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二十三皿目、 ――男子三日会わざれば 2


ふつふつと泡が沸いては消えていく。

鍋の中には煮え立つジャガイモ、人参、玉葱。それからミートボール。

今日もまたカレーだ。

おたまでぐるりとかき回せば、とろけて馴染んだルーからスパイスの香りが部屋中に広がる。


帰宅後すぐに俺は、とにかく鍋と包丁を出してカレーを作り始めた。

現実逃避とも言う。

だって、いくら何でも、いきなり喋り出すとは思わないだろう?


あいつら、いつの間に“おかえり”なんて言葉を覚えたんだ?

教えた覚えはない。

外に連れ出したりもしてない。


だから、あいつらが言語を習うとしたらテレビしかない訳だ。

そういえば留守番させる時にはよくテレビをつけっ放しにしておいた。

何かで見たんだった。

留守にする時はラジオやテレビの音を流しておくとペットが不安がらないって。

けれど、まさかそれだけで、片言とはいえ言葉を習得するとは思わなかった。

すげーな竜。


ちらりと足元のクロウとシロウを見やる。

二匹並んで行儀良くちょこんと座って、俺に期待に満ちた視線を向けている。

ご飯まだ?とでも言っているかのようだ。

その内待ちきれなくなって、シンクの上やコンロ横に飛び乗ってくる。

コンロの熱などものともせずに鍋を覗き込んでくる。


結構なサイズになってきた二匹は、そんなとこに乗られると邪魔だし、危なっかしい。


「こら、下りろ」


伏せてガスの青い炎を見つめていた二匹は、俺に追い立てられてシンク台から飛び降りる。

と思いきや、広げた羽で滑空し、くるりと回ってまた俺の足元に戻ってくる。

狭いウチの台所で、棚にも柱にもぶつからずに上手く飛ぶもんだ。


鍋横を追い払われた二匹は、今度は俺にじゃれつくか、そこらの冷蔵庫や戸棚の隙間を覗くか、それとも二匹で取っ組み合って遊び始めるかする。

もうこいつらの遊び場としては、この部屋は狭いのかも知れない。




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