第十八話 銀河規模の大迷惑?
「姫さま~!」
「ソラ姫さま~~!!」
「グラン様~!」
ボクを見て歓喜の声を上げる人たち。それに、ときおりフォリンへの歓声も混じってたりもする。
「「わぁ~!」」
「「「うぉぉ~!」」」
興奮状態の人たちの色々な声が混ざり合い、気持ち悪くなるくらい……お腹に響いてくる地鳴りのような……もう声とは言えない音。
「かわいぃ~!」
「ちっちゃい~! 守ってあげたい~!」
「可憐だわぁ~!」
「きゃー、こちらを向かれたわぁ~!」
緋炎宮前のガッコの校庭ほどはありそうな大広場に、それを埋め尽くさんばかりに集まったエカルラートの人たち。
老若男女、様々な人たちがボクの姿を一目見ようと集まって来てくれてる。その姿や服装は不思議なくらいに地球の人とそっくりだ。(まぁ、地球人に翼はないけどさ)
ボクは、宮の広場向きにある大きなバルコニーから、そんなみんなに姿を見せるように立ち、愛想を振りまいてる。
それにしても、こんなにいっぱい……いったいどこから聞きつけてくるんだろ?
ボクの一挙手一投足に熱狂する人々。
みんなボクを見て、それはうれしそうに……ある人は感動し、ある人は泣きじゃくり、そしてある人は褒めたたえてくれる。……そんな人たちを見て、ボクは改めて自分のカッコを思うとタメ息が出る。
ボクのカッコはそれはもう……まさにお姫さまみたいな、足先まで隠れてしまうロングドレスを着せられてる。
色はスカーレットの姫って言われるだけに、やっぱ緋色ベース。肩ヒモだけのドレスは胸元がやたら目立って恥ずかしい。
ボクの胸はあんまりおっきくない……けど、フェリさんたち渾身の着付けのおかげなのか、谷間が出来ちゃってる! ソレを見てうれしく思ってた自分に気付いたときは愕然とした……。
露出した肩から腕……その腕には肘近くまである白いレースの手袋をはめてて、なんかちょっとかっこいい。ふわりと裾にいくほど広がっていくスカートには、これでもかっていうほどフリルがたくさん付いてて、微妙に大人っぽくもかわいいデザインに仕上がってる。
ボクがこんなお姫さまのカッコしてるだなんて……ほんと考えるだけでお顔がまっ赤になっちゃう。
それに腰まで伸びた紫がかった白くて長い髪は、毛先を軽く巻かれたうえでハーフアップにしてまとめられてて、へアクリップなんてキラキラした相当高そうな宝石が散りばめられた、とってもキレイでかわいいやつが使われちゃってる。
更にはただでさえ白いボクのお顔は、うっすら目立たない程度ではあるものの、お化粧までされちゃってる……。
侍女さんたちの仕事、恐るべし!
ボクはさからうことなんてとても出来ず、なすがまま、大人しくしてるしかなかった……。
でも……そうやってキレイに着飾ってもらってるとき、ちょっとうれしい気持ちが出てしまったことも事実なんだよね。なんか複雑な気分……。
そんな侍女さんズ渾身のドレスアップに加え、更には背中の翼まで出すようにってフォリンに言われちゃってて……もうボクっていったい何なんだろ……。
おかげでボクはエカルラートの人たちに熱狂的って言えるほどのテンションで迎えられちゃったわけなのだ。
まぁもちろん、エカルラート領に初めて現れたライエル以外の、しかもスカーレットをその身に宿した人類種のボクが、(なぜか)姫として現れたってのもあるんだろうけど……。
ってことで、現実逃避してた間にも集まってる人たちの興奮状態はどんどんエスカレートし、その相乗効果もあってか、すさまじいばかりの歓声へと変わっていき、それはもう大きなウネリとなってボクの前に押し寄せる。
それはもう物理的な圧力といってもいいくらい。
ボクはそれを全身に受け、正直もう倒れちゃいそう……。
それでもなんとか今にも引きつってしまいそうなほっぺを無理矢理動かして、笑顔を作る。まじで今にもピクピク痙攣してしまいそうだよぉ!
