キ:当初の目的は達成
ちょっと短めです。
ブラックダイヤドラゴンさんによる訓練は……まぁスパルタというか、文字通りの御鞭撻というか、そんな感じで終わった。
(……僕ら、何しに来たんだっけ?)
(……なんだっけ?)
アンデッドと戦うコツを教えて貰えたのは助かるけどね!
「……そういえば、ヒトの子らは何をしにここへ来たのだ?」
ついにブラックダイヤドラゴンさんにも聞かれた僕らは、ダンゴムシ精霊さんに出会う前を思い出す。
「……知り合いのカップルが結婚するんで……御祝儀に宝石……綺麗な結晶を採りに……?」
「うん。ダンゴムシ精霊さんが、それなら結晶幻獣に会うといいよーって、送ってくれた」
僕らの経緯を聞くと、ハリネズミ幻獣ちゃんは納得したように頷いた。
「ああ! だからハリネズミ幻獣の作業場に来たトゲね! ヒトの子がよく通る穴には繋げてないから、おかしいと思ったトゲ!」
「ふむ……長々とこちらの都合につき合わせてしまったか」
そしてブラックダイヤドラゴンさんは、「どれ……」と言いながら、ダイヤ化している自分の前足の骨をへし折りにかかった。
「「いやいやいや」」
「おい」
「トゲェエエ!? 何してますトゲェ!?」
「なに、どうせ近々生まれ直すのだ。美しい結晶が欲しいのなら、結晶幻獣肝いりらしきこの身を一部くれてやろうかと……」
「完全体で完成させたいからやめて欲しいトゲ!!!!」
うーん、ハリネズミ幻獣ちゃん、止める理由はそこでいいの?
なんとかドラゴンさんの暴挙を止めたハリネズミ幻獣ちゃんは、ゼェゼェと肩で息をしながら吠えた。
「ハリネズミ幻獣がイイ感じの結晶を提供しますので!! ドラゴン様は御身を大事にしてくださいトゲェ!!」
「……どうせ完成したら飽きて放り出すくせに、よう言うわ」
ドラゴンさんのツッコミを無視したハリネズミ幻獣ちゃんは、僕らの前にズンズンとやって来てフンスと胸を張った。
「どんなのが欲しいトゲ?」
「ど、どんな? ……えーっと……縁起の良さそうなの?」
「……小さすぎず大きすぎないサイズで……」
「それと、夫婦……つがい? がずっと仲良く過ごせますようにって感じの物だから……割れにくい物がいいな」
僕らのふわっとした希望を聞いた幻獣ちゃんは、少し考えてから結論を出した。
「……持ち運ぶのに手頃な大きさで、絆の幻獣が泣いて喜びそうな結晶で良いトゲ?」
「「それだ」」
素晴らしい解釈をした結晶幻獣ちゃんは、「任せるトゲ」と頷くと、結晶でゴチャゴチャしている作業場へと駆け込んだ。
「えーっと……確かこの辺に置いといたと思ったトゲねぇ〜……あれ? こっちかな? ……そっちかな?」
「……もう全部くれてやれば良いではないか」
「それはイヤトゲ! 昔の作品はたまに見返すと気付きがあるんです! トゲ!」
「……作った事すら忘れておるくせに」
呆れたドラゴンさんの声を歌詞に、ハリネズミ幻獣ちゃんはガッチャガッチャと結晶をひっくり返す音を奏で続け……そして「あったー!」と叫んでから戻って来た。
「はい、どーぞ」
ハリネズミ幻獣ちゃんがコロコロと地面に広げて見せてくれたのは、原石じゃなく綺麗に整えられた、沢山の色とりどりなスターサファイアだった。
「わぁ、綺麗!」
「……おおー」
「サファイアは硬くて丈夫トゲ。魔石じゃないけど、光の力が少し含まれてるからちょっとした守りになるトゲ。この白い線を綺麗に出すのは難しいトゲ!」
誇らしげなハリネズミ幻獣ちゃんは、色とりどりなスターサファイアから、同じ色の物を2つ指して言う。
「絆の幻獣は同じ色の石を1個ずつお気に入りの番に渡すのが好きトゲね。今なら多分、星の力も入ると思うトゲ」
「へぇ~」
「……じゃあこれを一組ください」
「これ全部上げるトゲ」
「え、いいの?」
「この手の変わり種はちょいちょい作るから、それはもういらんトゲ」
「わー、ありがとう!」
「……どうも」
ラッキー! 綺麗なスターサファイアが沢山手に入った!
ペンダントやブローチに良さそうなサイズの物が多いから、お貴族様的にも装飾品として使いやすいんじゃないかな?
「……それ上げるから、封印、早くして欲しいトゲ。ドラゴン様が体を壊してしまう前に……っ!」
「「あ、はい」」
うん、下心有りきの提供だったね。
クエストってほどじゃない希望みたいだけど。ドラゴンさんが体を壊す(物理)の前になんとかできるように、帰ったら心当たりに相談してみようか。
追記:明日はお休みします




