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すぐに見つかる



 モンに促されて洞窟の出口から出てみると、そこはどこかの村の外れのようだった。木があるていど適当に生えていて、人も少ない。モンはきっと、二人のために人目に付きにくいところを探して出口にしてくれたのだろう。

 とはいえ、ドラゴンがいればだいたいの人間は気付くものである。


 二人が地上に出ると早速

「おい、あれ。まさか、ドラゴン?」という声が聞こえた。

「ジェイ、見つかりましたよ。早く逃げましょう」

 ゴローがジェイを鼻づらで押しやるようにしている。

「や、ちょっと待てよ。ほら、大丈夫じゃね?こっち来ないし、村の方に戻って行ったみたいだし」

「そうですけど、見つかったらすぐ逃げた方が・・・」


 ゴローがジェイを逃げるように促していると、村の方がガヤガヤと騒がしくなった。そして、物々しいいでたちをした男たちがやってくるのが見えた。

「ほら!」

「まじで~?」

 村人たちは手に手に柄の長い農耕器具を持っている。ドラゴンを()る気満々だ。

「うわ、怖え!」


「早く、逃げますよ」

 ゴローは四足になって駆け出した。

「ちょ、待て待て待て、そっちに行くな!」

 それをジェイが留める。

「なんでですか!」

「南に向かったらダメだ。北へ行こう」

「北?方角が分かるんですか?」

「良いから、こっちだ!」

 ジェイは太陽の向きを見ながら北と思う方へ走り出した。その後ろをゴローは急いで追いかけた。

「どうしてこっちが北かわかるんですか」

「は?太陽見りゃだいたいわかるだろうが」

「そうなんですか?さすが賢者様!」

≪誰だってわかるだろうが≫


 そうこうしているウチに村人の声が聞こえてきた。結構な迫力だった。

「見ろ!人が追いかけられてるぞ!」

≪追いかけられてるんじゃなくて、先を走ってるんだが≫

「どうでも良いけど、もっと速く走れないの、ゴロー?」

 ジェイの後ろをついてくるゴローはドタドタと大きな音を立てているわりになかなかジェイに追いついてこない。

「何言ってるんですか。私は四足ですよ?ジェイに合せているに決まっているじゃないですか!」

「なんだ、そうなの?じゃあ速く行こう!」


 するとジェイは本気を出して走り出した。ドラゴンに追いかけられて逃げるのは慣れている。人から逃げるのだって慣れている。逃げることに慣れたジェイの本領発揮だ。

 ジェイの走りは本当に見事だった。ものすごい集中力であっという間に追いかけてくる村人から遠ざかって行った。


 ところが、引き離したはずの後方から奇異(おか)しな音が聞こえてくる。

「そっち押さえろ!」

「気を付けろ、火を噴くぞ」

「縄持って来い!」

「うわっ、こらっ」

 何事かと思ってジェイが振り向くと、なんとゴローは村人に捕まって今にもボコられそうになっていた。

「マジで~?なんでアイツまだあんなとこで、捕まってんだよ」

 ジェイは今、走り抜いて来たその道をまた走って戻って行った。


「待って、待ってくれ!そのドラゴンはっ」

 と、ジェイが戻ると、村人たちの殺気立った顔がジェイに向いた。

≪うわ、怖え≫

 ドラゴンを仕留めようとしている人間は興奮しきっていて殺気に満ちている。その形相を見てジェイが怯えると額のムヴュが光った。

「あ、賢者様」

「賢者様がいらしてくださるとは!」

「賢者様、ドラゴンをやっつけてください」

 村人はジェイが賢者であることを認めると、捕えたばかりのドラゴンをずずいと押し付けてきた。

「いや、あの、俺」

 ジェイは賢者と言われるのが嫌で、口ごもった。


「あの、そのドラゴンは、その」

 そう言いながら、ジェイはドラゴンのそばまで行き、ドラゴンを庇うように立った。

「賢者様、危ないです!」

「我らも加勢しましょうか」

 村人たちは大きなピッチフォークをドラゴンに向けて今にも刺し殺しそうだ。

「違うんだ。このドラゴンは、悪いドラゴンじゃない。殺さないでくれ」

 やっと言うことができた。しかし、村人たちは納得しなかった。

「何を言うんです」

「ドラゴンじゃないですか」

「取り押さえたらすぐに殺さなければ」

 村人たちはとにかくドラゴンを殺さなければ安心できないのだろう。今にもジェイのことをどかしてでもドラゴンを殺してしまいそうだ。


「違うんだ。ほら、このドラゴンは他のドラゴンと色も違うし。な?悪いドラゴンじゃないんだよ」

「でも、賢者様先ほど、逃げていましたよね?」

「ドラゴンに追いかけられていたじゃないですか」

≪お前さんたちから逃げていたんだが≫

「いや違う、あれは一緒に走っていただけで」

「ものすごい勢いで逃げているように見えましたよ」

 ジェイが反論しようにも、確かにジェイは逃げていたのだ。そう見えても仕方がない。

 せっかくの“賢者様”のお言葉もすぐには聞き入れられないほどに、村人たちはドラゴンを恐れている。当然ではあるが、ジェイは困った。


 するとジェイの後ろからゴローが小さな声で言ってきた。

「悪いドラゴンじゃない証拠を見せたらどうですか」

≪なぜ小声≫

 なるほどと思い、言われた通りジェイは悪いドラゴンじゃない証拠を見せようとした。

「あー、つまり、このドラゴンは悪いドラゴンじゃない。証拠を見せるよ」

 村人たちは臨戦態勢をとったまま目を丸くして固まった。




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