下をキョロキョロと見回すと扉を大きく開けた。
「駄目じゃないさ。夜は冷える。さあ、入りたまえ」
「それでは、お邪魔します。もう、寝るところだったんですか?」
「いや、寝れなくてね──」
「じゃあ、ちょうど良かったです。私、お酒持ってきてますので一緒に飲みましょうよ」
(前後不覚に陥って、のっぴきならない関係になったら、きちんと責任取ればいいだけですよ。二人とも大人なんですから──)
ニコニコしながら、二人分のコップを用意する。
「お酒は強いんですか?」
「人並みはね。君の方は大丈夫なのかい?」
「ええ、少しなら」
(口が裂けても酔ったことがない、なんて言えないよ。女性は可愛いとか、守ってあげたい感じの方が男性の心を掴みやすいもの──)
しかし、その手に握られているお酒が、アルコール度数80超えていることをオルカは忘れていた。