「あは……あははは……は」
一生懸命作り笑いするボク。
そしてボクがそうやって根性で笑えば、更に……、
「「「「「うぉ~!!!!!」」」」」
「「「「「きゃ~!!!!! 姫さま~~!!!!!!」」」」」
今まで以上にテンションが上がる。
も、もういや。もう勘弁して?
ボクは泣きそうな顔をして振り返り、後ろに控えてる執政官のアリオスさんを見る。
そんなボクに……ぜーったい、気付いてるはずなのに見事にスルーなアリオスさん。その顔は、ずっと張り付いたような笑顔で固定されてる。
ううっ、ひどいやアリオスさん。
こんなことするのは最初だけだからっていうし、他所モノのボクなんかに誰も興味ないだろって思って……つい引き受けちゃったけど……まさかここまで大げさになるだなんて……。それにしたって……ボク、こんなに困ってるのにさ……もっとフォローしてくれても!
<蒼空、後ろを向かずにちゃんと前を見て。ここにいる民たちは、すべて君を見にきて
……君を称えてるんだ。スカーレットの姫として、それにちゃんと答えてやらなきゃダメだぞ?>
ボクの横でこのすさまじい騒ぎの中、悠然と、いかにも慣れた様子で立ってるフォリン。そして、その余裕の態度のまま、遠隔感応通信でボクに話しかけてくるなんて……ちょっとむかつく。
<う、うるさい、フォリン。だ、だいたいなんでボク、こんなことしなきゃなんないのさ? まるっきり見せ物みたいで……もういやなの! これって、いったいいつまで続くのさぁ?>
時折り人々に手を振る仕草も堂に入ってて、さすが王子さまって感じ? のフォリンにボクは交感で返す。
<くくっ、ほんとに蒼空、すごい人気だな? 私も実は、ここまで盛り上がるとは思っていなかったよ。存外、人類種であるエカルラート民はライエルによる統治に不満を持っていたのかもしれないな? 不本意ではあるが……まぁそれも当然か?>
フォリンがそう言って、ボクの方を見る。その顔はきっと真剣な顔なんだと思う。そして更に交感を続ける。
<蒼空、そのくすぶってたかもしれない不満を……君という存在、人類種である君が……こともあろうにスカーレットを体に宿した君が……現れたことで解消できるかもしれないんだ。彼らの喜びもわかろうというものだ>
ボクはフォリンにそこまで言われてもイマイチ、っていうか全然わかんない。だいたいスカーレットの何がそんなに大事なの? みんなやたら大事みたいに言うけど。
そりゃボクの命は胸の奥でボクと同化してるっていう、その緋色の王玉で持ってるってことは聞いたけど……だからってそれがどうみんなに影響するのかがわかんない……。
ボクは更にフォリンにその辺のことを聞こうとしたとき……、ボクの胸の奥でなんかいやぁな、うずくような感覚が広がった。この感じは前にも感じたことがある。そう、クロちゃんと初めて会ったときの……あの時の感覚だ。
<フォリン……来たようです>
ディアがフォリンにのみ、そう伝える。
<来たか? あー周囲の民衆……の保護は万全か?>
フォリンが蒼空の方を見て、ちょっと気まずそうな口ぶりでディアに確認する。
<ええ、抜かりはありません。私の他に、私のインスタンスたち……それにアレイたちも動員して防御にあたっています。半径50キロ圏内であれば万全です。もし傷付けなどしたら、蒼空のご機嫌取りが大変です。万に一つの可能性もないと保障します。……ただし、殲滅してでもという、過激な手でこなければの話ですが……それはまずありえないでしょう>
物騒なことを普通に告げるディア。しかし、それを聞いたフォリンの言葉もそれに劣らない。
<そうか。蒼空もすでに何か感じてるようだが……。彼女に偽っているようで悪いが……どうあっても確実な既成事実が欲しい。やつら……伯父上も時間がない。焦って手を出してくるように、手を出しやすいよう仕向けてやったが……まさか最初の手に乗ってくるとはな……>
真っ黒な二人なのであった。
「ねぇ、フォリン、アリオスさん? なんかボク、変な胸騒ぎがする。もうこのお披露目……終わらせ……」
