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ルゥとマンドラゴラのクッキング~後編~

「キュキュイ?」


 マンドラゴラの赤ちゃんが裾を引っ張った?

 どうしたのかな?

 あれ?

 手を見ると小さいパンを持っている。


「うわぁ! 上手にできたね。かわいいパンだね」


「キュキュ」


 抱っこしながら頭を撫でてあげると嬉しそうに身体を揺らしている。

 かわいいなぁ。


 ……あれ?

 魔族達が静かになった?

 嫌な予感……


「聖女様! 我らウェアウルフ族もパン作りをしたいです! そして撫でてください!」


「聖女様! 我らグリフォン族もパンの成形ならできそうです! 上手くできたら褒めてください!」


 あぁ……

 褒めて撫でて欲しいんだね。

 

「じゃあ、皆で一緒に作ろう? よかったらケルベロス王達もどうかな?」


 せっかく遊びに来てくれたんだから、楽しい事をしたいし。


「やった事はありませんが……ぜひお願いします」



 こうして、皆でパン作りを始める。


 何の形にしようかな?

 うーん……

 そうだ!


「聖女様のパンは丸くないのですか?」


 ウェアウルフ王が尋ねてきた。


「うん。ウェアウルフ王の顔を作っているんだよ?」


 かわいくできるといいな。


「わた……わたしの顔を!?」


 しっぽを、ちぎれそうなくらい振っている。

 嬉しさを隠せないんだね。

 かわいいよ。

 マンドラゴラの子供達が揺れているしっぽに、じゃれついている。

 

「聖女様! わたしの顔も作ってください!」


 グリフォン王が瞳を輝かせている。


「もちろん! 上手にできるといいけど……」


 それぞれ成形が終わって二次発酵を待っている。

 今のうちにプリンとスープと里芋の煮っころがしを作ろう。


 マンドラゴラの子供達はウェアウルフ王のしっぽで遊んでいるから包丁を使っても平気だね。

 野菜を切っているところを見られたくないんだよね……


 ママとじいじが生き物を食べる時もこんな気持ちでわたしに見せないようにしているのかな?



 二時間後___


 遊び疲れて眠っていたマンドラゴラの子供達が、パンの甘い匂いで目を覚ます。


「目が覚めた? パンが焼けたよ?」


「キュキュイ」

「キュイ?」

「キュッキュッ」

 

 眠い目を擦りながら焼き上がったパンを見て大喜びしている。

 マンドラゴラ達が作ったパンは全部小さくてすごくかわいい。

 グリフォン王達とケルベロス王達が作ってくれたパンは大きくて真ん丸のパン。

 ウェアウルフ王達のパンは編み込んであったりしてすごく綺麗。

 わたしのパンは手作り感がすごいけど、かわいくできたんじゃないかな?


「はい、子供達の形のパンだよ?」


 マンドラゴラの形の小さいパンだけど……

 自分達の形だって分かるかな?


「キュキュイ」

「キュイ」

「キュッ」


 すごく喜んでくれているみたい。

 よかった。


「聖女様……まさかこのパンは……?」


 天板にあるパンを見てグリフォン王の従者が尋ねてきたね。


「うん。グリフォン王とウェアウルフ王と従者の皆の分も作ってみたの。いつもお世話になっているから」


「聖女様!」


「あぁ……生きててよかった!」


 皆が泣きながら喜んでくれている!?

 泣くほどすごいパンじゃないのに。

 でも……

 喜んでもらえてよかった。

 

「聖女様! 五分ほど出かけてもよろしいでしょうか?」


「わたし達も出かけますが、すぐに戻ります!」


 グリフォン王達とウェアウルフ王達が慌てている?

 どうしたのかな?


「もしかして忙しいのにパン作りを手伝わせちゃったかな?」


 申し訳ない事をしちゃった。

 王様だし忙しかったよね?


「大丈夫です! 仕事は朝のうちに全て済ませてきているので! 魔王城にいるドラゴン王にパンが永遠に腐らない術をかけてもらいに行きます!」


 え? 

