第十六話 長く短い旅の顛末は?
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ライエル王の宮の名前を変更しました。
ガッコの友だちとのお別れを済ませ、家族ともしばしのお別れの挨拶を済ませたボクは、ついにフォリン、そしてフォリンのお姉さんであるフェアリンさんと共に、二人がやって来た星系へと向うことになった。
淡々と流しちゃったけど、もちろん家族とのお別れはそんなアッサリしたもので済むはずも無く……色々あったけど、行くって決めたことなんだもん……。
だから今は……ワガママ言ってごめんね、お父さん、お母さん……そして春奈。
――行ってきます。
「蒼空、そんな寂しそうな顔をしなくても、地球なんて帰ろうと思えばすぐ帰ってこれるんだ、元気を出したまえ」
フォリンが落ち込んでるボクを慰めようとしてくれてるのか、声をかけてくる。
「う、うん。ありがと、フォリン。大丈夫、自分で行くって決めたんだもん、ちゃんとフォリンたちの星に行って……そのお披露目ってやつ、さっさと済ませて……すぐ地球に戻ってくればいいんだもんね! 簡単なことだよね」
ボクはそう言って、フォリンになんでもないような口ぶりで答えた。
今ボクが居るのは、当然ディアの中なんだけど……ディアの中ってよく映画とかアニメで見る宇宙船のイメージと違って、艦長さんや船を操る操舵手さんが居る……船でいう艦橋、飛行機でいうコックピットみたいなとこがない。そういうことはディアが一手に引き受けているからそもそも必要ないんだって。
今どこにいるか? とか知りたければディアに聞けばいいし、更にビジュアルで確認したければディアが目の前に表示してくれる。何もない空間にいきなり映像が浮かんで見えるから初めて見たときはビックリしたけど……。
厚みがない液晶TVの画面が宙に浮いてる感じって言えばいいのかな? 表示する大きさも自由自在だし、必要に応じて立体的な表示もOKなんだって。
他の船や母星とのやりとりもディアを介して行なわれるし、……あったらイヤだけど、他の船から攻撃を受けたとしても、ディアが対処するわけで。
だから艦橋みたいなものの必要がそもそもないってことらしい。
だいたいディアの中って何回か来てるけど、未だにどういうレイアウトになってるのかわかんない。移動するのは転移で済んじゃうから、通路を歩くってことをしないし。そんなだから、部屋と部屋の位置関係とかも全くつかめない。
もっと根本的なとこで、この船がどうやって飛んでるかもわかんないし、ホントの大きさすらわかんない。マジ、わかなんないことだらけだ。
ま、だからといって、説明されても結局わかんないんだけどね……はぁ。
で、今このディアに乗ってるのはフォリンとボクの二人だけみたいだ。
フォリン……たった一人で地球に来たってことかぁ、寂しくないのかな?
そんなことあるわけないか?
だって、ディアがいるんだもんね。
でも、やっぱ同じ人がいなけりゃ、やっぱ寂しいよね……。いくらディアがいるって言ってもさ……ボクなら絶対耐えられないや。
とりあえず、ボクにはフォリン、そしてクロちゃんもいるから……きっと少しは寂しさをまぎらわすことも出来ると思う。
家族に会えないこと……ガマン……しなきゃね……。
あっと、話しがそれちゃった。
さっきからボクとフォリンが居るところは、言ってみれば談話室みたいなとこなんだろうか? ガッコの教室くらいの大きさの部屋で、天井はもう星空でいっぱい。
なのになぜか部屋は暗くもなく……光源がどこなのか謎。適当に座り心地のいい、包まれ感のあるイスが配置されてるけど、どう見てもボク用のサイズ。なんか至れり尽くせりって感じだ。
「そんでさ、フォリン。結局、フォリンたちの星に行くまでどれくらいかかるの? フォリンたちの星ってすっごく遠いトコにあるんだよね。1年?それとも2年くらい? それとももっと? ……ボク、用事が済んで、地球に帰ったら何年くらい経っちゃってるんだろ?」
ボクは不安に思ってることを素直に聞いてみた。
