キ:春の魔女集会
だいぶ長くなりました……文字数いつもの倍です。
時間に注意してお読みください。
半年ぶりの魔女集会にちょっとテンション高めなキーナです。
ふふふ、楽しみだねぇ。今回はどんな魔女ファッションが見られるかなー?
僕にとっては完全に雰囲気と魔女ごっこを楽しむ場所になっている魔女集会。
前はね、どんな人達が集まってどんな感じなのか分からなかったから慎重にしてたけど、まぁ2回目ならもう少し緩くてもいいかなーと思う。
なので今回は、手土産にいつもの林檎も持ってきてみました。
っていうのも、僕ら、森夫婦として検証勢にユメツツミ豆を提供したからね。魔術師団長にこそっと提供したのとはわけが違う、普通に有志wikiに情報を載せる許可を出した提供だった。
それによって、前回の魔女集会で豆を渡した参加者には、僕が森女だって繋がるようになったのだ。
だから、森女だって分かるのはいいかなって。
まぁ招待状を貰ってるのは素の状態だから、それこそ招待状を渡してくれてるヒトはワンチャン森女=キーナもお察ししてるのかもしれないけどね。いつもの服屋のハニーカプチーノさん。
でも特に何も言われた事ないから、僕の考えすぎかもしれないし。
なんて考えつつ歩いていたら、会場に到着しましたよ。
『☆フェアリータウン☆』の隠れ家カフェ、『割れた砂時計』。
街中は春らしくピンクや白の花で明るい雰囲気の中、この店も花壇いっぱいに芝桜が敷き詰められてほんわかとメルヘンな雰囲気が咲いている。
光学迷彩マントでドゥルドゥルした謎の存在のまま街を歩くのはちょっと不審者だったけど、仕方ないね。
ネモに透明人間化の指示……オッケー。
声変わりシロップ……オッケー。
よし、突撃ー!
ミルクチョコレートみたいな扉を開けて、こんにちは。
うん、店の内装は前と変わってないね。シックで落ち着いた木造建築に、今日は春の花が花瓶に飾られている。
……あ、でもなんか音楽がかかってるぞ? 穏やかなクラシックみたいな曲。
音源へ視線をやると、蓄音機みたいな形の家具があって、レコードの代わりに大きな貝殻がセットしてあるのが見えた。へぇー、あんなのあるんだ。
店員さんの前で光学迷彩マントをインベントリへ収納して、招待状を見せる。
さすがプロ。半年ぶりとはいえ、2回目ともなれば動揺は顔に出なかった。そのまま奥へとご案内。
店の奥、席に数字が金の糸で刺繍された黒いテーブルクロス、それがかけられた大きな丸テーブル。
そしてテーブルを囲む猫足の椅子と、そこへ座った魔女達。
「あ、お久しぶりです」
「どうもー」
「……」
「お久しぶりー」
んー! みんな前回よりも魔女衣装が個性的になってる気がする!
なんだろう、派手とかじゃなくて……もっと好みを前に押し出して来たっていうか、振り切った感じ!
例えば民族系の魔女さんは、衣装の刺繍が前よりも呪術っぽい雰囲気になっているし。ゴシック系の魔女さんは、刻印入りの眼帯とか包帯とかが増えた。
いいねぇ、個性が強くなって集会がますます魔女の万国博覧会みたいになったねぇ。
そんな面々と順に挨拶を交わして……透明人間状態の僕は、そのヒトを見て見えない顔が思わず笑顔になった。
「こんにちは」
「フフフ、こんにちは」
ラベンダー色の髪とロップイヤーの上にかけられた、いつもとちょっとちがう総レースのベールは、今回のために新しくしたのかな?
セクシーダイナマイトな体に纏っているのは歩くのも困難なくらいに裾が長いマーメイドドレス。星屑を散らしたっぽいそれは、所々にいつかのプカプカ浮かぶ素材を使ってるみたいで、長い裾は宙に浮いていた。
目には目隠し。そして額に第三の目。
そう、今回はアルネブさんも魔女集会に初参加なのだ!
