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歯車はいつから回り始めていた……?

今回は前世のお兄ちゃんでもあるピーちゃんが主役です。

 こんな事があるの?

 ルーちゃんが姫様だったなんて。

 ボクは、群馬であんなにかわいがっていたルーちゃんを騙していたんだ。


 それにおじちゃんがこの世界で魔王になっていたなんて。

 もう少しで大好きなおじちゃんを勇者として倒すところだった。


 どうしてこんな事になったんだろう?

 ボクはおじちゃんよりもずっと後に死んだのに。

 おじちゃんよりも三千年も前に転移していた?

 今まではボクがベリアルに転移させられて、ルーちゃん達はウリエルに転移させられたからなのかなって簡単に考えていたけど……

 年をとる実の事もよく考えたらおかしいよ。

 どうして神様はルーちゃんに年をとらせたいの?

 

 神様に訊かなくちゃ。

 本当の事を……

 もうルーちゃんを苦しめたくないんだ。


 ルーちゃんは……

 前の世界でも本当に大変だったから……


 あれはルーちゃんが産まれた日……


 村には産婦人科がないから町の病院でルーちゃんは産まれたんだ。

 でも、なぜかおばちゃんだけ帰って来て……

 ルーちゃんはまだ病院に残っていたんだ。

 おばちゃんにはよく遊んでもらっていた。

 ルーちゃんが産まれる少し前、赤ちゃんが産まれたら遊んであげるねって約束したんだ。

 でも、帰って来たおばちゃんは布団の上で動かなくて……

 すごく身体が冷たくて……

 まだ小さかったボクにはそれが何故だか分からなかった。


 ボクにはお父さんがいなくて、ルーちゃんのお父さんがよく一緒に遊んでくれた。

 不思議な事にボクがいた集落は両親が揃っている家庭はなかったんだ。

 今考えればおかしな事ばかりだった。

 おじいちゃんがいる家はおばあちゃんがいなくて、おばあちゃんがいる家はおじいちゃんがいない。

 お父さんがいる家はお母さんがいなくて、お母さんがいる家はお父さんがいないんだ。

 子供が産まれると親の片方がいなくなる。


 村の他の集落ではそんな事はなかったのに……

 偶然なのかな?

 

 ルーちゃんが一歳になったくらいの時、海洋学者のおじちゃんが海に出たまま行方不明になった。

 集落には両親がいない家はなくて、だからルーちゃんがかわいそうで……

 それから、ボクはルーちゃんを妹みたいにかわいがったんだ。

 

 でも……

 ルーちゃんのおばあちゃんは心の病気になったんだ。

 昼間は平気なのに、夜になると意識がないまま歩き続ける。

 ルーちゃんは小さい頃から、夜になると寝ないでおばあちゃんの後を少し離れて付いて歩いていた。

 いつも寝不足で、でもいつもニコニコ笑っていた。

 ルーちゃんの為にも、おばあちゃんを施設に入れようと言う人もいた。

 でもルーちゃんの保護者はおばあちゃんだけだから、ひとりぼっちになったらルーちゃんも町の施設に入る事になる。 

 だから集落の人達で夜、おばあちゃんを見守るとルーちゃんに言ったんだ。

 でも……

 まだ小学生のルーちゃんが言ったんだ。


「おばあちゃんはお父さんを捜しているだけだから、お父さんが帰って来るまではルーが守るの」


 ルーちゃんはまだ小学生なのに……

 ボクは、無力な自分が情けなかった。


 おばあちゃんは昼間は普通に過ごしていた。

 夜に歩いている事は覚えていないみたいだった。

 ルーちゃんはよく眠れる方法を調べてラベンダーとかクロモジの木とかを庭にたくさん植えていた。

 夢遊病……

 そう分かってすぐに、鉄砲撃ちだったおばあちゃんの猟銃は取り上げられた。

 そこで初めておばあちゃん自身も自分が病気なんだと分かったんだ。

 ルーちゃんに申し訳なかったって泣いていたのを覚えている。

 でも、それからは毎晩ルーちゃんを抱きしめて眠るようになって夢遊病の症状も良くなっていった。


 何だっけ……?

 おばあちゃんの症状が良くなった時、ルーちゃんが何か言っていたけど。

 思い出せないな……?


 おばあちゃんは、どうして亡くなったんだろう?

 夢遊病で?

 それとも他の病気?

 寿命にしては若過ぎる。

 集落のお年寄りは皆すごく長生きなんだ。

 でも、ルーちゃんには訊けないよ。

 かわいそうな子なんだ。

 もう、これ以上傷つけたくない。

 もし夢遊病の時に亡くなっていたのなら……

 ルーちゃんが助けられなかった事になる……


 やっぱり、おかしいよ。

 村自体は普通だった。

 でも、ボクの集落だけは他とは違った。


 それに、同じ集落から勇者と魔王と聖女が現れるなんてあり得ない。

 転移だけでもあり得ないのに、こんな事……

 絶対変だ。

 

 神様なら何か知っているかもしれない。

 訊いてみよう。

 もしかしたら……

 二兵衛って人もあの集落の人だったのかも。

 だとしたらあの集落は……

 いや、まさか。

 考え過ぎだ。

 

 もうひとつ不思議な事がある。

 ボクはこの世界で三千年、生きている。

 それなのに、昨日の事のように前の世界の事を覚えているんだ。

 まるで、ルーちゃんやおじちゃんの事を忘れてはいけないみたいに。

 これから、良くない事が起こらないといいけど……

 何かが動き出して、もう止まれないところまで来ている……?

 


 真っ白い空間___


 何の音もしない……

 真っ白過ぎて、上も下も分からなくなる……


「カミサマ、オシエテ」


 空気すら無いんじゃないかと思うくらい息苦しい。

 何だろう?

 今まではこんな事はなかったのに。


「何を知りたい?」


「カミサマ、ボクタチヲ、ドウシタイノ?」


「……勇者よ。生き続けたいか? 今世こそ聖女を守りたいか?」


「エ? ドウイウコト?」


「これ以上は考えてはいけない。聖女のそばにいたいなら、口に出してもいけない。前世で無力な自分を悔いただろう? またそうなりたくなければ、ただ黙っている事だ」


 神様……

 なんだよね?

 ベリアルよりも邪悪に見える。

 でも、この前ウリエルもこの天使を神様だって言っていたし。


 一体、ボク達に何をさせるつもりなの?

 もしかして……

 これからも集落の人達が転移し続けるんじゃ?

 だとしたらあの集落は……

 神様がこの世界に転移する人間を作り上げる場所……?

 考え過ぎだよね?

 とりあえず帰ったらおじちゃんに相談してみよう。

 ボク一人になんとかできる問題じゃなさそうだ。


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