「ふふ、蒼空。そういえば私たちの星系のことをきっちり話したことはなかったな?」
フォリンはそう言うとボクの前のイスにちょこんと座り、自分たちの星のことについて色々お話を語り始めた――。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ようこそ! 私の治める星へ!」
フォリンがボクにそう言って、仰々しいお辞儀をして見せた。とはいっても、そんな子供サイズのカラダでお辞儀されても、あんまりかしこまった気分にならないって。
地球を出てから7日。結局、たったの7日でついちゃった。
――地球のある太陽系から出るのに1日かけ、そこからなんか離れた空間同士をつなぐをワームホールっていうとこを目指してさらに1日。それですでにぼくたちの太陽系のある天の川銀河を出たらしいんだけど……そこでようやく、そのワームホールっていうのに突入。
ちなみにフォリンたちの星のある"うみへび座銀河団"のM83銀河ってのは地球から1500万光年離れてるんだって。それって光の速さで飛んでも1500万年かかるってことだよね? 銀河系の直径が10万光年らしいから、1500万光年って、150倍。銀河系を150個並べた距離も離れてるなんて……もう気が遠くなりそう……。
その間に見た宇宙の景色もボクの想像を遥かに超えた世界だった。
手始めに見た、太陽系の星の姿は最近じゃよくTVやネットで見かけるからそんなに驚くほどのものでもないって……思ってたけど、やっぱ実際に見るのは迫力が違う。もう恐ろしいくらいの圧倒的な景観だった。太陽系ですらそれなのに……外宇宙に出てから見せつけられた景色はもう、筆舌に尽くし難いものだった。
ワームホールっていうのは、ボクも映画やアニメでは聞いたことのある言葉で使い古された感じがするけど、まさか実際あるとは思わなかった。ただ、そこを通り抜けている際、映画みたいな変わった現象が起きたか? といえば、結局なんにも起こらなかった。いつの間にか進入してて、いつの間にか外の景色から星の海が無くなり……ただただ暗い、怖いくらい真っ暗な、吸い込まれそうな暗黒の空間が不気味に広がってるだけだった。
そんなワームホールをいくつか通過し、フォリンたちの星系がある銀河、M83の圏内にたどり着いたのが5日目。そこからは通常の航行で2日かけ……ついにフォリンの星に到着したってわけだった――。
到着に1年や2年はかかると思ってた(それでも十分すぎるほど早い予想だと思うけど)ボクの予想に反して、あっという間に着いちゃったから……拍子抜けもいいとこだった。
そりゃ、フォリンやディアが説明してくれてたけど……いくらなんでもそんなに早くつけるだなんて、ボクにはとてもじゃないけど信じられなかったんだもん。
でも……これで、お家に早く帰れる見込みが出てきたかも? 到着の早さに驚きながらもボクはそんな風に期待する気持が大きくなっていった。
ボク……この時は、まだまだすぐに帰れると思ってたんだ。この時は……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
フォリンの話によく出てくる、十二族長っていうのは、基本一つの族長が一つの星系を治めてるみたい。もちろんフォリンやフェアリンさんもその中のメンバーだから、それぞれが納める星系があるってことだ。
ボクが連れてこられたのはそんなフォリンが収めてる星系の中で、族長が住む星ってことになるのかな?
ちなみにライエルっていうのは、結局、そういった12の星系が集まって出来た星間国家ってことみたいで、フォリンのお父さんが、その星間国家をまとめてる偉い人らしい。
『ライエル王ハーメラン』っていうのが正式な呼び名で、でも、収めてる星は持ってなくて、宇宙空間に造られた巨大な半人工的な天体で、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ……各星系間を彷徨ってるらしい。
……なんかはた迷惑な王さまだなぁ?