* * *
とは言っても匿名オッケーの魔女集会だから、特にインタビュー大会みたいな事にはならなかった。
みんなチラチラ気にしてはいたけどね。
だってアルネブさん声変わりシロップも使ってないから、セクシーダイナマイトボディと相まって、どう見てもムービーに映ってた森一味のヒトそのものだもん。
人目を避けられるから気にしなくても問題ないんだろうけど、見てるこっちがちょっとハラハラしちゃったよ。
前回と同じように、時計の文字盤に対応した呼び名で会話を交わす。
例によって自由席で、みんな前回の席なんて覚えてなかったから、多分ほとんどの魔女が前とは呼び名が変わったかな。
今日の僕は『4時の魔女』
そしてアルネブさんは『5時の魔女』
今日は席が2つ空いていて、参加者は10人。
前回の参加者に、アルネブさんが増えた形。
「皆、なんだかんだ魔女に転職はできたんだよね?」
「出来ました」
「……!」
「出来てまーす」
「あの、占いの本って5時の魔女さんが書いたんですよね? その節はお世話になりました……」
「フフフ、いいのよ。魔女仲間が増えて嬉しいわ。ね?」
「ねー」
「4時の魔女さんも、前回は夢魔の情報とアイテムありがとうございましたぁ」
ええんやで、な気持ち。
魔女ロールプレイ楽しいよ、ってノリだけで提供した感じだったからね。
「あ、でも、夢魔の事は最近の情勢からそろそろ広まると思う」
「あー、じゃあそろそろ魔女もオープンになりますかね?」
「どうかしら、魔女職って【占術】が必要だから」
「うんうん、そこを内緒にしとけば、まだ謎の職でいられると思うよ」
【占術】はアルネブさんが本を書いてこっそり魔女好きそうなヒトに渡していたけど、なんだかんだここにいるメンバーが全員【占術】を習得した所で一度ストップしているらしい。
「あんまり一気に増えるのも、ね?」
「どうせなら、呪術士さんみたいに師匠と弟子とかで伝えた方が面白そう」
「それいいですね」
そんなわけで、本はアルネブさんに返却しようかって流れになったんだけど……
「それなら、写本を作ってここの魔女がひとり1冊持てばいいわ。そうしたら皆、魔女の師匠と弟子になれるわよ」
アルネブさんの言葉に、全員静かにテンションが上がって満場一致で可決された。
そしてテーブルの上に差し出された【占術】の本。
おおー、すごーい。めっちゃ高級な本だ!
革張りに箔押しに金属の補強と鍵、そして細かな刻印の装飾。
これはもう完全に魔導書ですよ!
アルネブさん、こんな手の込んだ物作ってたんだー……って思ってたら、本に手を伸ばしかけて不思議そうな顔で固まった。
「えっ? ……私、簡単な冊子を作ったはず……?」
ギギギ……と音がしそうな動きでアルネブさんが周りを見ると、何人かの魔女さんがペカーッと輝くような笑顔で誇らしげに頷いた。
「「「「私達がやりました!」」」」
「……あらまぁ」
わぁー、仕事人の顔だぁ。
アルネブさんは苦笑い。
そして人数分作られた写本は、この職人達の手によって全て見事な魔導書仕様へと完成させられ、ひとり1冊ずつ配布となったのだった。
* * *
楽しいお茶会は穏やかに過ぎていく。
お茶のおかわりと一緒に、2時の魔女さんが持ってきてくれた砂糖みたいに甘いお花を味わって。
見覚えのある9時の魔女さんの、剣士さんとの恋模様を聞いたりとか。
魔女に似合いそうな店や開拓地の情報を教えてもらったり。
小人の7時の魔女さんが、今度新聞社に入る事になったけど、この集会のことは内緒にするから安心して欲しいって話を聞いて、皆で応援したり。
今は、それぞれがちょっとした物をお土産に持ってきていて、それをテーブルに並べて配布して盛り上がっている。
「じゃあ水盆をずっと外に出しておくと、『月の光』が素材として採取出来るようになるってこと?」
「そうみたい。水盆の素材を変えて実験してたんだけど、銀のお皿が一番効率が良かったかな」
「へぇー」
小瓶に入った月の光は、タプンとした透ける銀色の液体でほのかに光っている。
キレイだねぇ、小瓶に入っているのがまた雰囲気があって良し。
「帰ったらやってみよう」
「同じく、どうせなら大っきな銀の器注文したい」
「あらいいわね」
アルネブさんはお土産にプカプカ浮かぶ素材を少量持って来てて、魔女のみんなが『はわわ』ってなってて面白かった。
「い、いいんですか……っ!?」
「……! ……!」
「もちろんよ」
「わぁー、ありがとうございますー!」
「小人、これだけで飛べそう」
僕も【夢魔法】のキノコと、知恵の林檎をお裾分け。
キノコは『おおー!』って感じの反応だったけど、林檎を見た途端みんなの顔にデカデカと『やっぱり!』って書かれたような気がした。
「そういえば、皆さんは次のフリーマーケットはどうされるんですか? この辺のアイテムとかは、売ったりします?」
「私は今の所考えてないわね」
「同じくかな」
お裾分けで持ち寄られたアイテムは魔女っぽい感じの珍しい物が多いから、僕のキノコも含めて皆フリマに持ち込むつもりは無いみたい。
「あ、でも、魔女っぽいファンタジーな雑貨の新作とかはフリマに出す予定です」
「うちも服は出すよ、良ければ見に来てね」
でもそれはそれとして、ファンタジーな作品はフリマに出品する予定らしかった。
そうだね、僕も【封印魔法】の習得が出来るアイテム作って出さなくちゃ。
「出店予定のヒトはそこそこ多い感じかな? じゃあ、我々だけに通じる目印とか、店に飾ってみるとかどうです?」
「おお、魔女の店にだけお揃いのエンブレムがある感じですか」
「……!」
「いいんじゃない?」
12時の魔女さんの提案を元に、テーブルクロスに書かれた文字盤を転写した物が今日の参加者に配られた。
「じゃあ強制はしませんが、フリマでこのマークを置いている店は、魔女仲間のお店という事で……」
「はーい」
「フフ、魔女の秘密の符号ってことね」
「最高。俄然フリマが楽しみになったよ」
フリマに思いがけないワクワクが増えたね。
そんな感じで、第二回魔女集会も惜しまれながら終了となったのだった。




