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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS佐竹義重編
56/68

真田店長、かねてからやってみたかった策を実行する

連載再開します。よろしくお願いします。

 佐竹とホムセンの戦いは3日目を迎えていた。兵糧や弾薬の備蓄は山ほどあるので(芋や米を本丸…というか元々のホムセンの倉庫にためこんである。)そちらの心配はないのだが、1万はいそうな佐竹の大軍を数百人のホムセンで抑え込むにはちょっと人手が足りない。


 戦国武将の強弓にはPVD管改造ロングボウやボウガンモドキで対抗し、火縄銃には火縄銃とエアコンプレッサー改造発射機で対抗、門を破るべく仕寄が寄ってきたらカタパルトで爆裂弾を打ち出して追い払う、と一歩も引かず戦っていたが、真田店長が言い出した。


「ここは外郭は捨てて本丸に立て籠もりましょう。」


 外郭にも太陽電池ベースでエアコンプレッサー砲を設置していたのだが、本丸…つまりホムセン本体を取り囲んで作った部位だとホムセン本体の屋根を覆ったデカイ太陽電池から供給できるので電力が無尽蔵に使えるのだ。しかも堡塁自体外郭はドロドロの粘土で覆って登りにくくしているが、本郭はさらに土塁の上にブロック塀を並べ、ホムセンの資材のコンクリを使いまくってトーチカをあちこちに作ってある。


「人数的にも本郭ならカバーしやすいですが、ちょっと追い詰められちゃっているのも確かですね。援軍がないと辛いのでは?」


 と俺が真田店長に聞くと、


「とはいっても外郭の維持を狙って武器や弾薬をジリジリ削られるよりも本郭に集めてハリネズミにしたほうが勝ち目があると思うのだよ。」


 と自信アリげ。相談の上で真田店長の策に乗ることにしてた俺達はその日の戦いが終わると篝火を焚いて、さらにわざとドローンを飛ばして警戒している素振りを見せた。


 ドローンが偵察兵器というのはすでに佐竹家にはバレているからドローンをうるさく飛ばし、本郭から適当にカタパルトで佐竹の陣の方に打ち込み続けたため、俺達の警戒が緩んでいない、と思わせたのだ。


 その間にエアコンプレッサー砲など使えそうな兵器を本郭に運び入れて配置し、結果32機のコンプレッサー砲がジグザクになった堡塁からほとんど死角無しで撃てる体制を整え、各方面に真田店長御製長銃身火縄銃改めマッチロック銃を配備した。…ここでライフル銃でも量産できていればいくらでもアウトレンジで攻撃出来た筈なのだがそこまではホムセンの資材では難しいか。例の3Dプリンターを使った奴は弾がなさすぎて首脳陣の自衛用になっちゃっているし。


 4日目の朝がくると、佐竹の軍は俺達の抵抗がないのに気づいて外郭の門を打ち破り、なだれ込んできた。それから外郭に作られていた倉庫に多くの兵がなだれ込んでいったのを俺たちはホムセン屋上に作った物見台から見ていた。


「こんな事もあろうかと。」


 と真田店長が言うと同時に倉庫は突然大爆発を起こした。


「おお、すげー。」


 俺は思わず声を漏らした。


「一回やってみたかったんですよ、粉塵爆発。」


 と真田店長。昨晩撤退する前に倉庫には小麦粉とマグネシウムの粉末を混ぜたものを舞い上がらせて充満させ、落ち着かないようにサーキュレーターでかき回し続けていたのだ。


 そして敵軍が目一杯入ったところで…電気ケーブルでつながっていたスイッチを


「ポチッとな。」


 と店長が押したタイミングで倉庫内で発火して爆発するようになっていたのである。


 当然ながら倉庫の大爆発を受けて、外郭の略奪をしつつ本郭を取り囲もうと展開しようとしていた佐竹勢は腰が引けた。


 なにせどの建物が爆発するかわからないのである。


 他の建物に入った兵は…充満した塩素ガスにやられて慌てて仲間を引きずり出しているのが見える。建物から漏れた塩素ガスは致命的とはならないでも刺激にやられた兵が逃げ惑ったり、咳き込んだりしているのが見える。


 足軽大将らしき人物が軍配を振って、佐竹勢は本郭の濠に寄ってくるよりは外郭の各門をとりあえず確保してそこから中を伺う様子になった。


 一部の勇気ある侍が本郭の土塁に向かって濠の縁まで来たが…それは威力こそはしょぼ目ながらもちょっとした機関砲のように放たれるエアコンプレッサー砲の餌食となって味方に引っ張られていったのであった。


 佐竹勢がおっかなびっくり外郭の建造物に入って、そろそろ大丈夫だろう、と人数を呼び寄せたところで爆破、は何度か繰り返されて佐竹の兵は門に殺到した。一旦仕切り直しということだろう。


 そうして佐竹隊が外郭の建物を一通り回って爆破されたり何もなかったりでようやく確認を終えた様子になるにはもう3日ほどが経っていた。


「店長、いよいよ佐竹勢もこの本丸を取り囲む様子ですね。」


 と俺は店長にいうと


「外郭でだいぶ交戦意欲は削ったと思いたいですけどね。まぁ当面は耐えられると思いますけど。コンプレッサー砲はセンサーに引っかかったら自動で撃つようにしましたし。」


 …射程になにかが通ると自動的に撃つようになっているらしい。それで敵兵を追っ払うこともできたが結構カラスとかが討たれてしまっているのはちょっとかわいそうかも。


 佐竹義重も外郭でて痛い目にあったと考えてくれたのか、攻勢は散発的で死闘と言うよりはにらみ合いが続いた。


 こちらとしては兵も武器も足りないから攻め込まれるまでは行かないけど押し返すのは難しい。後漢の光武帝なみの英雄でもいれば別だろうけど。


 佐竹の方は佐竹の方でホムセンの訳のわからない罠や兵器相手で被害が出ているので攻めあぐんでいる印象であった。


「うーん。このままこちらが手が出なくなるのが先か、佐竹が諦めて帰ってくれるのが先か。」


 野球軍団の長、乱馬さんがぼやく。


「北条でも援軍に本当に来てくれれば助かるのですが。」

「それは来ないぞ。」


 と声がして俺はあがった。振り返ると…そこには地味なおじさんがいた。でも見覚えがない。


「その体格!風間小太郎本人!」

「俺を見破るとはさすが相馬典薬。」

「そんなことは。それよりなぜ。」

「北条の本隊は下野方面への攻撃で忙しいのだ。」

「それでこの場に水谷正村が参陣してない、と。」

「その通りだ。水谷は下野方面が本来の担当だからな。奴のせいでなかなか下野攻略がうまくいっていないのだ。」

「常陸に回す兵はまだあるのでは?」

「そちらは土浦の菅谷を救援するべく北条氏照様が向かったが、牛久城の岡見と合流したところで足止めされている。」


 …ヤバい。後詰めがなければジリ貧だ。しかも俺達としてはホムセンを放り出して逃げる選択肢は…実質ない。


 頭を抱え込もうとした俺の視界に、なにか違和感のある映像が入ってきた。


 …佐竹の軍勢の後方で土煙が立っている。双眼鏡で思わず覗いてみると…


「あ。援軍らしいのがきた。」

「北条は来ないのでは?」


 と真田店長


「見てください…あれは…小田氏治公!」


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