ピーちゃんがお兄ちゃん!?
「神様? 今、神様って言ったの!?」
確か、ベリアルに『自分は神様だ』って言われて騙されていなかった?
ピーちゃんはまた悪い天使に騙されているんじゃ……
「ヒトクチ、タベルト、ヒトツ、トシヲトルノ」
え?
ピーちゃん?
そんな詐欺みたいな……
お金とかを騙し取られているんじゃないよね?
典型的な詐欺じゃない?
この水を飲むと若返りますみたいなやつじゃないの?
「聖女様……見るからに怪しいです」
「神とは……また騙されているのでは……」
王様達の言う通りだよ!
「ピーちゃん? 騙されているんじゃない? 大丈夫なの?」
心配だよ……
「ヒメサマ、ホンモノ、カミサマ、ダヨ」
本物の神様?
「悪い天使に騙されているんじゃないの?」
「エ? アハハハ! コンドハ、ホンモノ、ダヨ」
ピーちゃん……
大丈夫なのかな?
「世の中には詐欺師がいてね、高級布団だって騙してペラッペラの布団を買わせる悪い奴もいるんだよ!?」
「ソンナ、タナカノ、ジーチャンジャ、ナインダカラ」
え?
田中のじいちゃん?
「ピーちゃん? ちょっと待って? わたし、田中のおじいちゃんの話をピーちゃんにした?」
「エ? ヒメサマ、ナンデ、タナカノ、ジイチャン、シッテルノ?」
……?
どういう事?
確かピーちゃんは高校生の時に転移して来たって言っていた。
野田のおじいちゃんの孫が、確か事故で……
わたしが中一の時だったはず。
「ルゥ? ルミ? アレ……モシカシテ、ルーチャン……ナノ?」
「ピーちゃん……まさか、野田のおじいちゃんの……!」
「ルーチャン……」
「そんな……お兄ちゃんなの?」
まさか、ピーちゃんが前世のご近所さんだったなんて……
一体どうなっているんだろう?
ピーちゃんは三千年前からこの世界に来ているんだよね?
ベリアルはわざわざ三千年前にピーちゃんを転移させたの?
それともウリエルが、わたしやお父さんを三千年後に転移させたのかな?
お父さんとわたしはこの世界に来た時の時間のずれはなかったけど……
「聖女様……?」
魔族の皆が戸惑っている。
「あぁ……あのね? ピーちゃんは前の世界で同じ集落で暮らしていたの」
わたしが小一の時にお兄ちゃんが小六で……
お兄ちゃんが中学生になるまでの一年間、学校までの一時間の道を毎日手を繋いで歩いてもらったんだ。
確か高校生の時、学校帰りに自転車で崖から落ちて……
帰って来ないお兄ちゃんを集落の人と村の消防の人達で捜したんだ。
まさか転移して無理矢理勇者にされていたなんて。
「ルーチャン、ボクノカゾク……ボク、シンデカラ、ドウナッタ?」
「野田のおじいちゃんも、おばちゃんも集落の皆も、すごく悲しんでいたよ」
お兄ちゃんは父親が亡くなっていて、母親とおじいちゃんの三人暮らしだったんだ。
「ソウ……」
辛いよね……
野田のおじいちゃんには、わたしがひとりぼっちになった時にすごくお世話になったんだ。
「ルーチャン……ボクモ、ルーチャンモ、シンジャッタンダネ」
「うん……異世界で会う事になるなんてね……」
たぶんこれは偶然なんかじゃない。
まだわたし達の知らない事があるんだ。
ベリアルがお兄ちゃんを転移させた。
そして、ベリアルの暴走を止める為にウリエルがわたしとお父さんを転移させた。
でも、ベリアルもウリエルもわたし達三人が知り合いだとは分かっていなかったんじゃないかな?
どうして同じ集落から三人も転移させたんだろう?
お兄ちゃんの言う天使が何かに関わっていそうだね……
この前お兄ちゃんが人間の姿になった時、透けてぼんやり見えていたのはお兄ちゃんだって気づかせない為だったのかも。
後でお父さんとじいじに相談してみよう。
もしかしたら、ベリアルの暴走を止める以外の目的があったのかも……?




