完食、 終幕4
「いきなりじゃ何事かと思うだろ」
「お勉強終わったは本当ですよ。
子供達、上手に化けているでしょウ?」
あれ?もしかしてそのために帰ったのか?
「竜の言葉、群のルール、ちゃんと覚えました。
あとのことは、まア、私がこちらで教えてもいいことです」
大変だったですよ、と狐目の女は笑った。
「もう泣いて泣いて駄々こねて仕方なかったです。
パパのカレーが食べたいとか、パパと遊びたいとか、あとテレビがどうとカ。
だから約束したです。お勉強頑張って早く沢山のこと覚えたラ、またパパと暮らしても良いと」
狐目が、にやりと唇を歪めて笑む。
「これでも急いで急いで帰ってきてあげたですヨ?」
頼んでねえよ!と言いたかったが、俺の口から飛び出たのは、
「ありがとよ!」
の憎まれ口だった。
また会えるなんて思ってなかった。
あの日が、今生の別れだと思っていた。
それも仕方ないと諦めていた。
こいつらは竜で、“こっち”の生き物じゃない。
でも、それでも、こいつらは俺といたいと思ってくれたのだ。
泣いて駄々をこねて母親を困らせる程、ウチに帰りたいと思ってくれたのだ。
「よーし、今日は久々に手料理食わせてやるか!」
わしわしと、クロウとシロウの頭を撫で回す。
兄弟が、揃ってきゃっきゃと飛び付いてくる。
「お前ら、晩飯何食いたい?」
二匹――もとい二人は、諸手を挙げて叫んだ。
「カレー!!」「カレー!♪」
どうやら、俺のカレー曜日はまだ終わらないようだ。
― 完 ―
一旦「完」とさせていただきますが、この後、後日談を追記いたします。
もうしばし、お付き合いくださいませ(´∀`*)




