三十九皿目、 ――知らぬが仏 3
振り向けば、半端に閉まった襖の隙間から、クロウとシロウが顔を覗かせていた。
(げげっ!)
「バカ、お前ら、出てくるな!奥で遊んでろ!」
思わず大声を出してしまった。
知らない人間の声がするのが気になって出て来たのだろう。
俺に叱られた二匹は、慌ててさっと首を引っ込めた。
「なあに、今の?」
「トカゲ、トカゲですトカゲ!」
俺の精一杯の誤魔化しだ。
あらまあ、とおばあちゃんは驚いた顔をした。
「随分大きかったように見えたわ」
「外国に住んでる種類なんですよ!」
「新垣さんが飼ってらっしゃるの?」
「いえ、違います。……いや、あの、違わないんですけど。
ちょっと事情があって、預かっているというか何と言うか……」
盗みましたなんて言えない。
苦しい言い訳を羅列する俺に、おばあちゃんはくすくすと笑った。
「大丈夫よ、心配しなくても分かってます。
大家さんには内緒にしておけばいいのね?」
俺がしどろもどろな理由を、ペットが見つかったせいだと誤解してくれたようだ。
「実は知り合いが引っ越す間だけ世話を頼まれてるんです。
暫くだけのことなので、どうかご内密に!」
我が舌ながら、よくもまあぺらぺらと嘘が出てくるものだ。
しかしおばあちゃんは、まるで疑う素振りも無く頷いた。
「任せてちょうだい。私、口は堅いのよ」
でも今度こっそり見せてね、とおばあちゃんはにこにこ微笑みながら言った。