そんなこんなでフォリンの治める星に無事到着したボクたちはその星に降り立ったわけで。
フォリンの星は、上から見た限り、地球とそっくりな……青い海があるキレイな星に見えた。
「すっごくきれいな星だね? なんか地球に似てるし……生き物もいっぱいいるんだよね?」
ボクはディアが映し出してくれてる、どんどん移り変わっていくお外の景色を見てそう尋ねる。
「もちろん。ただし居るのは原始的な生物が主流だ。この星はまだまだ我々が入植してから間もない星で、人類やそれに類する種族はあまり入っていないんだ。人が多く住んでいるのは、もう一つ恒星に近い、第2惑星の方だな。ちなみにここは第3惑星で、それだけで言えば、蒼空の故郷の星と同じだな」
フォリンがそう言って笑いながら説明してくれる。
「蒼空、族長はそうやって原始的な惑星を、住める星に改造しながら自分の納める星系を活性化していっているのです。フォリンはまだまだ族長になって日が浅い。したがって人類などの種族もまだそれほど多く入っていない星系なのです」
ディアがフォリンの話しを簡単に補足してくれる。
「ふーん、そうなんだ。じゃ、そもそもフォリンたちの生まれ故郷の星ってどこになるの?」
ボクがそう聞くと、さっきまで笑ってた……はずのフォリンの顔がひくついた。(かのように見えた)
「蒼空もなかなか痛いところをつきますね。フォリンたちの起源の星はすでに存在していません。まぁその名残といえるのが、ライエル王の居る移動天体『彷遊宮』(ほうゆうきゅう)なわけですが……まぁその昔、フォリンたちの先祖が不毛なことをやったということです。蒼空たちの星も気をつけないと、同じ運命を辿るやもしれませんよ? せいぜい気をつけることです」
「ううっ、そ、そうなんだ? は、ははは……は、はぁ」
そ、それ、シャレになんないよ。フォリンたちの種族って、もしかして結構過激? でも思えば、ボクにだって色んな武器使わせてるし。ら、ライエルの人たちって……あ、あぶない系? そもそもボクがこうなったのだって、反ライエルの人たちがフォリンたちにちょっかいかけてきたせいだし。
なんか、先が思いやられるよ……。
そんな不毛な会話をしているうちに、とうとう目的地に到着したのかディア(この場合、船のことだ)の動きが止まった。
「ま、そんなコトはどうでもいいじゃないか。それよりこの星には蒼空が驚くことがまだあるぞ?」
フォリンがまた、何が面白いのか楽しそうな声でボクに言う。
「そうですね。それはもうすぐ分かることです。では蒼空、お待ちかねのフォリンの治める星「グラン」で最大の勢力であるエカルラートたちの宮をご案内しましょう」
は? 最大勢力? エカルラートの宮? 一体何言ってるの?
「ちょ、フォリン、ディア! 何それ? もしかして、まだボクになんか隠してるの?」
ボクは余りにもあやしい二人の言葉に、思わず突っ込みを入れる。ほんと、これ以上まだなんかあるだなんて……まじ勘弁して欲しいよっ!
突っ込みながらもそんなコトを考えてると、いつものごとく、ボクの意志なんておかまいなしに転移されてしまったのだった。
「……蒼空は、きっと戸惑うでしょうが……ある意味、地球の物語で言うシンデレラの様なものです。喜んでもらえると良いのですが? ま、難しいでしょうけど。フォリン、しっかりフォロー頼みますよ」
AIであるディアが独り言をつぶやく。
つくづく、変わったコンピュータなディアであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「スカーレットの姫。ようこそまいられました」
「はぇ? な、なにっ?」
クロちゃんを肩に乗せ転移されるなり、そう言って出迎えられたボクは、思わず間の抜けた声で聞き返す。
一体全体この状況は何なのさ?
ボクたちは立派な石造りの荘厳な建物の、吹き抜けになってる真っ赤なカーペットの敷かれた大広間みたいなとこに現れたみたいなんだけど……、目の前には平身低頭で居並ぶ人々の姿。
まったく、わけわかんない!
「ちょ、ちょっと、何だか知らないけど……あ、アタマ、アタマを上げてくださいっ」
転移してきて、さっきの一言をボクにかけて以降、ずっとアタマを下げたまんまの人たち。その人たちは、ボクらを中心に左右20人ずつくらい? それぞれの列で男女に分かれ、かしずいてる。
男の人のカッコはどこかヨーロッパの貴族が着てたような、ちょっと古めかしいデザインの濃紺のベスト付きのジャケットとズボン。対する女の人は、そのカッコはまさにメイドさんを彷彿とさせる、これも濃紺のワンピースにフリルが付いた白いエプロン姿。アタマにもきっちりフリル付きのカチューシャを付けてて、ちょっとかわいらしい。それにしてもどう見たって地球のメイド服とおんなじだ……フォリンの影響、疑わざるを得ないよ!