ボクはもう胸の奥のざわめきがこれ以上ないくらい激しくなり、そのことを二人に告げようとした……その時。
頭上が一瞬明るくなり、空一面を覆っていた薄く広がる雲にぽっかり穴が開く。と説明すると長いけど実際はまたたく間。
ボクの立ってる位置のその上空……きっと大気圏外……要は宇宙から打ち込まれた、とんでもなく収束された高エネルギーの束。
毒々しい紫っぽい色をしたビームがボクを直撃し、一瞬まばゆいばかりの光に覆われる。
「きゃー!」
「そ、ソラ姫さまっ!」
「離れろっ! まだ来るぞっ!」
「姫さま~!」
突然の出来事に慌てふためく人たち。そんな中でもボクを心配する声がそこかしこから聞こえてくる。
その間も上空からは、収束された高出力のビームが、休む間もなく繰り返し降り注いでくる。その度に目が眩むような光りに覆われるボク。
周りの人たちは、多少混乱はあるものの少し引いたところからボクの方を心配そうに見てる……。なんかみんなあまりパニックになったりしてない? 不思議。
そして……そんな渦中のボクはと言えば。
ぴんぴんしてた。
最初の一撃は、ちょっとビックリしたけど……いつものごとく、勝手にシールドが展開されててボクには傷一つ……もちろんキレイなドレスにもおこげ一つ付いてない。
それにしても、ほんとに……なんてカラダになっちゃってるんだろ? ボク。
そのあとに続く攻撃……そう、これって攻撃だよね? ったく、たまんないよ ――攻撃はどうやらディアが動いたようで更にボクから離れた場所でシールドされ出したようで、もう余裕もいいとこだ。だから周りの様子を窺うのも楽勝。
あーあ、バルコニー。キレイだったのにボクの周り、まあるく囲むように4、5メートルくらいの幅で消し炭状になってくすぶっちゃってる。
ただ、壊れたりはしてない。まぁディアのシールドが効いてるから、きっと威力も相当落ちてはいるんだろうけど……。
どんだけ丈夫な建物なのさ? あきれちゃう。
でも……こんな攻撃、ディアなら……ディアなら最初の一撃でさえ未然に防げたはず? 絶対わざと受けさせたよね? 何たくらんでるの……ひどいよディア。
攻撃する方もする方だ。
バカなの? 今までで学ばないの? こんなの効かないって……わかんないのかなぁ?
――蒼空はそんな風に考えているが……蒼空が実際に受けた攻撃は……そんなにアッサリ流してしまえるほど柔な攻撃ではなかった。
そう、蒼空は自分がどれだけ規格外の防御をしたのか……まったくわかっていない。
ディアにしても、これまでのライエルのジェネリック船の基準よりも一つ進んだ高い性能を有していて、そのディアのシールドを破ることが出来る船は……少なくとも敵対勢力の中には存在しないはずである。もちろん王の船は別であるが――。
激しい上空からのビーム攻撃ではあったが、その結果を見れば成果はほとんど皆無。
そして攻撃がぱたりとやむ。
周囲にざわめきが戻りだすと、蒼空のことを心配する声が人々の間で広がり始め、ようやく元の雰囲気が帰ってくる。
そんな中、一人微妙に緊張感を残す存在。
「フォリン? アリオスさん? それに……ディア。説明、してくれるよね?」
うっすらとお化粧を施された、天使のようにきれいで可愛らしい顔を……今は少しくしゃりと歪め、にらみつけている……蒼空の姿があるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「で? さっきのはいったいなんだったの? せ・つ・め・い……して!」
心配してくれる大勢の人たちを前に一生懸命、大丈夫だっていいながら笑顔を振りまき、バルコニーから引き上げたボクと……フォリンたち。
そして今は緋炎宮にある、たぶん、会議なんかをする部屋に集まってボクはみんなに説明を要求してるとこだ。
はっきりさせなきゃ気がすまないもんね!ったく。
いっつもいっつもボクを蚊帳の外にして……。
後になって「言ってませんでしたか? 説明しますぅ」だもん。
ほんと失礼しちゃうよ!
