嘲笑
八話目です
捕らえた貴族たちを収監する、貴賓用の牢。
そこに、ユーリはいた。
彼女は、ぽんやりと格子のつけられた窓から外を眺め続ける。
時折、何やらブツブツと独り言を呟いていた。
「……何だか、城の雰囲気が騒がしくなったわね。そこの貴女、様子を見てきなさい」
彼女が指示を出した先には、誰もいない。
そもそも食事や身支度以外、この部屋には彼女以外誰もいなかった。
人気もなければ、王国の金を湯水のごとく使っていた彼女からすれば見すぼらしく侘しい牢の中。
けれども彼女の目には、それまでの暮らしと変わらない光景が映っていた。
「……ああ、そっか! 計画が、進んだのね」
答えはなかったものの、彼女は不審に思わない。
既に彼女の中では幻の侍女に指示を出し、その幻の侍女は彼女の指示故にこの場を離れたのだと彼女の頭の中に変換されていたのだから。
「ディヴァン、やっぱり貴方が迎えに来てくれるのね。……そうよ、そうだったわ。私が、見捨てられる訳ないじゃない。あの第一王子も変なことを言うんだから……」
彼女は、安心したように笑む。
『お前はまるで、人形だな。ディヴァンによって作り上げられた』
彼……第一王子は、そう彼女のことを蔑んだ。
『人形師に捨てられた、哀れな哀れな人形。ディヴァンはとっくに王都から引き上げた。お仲間を連れてな』
そう言われて、彼女は会議で取り乱したのだ。
ディヴァンが、王都を出た……? 私を見捨てて! と。
けれども、もうそんなことは関係ない。
何故なら……。
「どうせ、この国はもう少しで滅ぶのよ。だから、この国の王妃なんて執着しなくても良かったのに……私ったら、馬鹿ね」
クスクスと、彼女は笑った。
「さあ、早く迎えに来なさい。ディヴァン」
その呟きは、誰の耳にも届かなかった。