そしてそもそも驚いたのは、その居並ぶ人たちがボクとおんなじ人間の姿だってこと。ボクはもうあっけにとられ、どうしていいかわかんない。
「もったいないお言葉。我ら一同、グラン様(フォリンのミドルネームで、その名が統治星の名となる。ちなみにフォリン=グラン=ツァ=ライエルがその正式名)よりスカーレットの姫がお出でになられると聞き及び、こうしてこの緋炎宮に姫を迎えることを、一日千秋の思いでお待ちしておりました」
かしずいていた人の中で最初に声をかけてくれた、銀髪をオールバックにした端整な顔つきの、背が高くスラっとした紳士が、ボクに再び言葉をかけてきた。し、渋い! それにすっごく様になってる。
「ふふっ、蒼空、ここに居並ぶものたちはエカルラート領の民。そしてこの宮はその領民をすべる領主の館なんだ。エカルラートの民っていうのは、この星に最初に移民した一族の名で、種族は見ての通り、蒼空、君と同じ人類種だ」
「エカルラートの民? じ、人類……? ボクとおんなじ?」
ボクの横に立ってるフォリンは、戸惑いの表情を浮かべてるボクに説明をしだす。ボクはフォリンと、話しかけてきた男の人の顔を見比べつつ、でも、まだ戸惑いから抜け出せないでいる。
「そう、人類だよ。彼らはこの星に住んでる3つの種族の中では筆頭でね、2つある大陸の一つ、その半分近くを統べる、なかなかに優秀な種族だよ。まぁ、とは言ってもまだまだ総人口は一千万にも満たない、農業が中心の所領ではあるけどね」
フォリンが色々説明してくれたけど、まだ肝心なことを話してくれてない……。
「その、どんな人たちかっていうのは、ちょっとはわかったけど……あの……なんでボクを姫だなんて呼ぶの? ボク、そんな……そんな風に呼ばれるような、大層な人間じゃないし、そもそもここの人間でもないのに」
ボクは、フォリンと、そして男の人……さらには、その周囲に控えている人たちにも聞こえるように大き目の声で言った。
「何をおっしゃいますやら、スカーレットの姫。いえ、ソラ姫とお呼びさせていただかねばなりませんね。あなたはここエカルラートの象徴ともいえる、緋色の王玉そのもの。
今まではスカーレットを保有されておりましたこの星の統治者、グラン様がその任を兼務されておりましたが、それがこの度、あなた様にお移りに……しかもそのお体に融合されたとなれば、もはやそれはスカーレットの化身とも言えるお方。
そんなあなた様をこの領邦の姫と呼ばずして、誰をそのようにお呼びすればよいのでしょう? それになんとも見目麗しく……聞けばエカルラートの民の一番の特徴である、光翼までお持ちであるとか? 最早、これ以上ふさわしい方を見出すことなど、今後一切かなわぬと……断言できるかと存じます。……それと、大変申し遅れました。私はこの地の執政官をいたしておりますアリオス=レアル=フェリオラと申します。以後、どうぞお見知りおきいただきますよう」
力を込めてその説を唱える、フェリオラと名乗った渋い男の人。
うう、な、なんて弁舌の立つ人なんだろ……。口を挟む余地がぜんぜん無いよ。ど、どうしたら……。
「ねぇ、フォリン~、これどうなってるのさぁ?」
ボクはフォリンにすがるような目を向け、助けを求めた。
「どうもこうも、そういうことさ。スカーレットを体内に融合した者の宿命だよ。申し訳ないとは思うが……こればかりはどうしようもないな。
それに、蒼空。考えても見ろ? 君がこちらに来る上で、こんな力強い後ろ盾、そして君の拠りどころが出来ると考えれば、あながち困ったものでもないと思うんだが?」
「ううっ、そ、そんなぁ……ボク、もし、もし百歩譲って受け入れたとしても、領主?っていうの? そんな偉い人のお仕事なんて出来ないもん」
「ソラ姫、それについての心配はご無用です。執政は私以下、宮仕えのものたちが、これまで同様滞りなく執り行いますれば、姫にはなんのお手間を取らせたりは致しませぬ。
ただ、領民たちに降臨された姫のお姿をぜひともお見せいただきたく、領地の視察もかねて漫遊などされてはいかがかと存じます」
はうぅ、な、なんだか話しがどんどん大げさになってく気がする……。ボク、姫さまで決定なんだろうか? そ、それにしても降臨って……。
男の子から女の子になったのにようやく慣れてきたかと思えば、今度は姫? 姫なんて呼ばれて……そりゃ悪い気はしないけど……それにしたって……。いったいスカーレットって、どんだけ大事なモノだったのさ? そんな大事なモノ、ボクに使っちゃうだなんて……フォリン、ほんとにこれから大丈夫なんだろうか?