 

「そんな……ドラゴン王がパンに術をかけるはずがないだろう!? そんな事を頼んだら殺されるかもしれないぞ?」


 ケルベロス王が慌てているね。


「何を言うか!? 聖女様のパンは世界の宝だ!」


「そうだ! この喜びを永遠に残していく事こそ、王としての役目だ!」

  

 いや……

 そこまで大した物じゃないんだけど……


「あ、ケルベロス王達の顔もあるよ?」


 頭が三つあるパンを釜から出すとケルベロス王達の瞳がキラキラ輝き始めた?


「我々の分もあるのですか!?」


 ケルベロス王の従者が嬉しそうにしている。

 しっぽがすごく揺れている。

 かわいいよ。


「うん。食べてもらえたら嬉しいな」


 もらってくれるかな?

 パンより甘いお菓子の方がよかったかな?


「……ウェアウルフ王、グリフォン王。我らもドラゴン王に術をかけてもらいに行きたいのだが?」


 え?

 ケルベロス王までそんな事を……

 さっきまで殺されるかもとか言っていなかった?


「聖女様、先にお食事をどうぞ! 我々は少し出かけますので!」


 そう言って魔族達がすごいスピードで魔王城に行ってしまった。

 わたしもお父さんに里芋の煮っころがしを持って行きたかったな……


 とりあえず、パパとママの様子を見に行ってみよう。

 そっと扉を開けるとぐっすり眠っている。

 目が覚めたらプリンを食べてもらおう。


 マンドラゴラの子供達とご飯にする。

 ピーちゃんはベリアルとお出かけ中でいないから……

 最近よく二人でどこかにお出かけしているんだよね。


「キュキュ?」


 マンドラゴラの赤ちゃんが真ん丸な大きいパンを食べたそうに指差している。

 

「大きいからわたしと一緒に食べようか?」


「キュキュイ!」

 

 あぁ……

 かわいい。

 そういえば王様達は、ばあばに術をかけてもらえたかな?

 帰りが遅いけど大丈夫かな?


「ルゥ……」


 あれ?

 じいじ?

 仕事が終わったのかな?


「ないのか?」


 え?

 何が?


「じいじにはパンはないのか?」


 え?  

 いつもはパンを食べないのに。

 でも、作っておいてよかった……


「これね、じいじの顔なの。他の皆より少し大きいんだよ?」

 

 作ったパンを渡すと……

 パンを見て微笑んでいる?


「もらって行くぞ!」


 すごい速さで魔王城に戻って行った!?

 まさか……

 ばあばに腐らない術をかけてもらうのかな……?


 ……あとで、ばあばに謝ろう。


「前王妃様! 前王妃様ああ! 我々もパンが欲しいですぅぅ!」

 

 ヴォジャノーイ族のおじちゃん達まで……

 作っておいて本当によかった。


「おじちゃん達のもあるよ。魔王城に行った王様達が帰って来ないんだけど、何かあったの?」

 

 ずいぶん経ったけど大丈夫かな?


「それが……前王様が自分のパンがないと不機嫌になられまして、今は溜まっている仕事を手伝わされています」


「王様達に悪い事しちゃったよ」


「そんな事はありません! 前王妃様の誕生日の宴の準備……」


「こら!」


「しまった!」

 

 おじちゃん達が慌てている?

 

 わたしの誕生日の宴?

 まだ一か月先だけど……

 もしかしてサプライズパーティーをしてくれるつもりなのかな?

 

「前王妃様……この事は前王様には……」


 おじちゃん……

 確実に、ただでは済まないね……


「うん……わたしは何も聞いていないよ……」


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


 おじちゃんも大変だね……


「おじちゃん、お願いがあるの。ばあばのパンとお父さんのご飯を持って行って欲しいんだけど」


「おまかせください!」


 直接、渡しに行こうかと思ったけど今はやめた方がよさそうだね。

 誕生日の宴か……

 その頃にはママの卵から赤ちゃんが孵っているんだね。

 無事に産まれて来て欲しいな……

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