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ユ:突発ミッションクエスト


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 昨日はなんだかんだ最後まで南方向の伐採で終わった。

 倒した木がそのまま資材として回収されて自分の物にならないからか、伐採は割と不人気らしい。

 南の大樹海は特に木が大きくてスキル一回だと倒し切れないから手間もかかって余計なのかもしれない。

 俺達は資産を増やしたくないから、むしろちょうどよかった。二人揃っての伐採は割と楽しめたしな。


 さて、今日は何をしてポイントを稼ごうか。


 二人でピリオに転移すると、「緊急ー!!」という切羽詰まった声が聞こえてきた。


 クエスト受付の兵士が、焦ったように声を張り上げている。



「西方、『石の街ロックス』にモンスターの襲撃! 行ける方は援軍に向かってくださーい!!」



 ──突発ミッションクエスト

 ──『石の街ロックスの防衛』を受諾しますか?



 俺と相棒は顔を見合わせて頷いた。


 よし、今日はとりあえずこれだな。



 * * *



 いつかのエゴマ亭襲撃に外で巻き込まれたのを除けば、俺達が余所の拠点の防衛に参加するのは初めてだ。

 そして俺達が本気を出すなら、死霊魔法とネビュラの関係で変装していた方が都合が良い。


 そういうわけで、俺達は一度拠点に取って返し、装備を変えたりアイテムを用意したりと諸々の準備を済ませた。


「忘れ物は?」

「無い! はず!」


 ネビュラを連れて、転移オーブで移動する。


 転移先はロックス……ではなく、手前のモロキュウ村。

 到着したらすぐにネビュラに乗って村を出る。


「ネビュラ、西に全速力」

「承知」


 ネビュラの脚なら、ロックスまではあっという間だ。



 ロックスの周辺のモンスターについて、俺はカラス探しのついでにざっと確認してあった。

 あの辺りの敵は火力はそれなりだが、コンドル以外はやたら硬い代わりに動きが遅いモノが多い。

 初心者三人組を送って行った時も、動く岩相手には矢が通りにくいから魔法と短剣を多用した。


 まぁ簡単に言えば、相性がいまいちよろしくない。


 だったら後ろから攪乱とデバフを撒いた方が役に立つんじゃないかと考えて、モロキュウ村からネビュラで走る事にしたわけだ。


 あれだけ採掘で賑わってた街の防衛なら人が多そうで、そこに変装姿で混ざるのは気が進まなかったってのもある。



「主、ついたぞ」


 大丈夫、見えてる。

 崖の上から、遠目に見えるのはロックス。

 岩山の中腹にある街は、大量のモンスターに囲まれている。



 ゴロロック Lv10


 ラージゴロロックLv15



 わかりやすく歩く岩って感じの硬そうなモンスターだ。

 ただ、街に攻め込むには狭い坂を上らないと辿り着けない構造になっているから、そこで敵の数を絞って近接戦闘職が前に出ているらしい。

 開かれた門を背中に、前線を維持している近接職。

 あ、あれグレッグさんだ。それと熊爪手甲のナムサンだっけか……サボテングローブ着けてるミケコとか盾構えてるノンアル・ゲッコーも見えるなぁ。


「準備いい?」


 背中の相棒に問いかけると、ゴソゴソ動いた感触の後に違和感を感じる声で返事があった。


「オッケー」


 ネビュラに指示を出して、敵の群に背後から突進する。


 防衛に来る準備をしていた時、相棒は今回の景品から低ポイントのお遊び的な特殊効果消耗品をひとつ交換していた。



【声変わりシロップ】

飲むと一定時間自分の物ではない声色で話す事ができる。



 要は短時間ボイスチェンジャーだ。

 変装している時に声バレしたくない俺達にはお誂え向きなんだよなぁ。

 特に、声を聞かせる事で発動する相棒の魔法には尚更。


「【トリック・オア・トリート】!!」


 山岳地帯に響く、普段の相棒とは違う声。

 モンスターも、迎撃している人も、一瞬こっちに意識が向いた。


『贄をよこせ、さもなくばデバフをかける』って何度思い返しても理不尽なカツアゲだ。

 モンスターは『拒否』と言わんばかりに不満気な唸り声を上げる。すると黒い靄が纏わりついて、防御低下のデバフがかかった。

 数発打ち込まないと倒せなかった熊爪手甲が、一発で岩そのものなモンスターの体を破壊して打ち込んだ当人が一瞬驚いた顔をした。


 俺達を乗せたネビュラがモンスターの群の中に突入する。

 回避だけに専念させて、敵の攻撃を掻い潜る。

 これだけ近ければ、もうパチンコだって必要ない。俺はインベントリからいつぞや調合したアイテムを取り出した。



【昏倒の粉薬】…品質★

吸い込むか飲むかすると目眩と意識の低下を引き起こし、立っていられなくなる粉薬。



「【ウィンドクリエイト】」


 ゆるい風に乗せて、粉薬を周囲の敵に撒き散らす。

 吸い込んだモンスターが動きを止めてその場にバタバタと倒れだした。

 その間に、背中の相棒はMPポーションを飲んでリチャージが完了している。


「【サモンネクロマンス:霊蝶の群長】」


 ロックスより少し離れた地点の敵集団の直下から、ゲーミングみたいに虹色に光りが反射する蝶が溢れ出した。

 今回は敵の数が多いからランダム精神デバフも選り取り見取りの見本市状態だ。距離があれば味方が危ないこともない。


 戦闘不能状態の敵がどんどん増えていく。範囲デバフの手札は多いな俺達は。

 そこに降り注ぐロックスからの魔法攻撃。

 後続が来ないから近接職も前線を押し上げ始めた。


 ……よし、これだけやれば充分だろ。


 ネビュラに指示を出して、敵を見下ろせる位置に陣取った。

 後はコツコツ倒すだけだから、ロックスのプレイヤーがメイン火力でいい。相性いまいちな攻撃でも追い風くらいにはなる。


 相棒の魔法攻撃の横で、岩を相手にコツンコツンと矢を当てる。


 そうしてモンスターの数を減らして、近接職が坂の下まで押し込んだ頃。



 ──ズズ……ン



 地響きと一緒に、山の岩陰から岩の腕が生えた逆三角のデカい岩が出てきた。



 ラージゴロロック・スピン Lv20

【防御低下】



 ……うん、回るのか。

 そしてさっきから相棒の声が聞こえる位置にはいたんだな。

 仲間が殺られる前に出てこいよ。


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[一言] スピンくん(防御力低下中)「大物は後から登場するものなんすよ」
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