栗林義長の昇天(第3部最終回)
すみません。筆者体調不良(寝込んでますがコロナや大病ではありません。)で間隔空きました。
また次の更新すみませんが来週にさせてください。
門前に栗林義長が倒れていた。
凄い高熱だ。
敵とは言え病人を放っておくわけにも行かず、俺達は中に運び入れた。
意識が朦朧としていたので服を脱がせると、左のふくらはぎにひどい傷があり、そこが腫れ上がっている。どうやら傷から菌が入ってしまったらしい。
俺は稲見薬局長に頼んで点滴の準備などをしてもらった。
「本来なら全麻か腰麻でないと無理だと思うけど意識怪しいし麻酔薬局麻しかないし。ええいなむさん。」
と俺は麻酔薬を注射して膿んで腫れ上がってあたりを切開した。汚らしい膿がドロドロと大量に出てくる。出血を止めて傷は縫い合わせずにガーゼを詰めた。
それから数日間、ホムセンに残っていた抗生物質の点滴と傷の洗浄をし、栗林義長の熱が下がって意識もしっかりしてきた。どうやら山は抜けたようだ。
「…先生、やはり助けてくれたのか。そこまでこの戦国の世に染まりきっていない、と思った俺のカンは当たったな。」
「いったいどうしてあんなことに。」
「…油断した。不覚だった…いつものように敵を襲撃して戻ろうとした時に死んだと思っていた奴が最後の力でふくらはぎを切りつけてきてな。いつものように縫っておけば…と思ったのだが…あきらかに細菌感染をおこしていた…ペニシリンの製造はしていなかったから先生を頼るしかないと考えたのだ…」
「…まったくこれまで俺たちを翻弄してきて…」
「こうなったら仕方がない。俺は先生に降ることにする。」
「そんなことをして岡見様の方は大丈夫なのか。」
「高熱に浮かされて寝込んでいるところが突然姿消えたことになっているだろう。元々俺は『狐の化身』とされていたからそれで消えても怪しむものはいまい。」
…この点は後で忍者太田角兵衛さんに探らせたがそのとおりだった。伝説の狐の化身栗林義長は病に倒れた後忽然と姿を消して昇天したのだろう、とされていた。
さすがに『栗林義長』のままではまずいので…この後彼は彼の強い希望で『東郷 公』と名乗るようになった…ってデューク東郷じゃないか。
体格はともかくそれまでずっと来ていた軍服を着ないでいるようになったので、なにか同時代の周囲の目は誤魔化せているようである…いままでずっと軍帽を(偉い人の前でも)目深にかぶっていたのでどうやら『軍服の人』的な認識しかされていないようなのであった。
栗林義長改東郷公は密かに隠しておいた阿見の駐屯地の武器庫から1/2tトラック(通称パジェロ)に一通り武器弾薬などを積み込むと、ホムセンに持ち込んだのであった。
こうして1578年。牛久岡見家の『今孔明』天才軍師栗林義長は歴史の表舞台から姿を消した。
栗林義長の撹乱が収まり、多賀谷重経は一気に攻勢に出た。俺たちに牛久沼の突端に泊崎城を建設させると(さすがにそこは真面目に対応した)足高城を落として牛久沼以北の支配を固めたのであった。
多賀谷の攻勢が一段落して数年、俺達は『小田城に戻りたい』とごねる小田氏治公の相手はおいておいて、ひとまず比較的平穏な時を送っていたのであった。