そんなボクの様子にひたすら、薄っすらと笑いを浮かべてる執政官のアリオスさん。うーん、この人、他の表情出来ないの?
そして表情が読みにくいながら、たぶんちょっと苦笑いしてるはずのフォリン。
あと、姿は見えないものの……一番強敵のディア。
この三人? を追求するのが今のボクの使命だ!!
「蒼空、その……君に話しをしていなかったのは申し訳ないと思ってる。とりあえず今の出来事を説明するとだな……」
ボクの追求にまず答えてくれたのはフォリン。やっぱ、この中じゃ一番苦労性なのは間違いなさそうだよね。
「先ほどの騒ぎは反ライエル、ティエ家の船の軌道上からの攻撃ってことは確認済みだ。現在、ディアのインスタンス船がその確認をするために動いているところだ」
フォリンが説明してくれたことは、正直ボクにだって想像できちゃう。
問題はなんでボクを狙ってきてるのかってことだよ!
今までのこともそうだけど……ボクはまだキッチリその理由、聞いてない。だいたい、エカルラートの人たちや、もちろんボクもだけど……危険な目に遭わせてくれちゃって、どういう倫理感しちゃってるの? ってのも盛大にツッコミたいとこけど。
「もう! そんなのはボクにでも想像つくからいい……聞きたいのはなんでボク、こうも狙われちゃってるのかってこと! スカーレットが貴重なんだって話は聞いたけど……フォリンの星にいるボクを攻撃してまで欲しがるなんて……。つうか、もしボクに当たっちゃったらそのスカーレットだって一緒に無くなっちゃうじゃない?」
「そ、それはだな、その、スカーレットっていうのは、命の理を司る王玉だってことは説明したと思うが、実はそれだけじゃないんだ。オーブにはそれぞれ固有の特性があって、スカーレットは今も言った命を司るオーブなんだが……そもそも、どのオーブにも共通する基本的な性質っていうのがあって……ティエ家……伯父上はそいつを欲しがってるわけなんだ。
あぁ、それと、オーブはビーム攻撃くらいじゃ消滅したりしやしない。たとえ君が蒸発してしまってもオーブだけは残ってるはずだ……」
フォリンが重い口を開け、ようやく説明し出す。オーブの基本的な性質? またなんか新しいこと言い出したよ……。
それにしてもボクが蒸発してもって……こ、こわっ。でもそれなら、あんな無茶な攻撃も納得だよ……されるボクはたまったもんじゃないけど。
<フォリン、ここからは私が説明しましょう>
と、そこに割り込んでくるディア。ううっ、またメンドクサイやつが……。
「もう、どっちでもいいからちゃんと説明して!」
<では。端的に言います。この十二族長の支配している星系では、どこの恒星系に行っても無限と言って間違いないほどのエネルギーの供給を受けることが出来ます。それこそ宇宙のどこにいてもです。
そしてこのエネルギーは、広がり続ける宇宙の……膨張するエネルギーそのものから生成させる、わかりやすくいえば、物質生成装置ともいえる特別な設備によって創出されています。オーブはその設備を稼動させるためのキーとなる存在。オーブがなければその設備の起動をさせることが出来ないのです。
そもそも十二族長創設当初は各恒星系に一つづつ存在していたオーブでしたが、以前にもお話した通り、不幸な事故や各族長間での権謀からそれらは少しずつ失われていき、今残っているのはライエル家の三つのオーブのみ。したがって今現在各族長の星系の物質生成装置――アクシオンと呼ばれている設備ですが――は、必要に応じてライエルより貸し出しているのが現状なのです。
まったく、フォリンたち種族のなんと思慮の足らない、争いの好きなわからずやの多いことか……嘆かわしい>
ううぅ、説明してもらったのはいいけど……なんかもう、わけわかんないよぉ。それにしてもディアをして愚痴らせるなんて、どんだけフォリンたちって争い好きなの?
