潜入調査 弐
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次の日、私とディーンで役場に潜入した。
実際、領都で領官科の生徒たちが職場体験と銘打って領官たちの手伝いをしているのだけれども、それが人気だったので各地の主だった街にも派遣しているところなのだ。
領官・役人にとっては人手不足というのがあるし、生徒たちにとっては将来自身が領都で働くだけではなく、各地の役場で働く可能性があるため、早めにそれを見ておけるということで。
というわけで、私たちも生徒として潜入した。
これも勿論、学園の方には根回しが済んでいる。
生徒たちの貴重な機会を奪うようで心苦しい気がするので、この件が片付いたら必ず希望者たちの希望に添えるよう最大限努力しようと約束した。
それはさておき、昨日の変装とは全く異なる変装になった。
今日は私がメガネをかけて、おまけに藍に近い黒髪のカツラを被っている。
黒髪も街中にいるので、違和感はない。
何の髪色もあるあたり、ファンタジーよね。
現実的な話をすると、港町のここでは異国の人たちも結構貿易で滞在していたりするので、髪色だとか容姿の特徴とかのバリエーションが特に豊富な気がする。
同じく変装したディーンと二人で、再び役場の扉をくぐった。
予め学園と私の方から通知があったためか、役場では生徒証を見せるとすんなり入り込むことができた。
こちらで仕事を選り好みできない以上、ディーンとは別れての行動になってしまった。
……仕方ないことなんだけど。
それにしても普段は指示を出す立場だから、こうして指示を受けて雑用をするのは前世の新人時代以来で新鮮な気分。
あちこちに書類を回したり、簡単な計算をしたり。
とはいえそれにばかりかまけてもいられないので、どうしても片手間だけど。
それにしても、アイリスとして視察に来た時には絶対聞けないような職員たちの裏話や噂を聞けるっていうのは楽しいわね。
「……アリスさん、そんなことまでしてくれなくて良いのに」
「いえ。私は大して戦力になっていないのに、たくさんのことを学ばせていただいていますから。このぐらい、当然です」
気遣ってくれた職員の人にそう言い切って、作業に戻る。
今私がしているのは、ゴミの回収。
ゴミといってもただのゴミじゃなくて、燃やす予定の書類ね。
書類関係は、毎日焼却するというのがルールとして徹底されているのだ。
私は集めたそれらを、竃へと持って行った。
捨てる前に、ザッと中身を見る。
……ビンゴ。
内心そう言って、ほくそ笑む。
処理の終わっていない筈の書類や、住民たちの陳述等々。
正に探していたそれだ。
誰が捨てたのか、各個人の個別のゴミ箱から直接回収する時に分かるように重ねて入れておいたから、誰がこれを燃やそうとしていたのかも分かる。
今回の件についての成果もあったし、何より実地の視察もできたから有意義な時間だった。
終業時刻にディーンと合流し、完了報告と御礼を面々に伝えて宿に戻る。




