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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS栗林義長編
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主人公多賀谷重経に下妻に呼ばれる

第三部スタートです。今回の敵は伝説の今孔明栗林義長です。


佐竹義重に仕えることになった俺達は佐竹義重に与する下妻の大名、多賀谷政経の嫡男多賀谷重経の下知を受けることになった。政経は老齢であり、若森城奪取と築城の功を持って重経に家督を譲って隠居したのだ。


 小田家は佐竹の確保撃破というか飽和攻撃に近い攻勢に降伏し、土浦の菅谷様などの各城主は佐竹に仕える事となり、当主の小田氏治様は…小田城を追い出されて俺が城代を勤めている手子生城に客将ということで居候していた。


 これまで小田家は住民との密着性から小田城を落とされても住民が新しい城主に徹底的に不協力であり、容易に帰還出来ていたのだが、今回は城主が抜け目のない知将太田資正が勤めている上に降伏する際に『新城主に従ってね。』との書面を氏治様が出させられたのもあって小田城は落ち着いてしまっていたのだ。


 俺は城代を名乗っているのは元々氏治様に城主に任命された天羽源鉄先生を気遣って、なのだが佐竹義重様(とこうなっては呼ぶほかあるまい)の朱印状は俺を手子生と穂羣ホムセンの城主と認めていて…実質的には俺の城という扱いになってしまった。


 その天羽源鉄先生は佐竹に降伏した際は土浦城にいた。菅谷様などの降伏は認められたが天羽源鉄先生への扱いはなぜか厳しく、結局比叡山にいる天海様の口添えで出家となった。今では佐竹氏の外交僧岡本禅哲様の配下として働いているらしい。らしい、というのは史実ではそれこそ手子生などで小田家回復の兵を動かしていたはずの天羽先生だったのだが、どこか警戒されたのか佐竹の本拠、常陸太田に連れ去られてしまったからなのだ。


こうして小田旧領の処分が行われた天正2年(1574年)初夏、俺は下妻の多賀谷重経殿の所に呼びつけられた。


「ようよう。相馬殿。これからはよろしくな。」


 なんか気さくな雰囲気だが油断してはならない。多賀谷重経、結構毒殺などの謀略を好むのだ。


「早速だがこの酒でも飲んでくれ。」


 と銚子を差し出すのを置いてあった酒盃ではなく懐から出した銀杯で受ける俺。


「お?酒盃自分で持ってきたの?」


 まだ20前の多賀谷重経。衣装にもあちこち金が入っていてなんていうかヤンキー的である。さすが下妻物語の本場。どこか侍女たちも飾りが多くてゴスロリ的だ。


 と酒が注がれるとみるみるうちに銀杯が真っ黒になっていく。


「重経様。いきなり毒酒ですか。俺に死ねと。」


 と俺はジト目で重経を見る。


「これは間違いなく毒ですな。古典的な銀杯で見分けがつくような。」


 と横で稲見薬局長がうん、うん、とうなずく。やばい。いきなり殺されるかも。


 すると多賀谷重経はいきなりハッハッハと笑い出した。


「いやいや試して済まなかった。さすが『ホムセンの相馬』にはこの程度の策は見破られると思ったのだが。万が一見破れないようなボンクラならば滅ぼしてしまっていいかな、とな。」

「重経様も人が悪うございます。」

「そこは『お主も悪よのう。』と言ってほしかったな。」


 そう、この多賀谷重経、度々手子生に押しかけてきては蔵書の各種コミックなどを読みふけり、変に現代知識に毒されているのである。


「そこで本題だが。」


 どうやら毒殺の試しは終わったらしい。


「我々多賀谷はお館様(佐竹義重)の命で常陸南部から下総を切り取る様にいわれておる。下総と言っても旧主の結城は攻めなくても良いがな!」


 と言ってまた笑う。


「当座の敵は牛久とその支城を治める岡見治久だ。お主も覚えがあろう。」


 …覚えている。なぜか知らないが毎度毎度府中の大掾氏や結城氏を攻めようとする小田氏治公に自らの領国である牛久などへの援軍を頼んでいては放置されていたちょっと気の毒な人だ。


「その岡見治久、小田家の降伏とともに旗幟を鮮明にして小田原北条の配下となった。牛久城は北条の番城となって武蔵や下総から兵を入れているのだ。」

「先に重経様が落とした谷田部城は元々岡見治久さ…の居城でしたね。」


 思わず『様』着けて呼びそうになった。あぶねー。


「そうだ。そして谷田部から我らは南下しようと計画しているのだが、度々攻略に失敗しているのだ。」

「その原因は?」

「それが近年岡見治久に雇われ、下総土岐氏との戦いで敵の軍船を火の海にして若栗城主に任ぜられた男、栗林義長という奴なのだ。」

「多賀谷様ほどの武勇を誇る方がその栗林にどうして。」

「それが栗林義長は神出鬼没。東林寺城に現れたかと思えば谷田部を襲撃し、どこを攻めても出てくるのだ。更に奴は火を使う。」

「火ですか?」

「そうなのだ。栗林義長が現れる所軍船は火の海になり、遠くで銃声が聞こえたかと思うと姿も見えないのに将兵が撃たれる。なにもない所を油断して進んでいると突然爆発する、といった調子なのだ。」

「…随分銃や火の扱いに慣れているようで。」

「そうだ。それってどこかの誰かに似ているとは思わんか?」

「それって…俺達のことで?」

「そう!そのとおり!」


 と言って膝を叩く多賀谷重経。


「でも俺たちがこっそり裏切って栗林とやらを名乗って居るわけではありませんよ。」

「うむ。それは相馬殿がそちらに出向いていないのは確認しているからない。」


 信じてくれてよかったよ。しかし栗林義長、なんか現代的な兵器を使っているのか?長距離からの狙撃とか。真田店長が作った武器を密かに盗み出した忍び崩れとかなのだろうか。


「いずれにせよ栗林義長に対抗するには相馬殿たちホムセンの者の助けがいると俺は考えた。」


 と多賀谷重経。


「我らとしては谷田部城の支配を固めた上で、まずは足高城、東林寺城、若栗城の線を打ち破りたい。手子生衆は我らとともに出陣して栗林義長に対応してもらいたい。」


「はっ。」


 と俺は素直に命を受け、手子生に帰還した。…しかし毒殺パート2とか策がなくてよかったぜ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・この程度の策は見破られると思ったのだが。万が一見破れないようなボンクラならば滅ぼしてしまっていいかな、とな。  軽い試しで毒を盛ろうとしてもいいなら下剋上も切腹も必要無いんだが?
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