「そ、そんなのはともかく。だ、だからどうだっていうの? 貸し出してもらえるなら何も問題ないんじゃ?」
「蒼空、そう簡単な問題でもなくてな……。ことの起こりは伯父上が……そのだな、蒼空たちの太陽系がある銀河……君たちの言う、天の川銀河へ進出しようと、ライエル王に進言したことから始まったんだ」
フォリンがすっごく言いにくそうにボクに話す。
「は、はぁ? ボクたちの銀河に? 進出? それってどういうことなの?」
ボクはそう確認しながらもいやな予感がしてきた。
「ああ、まあ君にも解りやすく言うと……その……」
<侵略です。ティエ家は天の川銀河、いえもっと平たく言えば……蒼空、あなたがたの太陽系を支配、いえ、植民地化しようと……そう進言したのですよ>
「うく、ディア、おまえなぁ……」
フォリンが言おうとしてたところに、ディアがかぶせてハッキリとボクに告げた。
「し、侵略? 植民地? なにそれ! ま、マジなの?」
そりゃフォリンが言いにくそうにするはずだよ。
「っく、まぁ、そうだ。その通りだ。伯父上は太陽系を植民地化しようと言い出したんだ。あの銀河の知的生命体の中では、君たち地球人類がもっとも進歩している存在だ。したがってライエル的に言えば、銀河系の領有権は地球人にある。
しかしまだ地球にはこの広い外宇宙に出るだけの力はない。なにしろようやく太陽系外に出られるようになったばかりの科学技術しか持ち得ていないからな。
伯父上はそんな地球人にあの銀河を与える必要などないと唱え……てっとり早く植民地化し、属国にしてしまって天の川銀河を実質支配すればいいと……そう言っているんだ」
「な、何なのそれ! か、勝手すぎ。ボクたちのことまるっきり無視なわけ?」
ボクはちっぽけな存在だけど……それでもそんな風に言われるとやっぱ腹が立つ。地球人なめんなと言いたいよっ。
「ああ、わかってる蒼空。いくら我々が好戦的だからといって、いきなり他の銀河団の中の銀河を侵略したりなんかしない。もちろん、ライエル王も伯父上、ノルン公の進言を真に受けて実行したりはしなかった。
が、しかしだ。ノルン公はそれが不満だったらしい。常々ノルン公は弟である、ライエル王のやり方が気に入らなかったみたいでな。ライエル王はどっちかというと保守的、現状維持派で、伯父上、ノルン公は拡大派で支配宙域をどんどん拡大せよっていう急進派だ。
元々兄弟でもそりが合わず仲も悪かったらしいから……いつこうなってもおかしくはなかったんだが」
な、なんかすっごく政治的な、っていうより個人のケンカみたいなお話になってきたような……。でも、だからなんでスカーレット? ボクがそう思ってたら、
<まぁ結論を言えば、「ワガママ言うならオーブを貸さないぞ」と、ライエル王はノルン公に……そう通達したわけです。それを聞かされたノルン公はそれはもう顔をまっ赤にして怒った……と伝え聞いていますが>
ディアがまた割って入ってきて、そう言った。
「うくっ、でぃ、ディア、お前なぁ」
<なかなかはっきり言わないフォリンの変わりに言ったまでです。蒼空、あなたに埋め込まれているスカーレットはそういった理由から、ノルン公に狙われているのです。
そして、そんなあなたを、王や十二族長へとお披露目される前に……ノルン公はなんとか我が物にしようと焦り、フォリンが治めている星にもかかわらず攻撃してくるという暴挙に出たのです。まぁ、それを煽ったのは私たちなわけですが>
あ、煽ったって……ディア……いっつも一言多いよ。
それにしてもそんな、兄弟ゲンカみたいなのにボク巻き込まれちゃったわけ? っていうか、銀河を股にかけた兄弟ゲンカっていったい……。
「な、なんなのそれぇ。あ、あんまりな理由だよぉ!」
な、なんか空し過ぎるよ……。
ボクはそう言って天を仰がずにはいられなかった――。
あいかわらず説明ばっかですみません。




