武藤店長
書いている内に話がなんか予想外な方向に進んできました。無事にこれたどり着けるかな?(おい)
体が薄くなったのが治った後に体調も戻ってきた俺は一度皆と今後について相談しようと思い、五月姫や手子生にいたホムセンの面々を連れてホムセンに向かうことにした。
ホムセンに着くと稲見薬局長が出迎えてくれる。
「薬局長!皆と相談したいことが。真田店長に声をかけて人を集めてくれませんか?」
「…真田店長?店長は武藤さんですが?」
…なにかがおかしい。俺の記憶では間違いなく店長は真田さんだったはずだ。
「真田さんが体調を崩して武藤さんという人に代わられたのですか?」
「いや最初から武藤さんが店長ですよ。」
お互いに訝しげな顔をしながらとにかく俺はホムセンの面々を集めてもらい相談をすることにした。
「…というわけで今はこのとおり無事だったわけですが、守谷城を根切りにされていたらおそらく俺は跡形もなく消えていたんではないかと。」
「つくづく従軍させないでよかったわ。」
と俺の説明を継いで五月姫が話す。
「多賀谷重経にそれを見られていたら厄介払いとばかりにわざと守谷城を草の根一本残さない用に根切りしていたに違いないわ。」
と聞いて俺は思わず震えた。
「つまり我々の祖先がどうにかなってしまうと我々もどうにかなってしまう、というわけなのですね。」
と武藤店長。どう見ても前からいる真田店長と同一人物なのだが…あ。
「武藤店長って、武田家臣の武藤喜兵衛の流れなのですか。」
「そうです。上州沼田城主で武田勝頼の懐刀と言われた武藤喜兵衛の子孫です。ちょうどこの時代の人ですからご先祖様にも会ってみたいものですな。」
いやそれは向こうが混乱しそうだから。
「武藤喜兵衛と言えば鬼謀で武田家の危機を何度も救った知将ですな。宗家を継いだ兄の真田信綱と連携して上杉や織田と渡り合ったという。私のあこがれの人です。」
と織部君…なにかが…と考えていたらはっと思いついた。
「そう言えば先日長篠の戦いがあったのですが。」
「おお、武田勝頼の攻撃から長篠城を織田・徳川連合軍が守り抜いた戦いですな。双方とも1000丁単位の大規模な鉄砲隊を組織し、わが国初の本格的な銃撃戦が繰り広げられたという。」
…やっぱり話が変だ。
「突撃した土屋昌続や真田信綱、そして山県昌景を始めとする四名臣は。」
「いや、突撃した、じゃなくて織田の陣から突撃した羽柴隊の仙石秀久を真田信綱が迎え撃った話でしょ?危うく撃たれそうになった秀久を秀吉麾下で最近話題の中村一氏が助け出した、という。」
…俺の知っている長篠と違う。
「では真田や四名臣は無事で。」
「無事も何も無事だったから後でご先祖様の武藤喜兵衛と共闘したわけで。」
と真田改武藤店長。どうやら皆の記憶自体が怪しい?
「ところで長篠の話そんなに詳しく誰に聞いたので?」
と俺が尋ねると
「瑞風改天海様の伝手で聞きましたが、そもそもそんな話歴史や戦史の本では常識でしょ。」
と稲見薬局長。
…俺は混乱したがどうやら皆の記憶自体が変わっているようだ。そもそも長篠の戦いでは織田信長と徳川家康の野戦築城に武田勝頼が無理押しして突撃し(勝頼が馬鹿というよりは退路の鳶ノ巣山砦を酒井忠次に落とされたことが原因)四名臣や真田信綱兄弟が戦死。
そのため武藤喜兵衛を名乗っていた弟が家督をついで改名したのだ…あの有名な真田昌幸に。
それがこの歴史では真田信綱が生き残っていたために真田昌幸にならず武藤喜兵衛のままでいたようなのだ。
「こりゃ大変なことが起きてきているのかも。ホムセンの人々で突然いなくなったり消えた人はいませんか?」
「今のところはいなさそうですね…」
俺はちょっと安心した。それから俺は自分が消えそうになったことを改めて説明するとともに真田店長が武藤店長に代わってしまったことを話した。
「…となると我らの行動が色々変化を起こしつつある、と。」
と武藤店長。他の皆に聞いたところだと俺が覚えているよりはメカ工作も得意ではないようで、ホムセンの武器も電気駆動バリバリのコンプレッサー銃などよりもここはベトナム戦か、と言いたくなるような罠が多く設置されているようだ。
「幸い例えば『上杉謙信討ち取っちゃった。』とか大きな変化は起こしていないのですが、今後はなにか我々に影響を起こすような大事があるかもしれません。」
「影響でしたらすでにありますぞ。」
と言い出したのは…手子生から着いてきた小田家元重臣元木田余城主の信太範宗殿だ。木田余を佐竹に取られて息子さん共々手子生に居候しているのだ。
「儂が読んだ限りでは儂はすでにそこにいる『元』お館様と土浦の菅谷めに嵌められて討たれていた身ですからな!」
と言われてこれも付いてきた『元お館さま』小田氏治公がビクッとする。
「…それはそこに書いてあった話であって俺はそなたを害するつもりはなかったぞ!」
と反駁する。
…誰だよWikipediaローカルに全部ダウンロードしておいてしかもこの時代の人に読ませたの。てか戦後以降の漢字略字よく覚えて分を読んだな範宗様。それ以前にノートパソコンを使えているのがふたりとも凄いが。
「それはともかく儂の息子も輝虎と戦った時に死んでいた身ですからな。死んでいる方はわからないが少なくとも貴殿らが来てから死なずに済んだものは多くいるのだ。」
豊田城(現常総市)の豊田氏も多賀谷重経に毒殺される所をなんとか家族一同で逃したりしたしなぁ。
「そうなるとここはどこかに隠れ住んでご先祖様が無事に命をまっとうするように願うのがいいのでは?」
と稲見薬局長。
「それが一番安全そうですが…すでに変わってしまっている上に我々の存在も結構知られてしまってます。ここはなんとか路を切り開いて生き延びるのがいいのでは?」
と俺。
「いややるなら天下取るのがよくね?パラレルワールドっぽいし。」
と盛り上がるのは二代目ヤンキー総長田原くん。
「なかなか意見はまとまりそうもないですね…」
と元真田あらため武藤店長。なんだか以前のようなキレッキレ感が減っているのがちょっと今後に不安を与える。
…今後については状況を見つつ相談、という事になり、その晩はホムセンに泊まることにした俺たちだった。
明日は江戸崎不動院の天海様のところにカボチャを届けて江戸崎カボチャを戦国時代からの伝統の産物にしようぜ、と変な盛り上がりを見せている時に、門番から報告が届いた。
「…ホムセンの方々のような服を着た眼光鋭い男が負傷して門前にいます。相馬先生を読んでくれ、と。」
俺たちは念の為武装して門前に出ていくと…そこでうずくまっていたのは忘れもしない栗林義長だった。凄い高熱でハァハァと息も切れ切れな様子だ。
また来週お願いします。週2−3回程度で続けてまいります。よろしく願いします。




