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第25話 正体

 俺は声のする方向に走った。

 ブランコ、滑り台と砂場だけの小さな公園だけど、そこには愛利奈も含め誰もいなかった。



「待って!」



 愛利奈の声が聞こえる。

 多分、里桜さんと犯人に追いついたのだ。


 俺は公園を駆け抜ける。

 チラリと滑り台の方を見ると、丸く繋がれたロープが吊されていた。


 ご丁寧に踏み台も用意されていた。

 俺たちが来なければ、恐らくここで里桜さんは「自殺」をさせられたのだろう。

 さらに、里桜さんのものと思われる制服のリボンが落ちているのも見つける。


 公園を抜けて声のする方向に向かうと、林の方に三人の人影が見えた。

 愛利奈の視線の先には、里桜さんと、その横に……犯人が。



 里桜さんのそばにいる男に見覚えがあった。

 愛利奈を電車の中で撮影した男だ。

 見覚えのあるカメラのケースを首からぶら下げている。


 里桜さんの両腕を縛ったロープを片手で持ち、もう片手は何らかの刃物、ナイフのようなものを持っている。



「どうしてお前らがここを……」


「そっか、ドローンで見張っていたのね」


「ふん、よく分かったな……で、お前の兄はどこだ? こっちに向かっているのか?」


「そ、それは……たぶん、こっちに向かっている……わ」


「けっ。ハッタリか。どうせ他の方向に行ったのだろ?」


「くっ……」


「愛利奈ちゃん、逃げて……私はいいから」


「里桜ちゃん、だめよ。諦めたらダメ」



 愛利奈は俺がここに向かっていることを隠してくれたようだ。

 人質を取られている状況での最善を愛利奈は考えたのだろう。

 これなら、不意打ちができるかもしれない。


 里桜さんは両手を縛られている。ブラウスのボタンが外され、肩がはだけている以外は特に怪我などはしていないようだ。

 俺は里桜さんと犯人の方に、息を殺して近づく。



「そうか、じゃあお前だけか……ふむ……」


「お願い、里桜ちゃんを離して。何でもするから」



 男は里桜さんを掴んでいる手の力を抜いたようだ。

 


「そこで服を脱げ。前から思っていたが、お前もなかなか上玉だからな」


「くっ……分かった……わ」



 愛利奈はブレザーを脱ぎ地面に置く。

 次に首元のリボンを外し……ブラウスに手をかけたところで止まった。

 嫌そうに、本当に嫌そうにしている。



「ほら、どうした?」



 男はナイフをケースに入れ懐にしまうと、片手でカメラをケースから取りだした。

 もう片手は里桜さんを拘束するロープを握ったままだ。


 そういえば、あの男は撮影時に必ず両手でカメラを支えていた。

 チャンスがあるとすると、そのタイミングしかない。



 あと十数歩。俺は茂みに隠れながら男の背後に近づく。

 季節柄、低い木のいくつかは葉が枯れて隠れられない。それでも気付かれるギリギリの所まで近づいた。



「わ、わかったわ。脱げばいいんでしょう?」


「愛利奈ちゃん……良いから……逃げて……」



 涙声で里桜さんが愛利奈を気遣う。

 愛利奈は、観念した様子でゆっくりと一つ目のボタンを外し、二つ目のボタンに手をかける。

 胸元が開き、白い肌が露わになった。


 それでも愛利奈は恥辱に唇を噛みしめながら、二つ目のボタンを外そうとしている。



「へへっ、そそるじゃないか……」



 カシャッ。

 冷たいカメラ音が響いた瞬間、俺は男の後ろから飛びかかる。

 勢いを付けていたたのと、ナイフや里桜さんを意識しながらカメラを構えたためか、バランスを崩し男は容易く倒れた。俺と男はもつれるように、絡まりゴロゴロと地面を転がる。



「ぐへっ」



 変な声が聞こえた。カメラに繋がるヒモが、男の首に絡まっている。

 俺は無意識に、そのヒモを締める。



「先輩!」

「お兄ちゃん!」



 ギリギリと、俺は紐を引っ張り続けた。

 ただただ、コイツは今すぐ動かなくなるまで紐を引っ張らなくては……そういう思いが俺を支配していた。



「お……おい……や……」



 男の顔は蒼白になり、俺を突き放そうとしていた手が、だらんと地面に落ちる。

 首に絡まる紐がさらに首に食い込んでいく。



「だめ、お兄ちゃん!!! 死んじゃう!」


「私も、平気ですから! もうやめてください!!」



 必死な二人の声。しがみつく二人の熱量に、ようやく俺は我に戻った。

 紐をひっぱていた手から力が抜け、俺は後ろに倒れる。



「はぁっ、はあぁっ、はぁッ……」



 男は腰が抜けたようでその場から動けないようだ。

 ぜえぜえと、荒い息をついている。


 動けない男の両手首を、そのままカメラの紐を使って縛る。

 愛利奈が電話をかけ、俺は里桜さんを抱き締めていた。



「先輩……先輩……!」


「怖かったな。もう大丈夫」


「うん……」


「お兄ちゃん、信じ……てたよ」



 愛利奈も俺に抱きついてきた。

 電話をしていたときは、しっかりした声だったと思うのだけど、今は声が、全身が震えている。


 俺は二人を胸に抱きながら、それぞれによしよしをする。


 松林の中、木と木の隙間から除く青空が、やけに濃く見えた。

 はあ、これで……終わったんだ……。


お読みいただき、本当にありがとうございます!


【作者からのお願い】

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