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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS太田資正編
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手這坂の戦い その1

 天正元年。俺たちホムセン組は小田家最大の敗北にして衰退のターニングポイントと思われる手這坂の戦いを阻止するべく、行動していた。


 この年佐竹の傘下ながら仲の悪い府中(石岡)大掾氏と水戸の江戸氏がまたもや諍いを起こし、合戦になった。佐竹義重は江戸氏に味方し(地理的にも佐竹の本拠常陸太田に近いし元々江戸氏は佐竹の家老から半独立になった家なのだ)大掾氏はまたもや北に兵を貼り付けることになった。先年の失敗にも懲りず、小田氏治公は再び兵を招集し、大掾氏攻めを決した。ただし前回軍議には参加していた岡見治弘様を始めとした岡見一族は元の本拠の谷田部城を多賀谷政経に落とされていたため、今回は軍議にも参加しなかった。多賀谷の攻勢にさらされているから仕方がない。


 そして前回は大掾攻めに参加していた俺たちホムセン組も天羽源鉄先生を除いて今回は小田城の守備に入るように命ぜられた。


「お主ら手子生衆がいなくても大掾めは打ち破ってみせるわ。」


 と自信を持って言放つ氏治様。天羽先生は…まぁ現地での氏治様の暴走抑制が仕事だから仕方がない。


 俺は氏治様に命じられたとおり鉄砲50丁の部隊を率いて小田城に入り、配下の飛加藤忍者軍団を手這坂城、宝篋山城、多気山城等周囲の山城に配して真壁や太田資正父子の動向に備えた。


 しばらくして小田氏治様から伝令が来た。


「我ら小田勢は大掾常春の三村城を落としました!」


 前回は攻めきれなかった三村城を落城させたのである。氏治様が率いていった軍勢は約2000、大掾常春は府中に兵も出していたため300ほどしかおらず、あえなく討ち死にしたと言う。


 戦の常とは言え25歳と若い気の毒な大掾常春の討ち死にに俺は密かに祈りを捧げた。


 江戸と大掾の争いに乗じた火事場泥棒的な攻略だったとは言え、小田はついに恋瀬川南岸の要衝、三村城を手に入れた。これで小田城から見て筑波山の裏側、北側は手這坂から三村につながる恋瀬川に沿った面を確保出来たことになった。


 …となると次に言い出すことは分かっている。小田に戻った氏治様は予想通り言い出した。


「三村城を手に入れた今、太田資正の片野城と梶原政景の柿岡城は我が帝国に刺さった棘である。」


 それは前に聞いたってば。


「今こそ陣を整え、手這坂から出陣し、資正の片野城を落とす!」


 こうして『手這坂の戦い』が始まったのである。


 大掾氏を叩いた小田氏治公は兵3000を用意して筑波山を越え、手這坂に布陣した。


 まぁここまでは史実通りだ。ところで手這坂の戦いでは梶原勢が雇った根来衆に狙撃されて谷田部城主の岡見様が倒れたのが小田敗北のきっかけになった、とあるのだが、岡見治弘様はこの頃には史実でも小田から離れ気味だったと思うし、死んでいると話が合わないのでなんか変なのだ。死んだのが一族の別人というのが一番合いそうだが。


 しかし今回は小田は混乱するどころか100丁あまりの鉄砲を装備していた。そして俺も今回は動員に駆り出され、小田勢の正面のそなえに配置されていた。備といっても山道だからまぁ、隊の区切りぐらいにしか並ばないけど。


「旦那、旦那の言う通り梶原の伏兵が先にいますぜ。鉄砲を用意してこちらが近づいたら狙撃する構えです。」


 とすっかりニンジャ振りが板についてきた元盗賊頭領、太田角兵衛さんが報告してくる。そう言えば角兵衛さん、話し合いおばさんとくっついてすぐに息子生まれたんだよな。と思い出す。


 ホムセン自慢の双眼鏡、7x52軍用でも行けそうなスペックを使って俺は角兵衛さんの示す方向を見る…距離200、というところか。


「乱馬さん、行ける?」


 と俺は野球軍団長の乱馬さんに声をかける。乱馬さん、乱戦でヒートロッドモドキを操るのが印象深いが、元々サバゲマニアで…狙撃が得意なのだ。恐ろしい。


「この特別調整の銃があれば行けるやもしれません。」


 とクロモリ削り出し銃身を持つ真田店長謹製長銃身管打銃を出す。

 ちなみに俺は射撃は褒められたものではないのだ。ははは(虚しい笑い)


 乱馬さんは銃を構え、スコープ(単眼鏡改造)をじっと眺める。

 すっと息を整えたかと思うと引き金を引き、パンッ!と大きな音が響き渡った。


「なんじゃ、敵襲か!」


 音に驚いて前衛から菅谷政貞様が飛んでくる。


「敵の伏兵がこちらを銃で狙っておりました。」


 と俺は双眼鏡で眺めながら説明する。


「…敵の狙撃兵は討ち取ったようです。」

「それは上々!皆のもの!敵じゃ!総掛かりで参るぞ!」


 と菅谷様は法螺貝、太鼓を鳴らし、小田勢は戦闘態勢で坂を下って前方の梶原勢に襲いかかる。


 梶原勢はろくに防ぎもせず、すぐに踵を返して逃げ出した。


「ははははは。坂東に聞こえる武者というのは飾りか?逃げるばかりじゃ。」


 と氏治公は追撃を命じ、梶原勢を追い散らす。


「…あれあれ?なんか変だぞ。」


 俺は狙撃兵を討ち取ってこちらの混乱を防いだことに安堵しつつ、違和感を感じていた。


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