ボクがあれこれアタマの中で悩んでる中、フォリンやフェリオラさんが、かしずいていた人たちに声をかけ、みんなそれぞれが自分の持ち場に帰るべく動き出す。
フェリオラさんも、執務があるからと、その場でボクにうやうやしく礼をして立ち去っていき、フォリンも一緒について行っちゃった。
ボクはといえば、そこにいたメイド服着た女の人に優しく手をとられ、広間から正面の階段を上り、奥へと続く通路へと……導かれるまま、ただついていくしかない。
……フォリンったら別れ際、
「蒼空、もう観念してこの状況を楽しめばいい。もし分からないことがあればディアに聞いてもいいし、君の頭の中のデータベースも活用するのもいい。
王と十二族長へのお披露目の日についてはまだ調整中だからな……。しばらくはここでエカルラート領のことや、我が星グランのことを勉強するといい。そうだな……アリオスが言ったように辺りを見てまわるのもいいかもな?」
……なんてほんと、ボクをここまで連れてきておきながら、なんか投げやりなんだから……。
あーあ、ボクこの先この世界でどうなっちゃうんだろ? 先が思いやれれるよぉ。反ライエルの人たちのこともちょっと心配だし……。
「……さま。姫さま? いかがなさいました? お疲れになりましたか?」
あっと、いけない。メイドさんがボクのこと心配しちゃってる。
このメイドさん、まだすっごく若くって、見た感じ年の頃なんて16、7才ってとこだよ。まぁ地球の人と同じように成長していってるとしてだけど……。
ボブカットのつやつやした黒髪にフリル付きのカチューシャがすっごく似合ってる、かわいらしい女の子ですっごく初々しいの。(ボクよりたぶん年上の人にそんなこと言ったら失礼かな? えへへ) でも背はボクよりアタマ一個分は上。春奈よりもたぶんおっきい……。ちぇ、悔しくなんかないもんね、そのうちボクだって……。
いけない、いけない。また脱線しちゃう。
「あ、ううん、ごめんなさい。ちょっと考えごとしてただけです。あの……急に来ちゃって面倒かけちゃうけど……しばらくの間、よろしくお願いします」
長い通路を連れられて、クロちゃんを肩に乗せたまま歩きつつ、そのかわいいメイドさんに挨拶するボク。
「そ、そんな姫さま。とんでもない。私ごときに、そんなお言葉もったいないです! 姫さまに不自由なきよう、誠心誠意、お世話させていただきますので以後よろしくお願いいたします。あっ、私は、フェリエル=ミディ=アリエージュと申します。フェリとお呼びいただければけっこうですので……」
名前、みんな長いなぁ……。うん、遠慮なしにフェリって呼ばせてもらおう。
「じゃ、じゃあ、フェリさん。これからよろしくね? でもそんなにかしこまらなくてもいいからね? お友だちになって欲しいな」
ボクは心からそう思ってそう言ったけど、フェリさん困った顔してる。……やっぱなかなか難しいみたい。
やれやれだよ……。
……春奈ぁ……。
ボク、まだ来たばっかだけど、もうお家に帰りたくなってきたよぉ。
ううぅ……。
到着早々、ホームシックに陥ったボクだった――。
動きがないお話しだなぁ……難しい。




