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21 世界一、幸せに

短くまとまりましたが、これにて完結です。お付き合いありがとうございました。


     ◇


 自分には似合わないからと拒否する彼女を口説き落とし、ヒドゥンは見事、ルナに純白のウエディングドレスを着せることができていた。


「……ったくよぉ、オレに純白なんて、冗談がキツすぎんだろ~」


「そんなことはない。天使や女神ってのは、白が似合うものだろ? 俺にとっての女神はお前だ、ルナ」

 だから似合わないはずがない――と。

 真顔で告げるヒドゥンを前に、ルナは真っ赤になった顔が戻らなかった。


「……ヒドゥンさぁ、なんか性格変わってねーか?」

「いやなら、控えるようにするが……」

「い、いやじゃねーけど……なんか、こう……ムラムラする」

「それを言うならムズムズだろ……」


 ムラムラでも一向にかまわないが――と。

 ヒドゥンは彼女の額に口づけ、髪を撫でる。

「きれいだ、世界で一番……つまり俺は、世界で一番の幸せ者だ」

「やっぱ変わりすぎだあぁぁぁ――っっ!」


 調子を狂わされっぱなしのルナは、恥ずかしいやらうれしいやらで、このところまともに仕事ができていない。

 その分をヒドゥンが完璧に補うこともあり、彼女の新婚ボケは、まだまだ終わりそうになかった。


「そういえば、ルナ……前から一度、聞いてみたかったんだが」

「なんだよぉ……オレの美貌の秘密かよぉ……」

 もうヤケだとばかりに彼女は返すが、いまのヒドゥンに冗談は通じない。

「それも聞きたいな……もちろん、なにもしなくともきれいだとは思うが」

「冗談だよっ! それより、聞きたいことってなんだよ!」


 一度、本気で怒ってやらなければと思っているのに、ヒドゥンの言葉がうれしすぎて、このところの彼女は真っ赤な笑顔しか見せていなかった。


「……正直に言って、俺は自分のどこがルナに好かれたのかわからない。なにか理由があったなら、それを知っておきたいと思ってな」

「あ――あー、なるほど……へー、ほーん……ひひっ、なんだよぉ~、そんなことかよぉ~♪」


 ようやく反撃の機会がめぐってきたとばかりに、彼女の笑みが意地悪く歪む。


「ま、詳しくは教えねーけど……一番の理由は、ヒドゥンが不幸そうに見えたからだな。正確に言やぁ、自分の幸せを度外視してるように見えたから、だ」


 彼女がそれを実感したのは、その仕事ぶりに感心してヒドゥンと対面し、その目を見たときだという。


「自分はなんでもする、だからお前らは幸せでいろ――みたいな? ま、昔のオレは結構ないい子ちゃんだったからな、似たような時期があったんだよ」

「いまもいい子だ、俺が保証する」

「いまそういうのいらねーから!」


 話の腰を折ったつもりはないが、ルナは折られたように感じたらしい。

 ヒドゥンにとっては、とても心外だった。


「んでまぁ、そういう生き方ってのが不毛だって、オレも理解してたからな……そんとき決めたんだよ」


 ルナは、魅力的な赤い瞳をさらに輝かせ、顔を寄せる。


「こいつだけは、ぜってーオレの手で……世界一の幸せ者にしてやる、ってな♪」


 そう笑った彼女の唇は、本日数回目の記録更新を果たし――。

 ヒドゥンを再び、世界一の幸せ者へと押し上げるのだった。


 本作の書籍化が決定しております。

 発売日は2022年の8月25日、レーベルはムゲンライトノベルス様。

 イラストレーターはにじまあるく先生です。

 挿絵(By みてみん)

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