おかわり、 後日談5
そりゃ、竜の姿のままだったら、戻って来られてもこの部屋に住めたとは思えない。
一度、人間に化けるのをやめた二匹を見たことがある。
四、五歳の子供の姿と、身長だけなら殆ど同じで驚いた。
それに、尻尾や羽の嵩も加わるのだ。
到底、こんなのを二匹も隠しておける環境じゃない。
人間の振りをしてくれるから、一緒に居られるのだ。
「今のところ、里子に出す予定は全く無い。特にあんたのとこにはだ」
きっぱりと言った。
「あ、そうですか、それなら良かったです」
あれ?何で喜ばれるんだ?
竜の世話は大変だろうから引き取ってやる、と続くと思ったのに。
「話は変わりますが、新垣さん、まだ正社員の職お決まりじゃなかったですよね?」
何だとこの野郎。
その通りだけど、余計なお世話だ。
「つか何で知ってるんだ」
「興信所を雇って調べて貰いました」
しれっと言いやがる。油断も隙もねえ。
「それがどうした。俺がフリーターだろうとニートだろうと、あんたには関係ないだろ」
「ありますよ。少なくとも子竜二匹を養えるくらいは稼いで貰わないと困ります。
竜があっちに帰ってしまったら、私が観察できなくなるじゃないですか」
お前の都合かよ。
「そう怒らないで下さい。だからちょっとした土産話を持ってきたんです」
鹿島が差し出したのは、厚手の封筒だった。A4サイズがぴったり収まるくらいの大きさだ。
一番下に、“国際生物研究所”のロゴが入っている。
開けてみれば、雇用契約書だった。
「何だこれ?」
「所謂一つのアウトソーシングと言うやつです」
書類をめくって、鹿島が説明する。
その中身は、こういった話だった。




