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第23話 刻限


……茜色に染まる夢を見ていた。


 朝の教室。

 俺はやや遅れて教室に入り、席に着く。



「里桜さん、どうしたんだろう? うちに寄らずに学校に行くなんて……」



 俺はそう独り言をつぶやく。

 すると、時間になったのか、


 キンコンカンコン——。


 チャイムが鳴る。でも、先生はやってこなかった。

 ホームルームの時間が過ぎ、一時限目に入っても、先生が来ない。


 ざわざわとし始める教室。先生を呼びに行くか? と話し始める真面目な同級生たち。

 その時だった。



「遅くなった……席に……いやみんな着いているか」



 いつもと、少し違う雰囲気で担任の先生が足早に教室に入ってきた。

 教室内が落ち着き、静かになったところで先生は口を開いた。



「今日は授業無しだ。全員、これから集団で家に帰るように。親御さんが迎えに来て下さるなら、待っていてもいいぞ」



 ざわざわと、ざわつく教室。

 いったい何があった?

 嫌な予感がする。俺の背筋を、冷たい汗が流れる。


 集団下校?

 何か危ないことがあったのか…………?

 ストーカー?


 いや、まだそういう時期じゃないはずだけど。



「先生、何かあったんですか?」



 クラスメートの一人が、そう先生に聞いた。

 先生は暮らす全体を見渡し、ゆっくりと話し始める。



「中等部の女子生徒が、自殺したようだと警察から連絡があった」



 自殺?

 愛利奈か?


 俺の脳裏に、以前見た茜色の夢がフラッシュバックのように頭に浮かぶ。


 いや、愛利奈とは一緒に学校まで来たのだ。まさか校内で死ぬなんてあり得ない。

 いつまでも来ない里桜さんを心配して連絡を取ろうとしたのだ。


 彼女の家まで俺と二人で走って行ったら、既に家を出たと聞いたのだ。

 俺たちは慌てて学校に向かうものの、道中に彼女の姿は無く、先に校舎に入ったのだと思っていた。


 鞄から震える手でスマホを取り出す。

 LINEが愛利奈から来ていた。



『里桜さま、まだ来てない』



 なんだよ……。

 何だよ一体!?



「詳しいことがわかったら、また伝えるから今日の所は、下校するように」



 そう言って去ろうとした先生の背中から声をかけた。



「その、自殺した生徒っていうのは、誰ですか?」



 頼む……不謹慎だと思うけど……里桜さんじゃないことを祈った。

 先生は、他言無用だと言い、その名を口にする。



「そうか、上高君の妹さんが仲良くしているって聞いていたな。もしかして面識があるのか?

 下山里桜。そうだ、上高君の妹と同じクラスの生徒だ」



 俺はがっくりと膝を付く。

 身体から力が抜け、視界が暗くなる。


 絶望に心が染まっていく俺は、もう一つ質問をすることにした。

 願わくは……この夢を見ている過去の俺が……未来を変えてくれることを願って。



「彼女は、どこで……どこで自殺していたのですか?」


「連絡があったのは、彦根小学校の横にある小さな公園だ。その中で、首を吊っていたらしい」



 何てことだ。家から自転車で数分の距離じゃないか……。

 俺は両腕で頭を抱え、床に突っ伏した。


 どうして……里桜さんの死は、まだ先じゃ無かったのか?


 家に来なかった時点で、連絡が取れない時点で探すべきだった。

 なぜ、俺はそれをしなかった?


 俺の油断が里桜さんを殺したのだ……。

 俺の口から嗚咽が漏れ始める。



……茜色に染まる夢が終わる。


お読みいただき、本当にありがとうございます!


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