パパとママと幸せの島~後編~
「どうしたの?」
ばあばがドラゴンの姿の背に、じいじとお父さんを乗せて飛んで来た。
こんなに離れているのに、本当にわたしの声が聞こえたんだ。
「ばあば! ママが辛そうなの!」
ばあばが人間の姿になってママのお腹を見ている?
「あら? まぁまぁ……」
ばあば?
何か分かったの?
「ハーピーは出産は初めてなの?」
「……ああ。初めてだ」
ママが苦しそうに答えた?
え?
出産?
じゃあ……
ちょっとふっくらして見えたのは……
「ママ!? お腹に赤ちゃんがいるの!?」
あの時パパが寝ちゃったから赤ちゃんが来ないって怒っていたのに?
あの後パパが起きたのかな?
「卵がぁ産まれたらぁ話そうとぉ思ってたのぉ」
パパが心配そうに、ママの背中をさすっている。
赤ちゃんは卵で産まれるんだ。
弟かな?
妹かな?
異種族間の妊娠だから子孫繁栄の実を食べたんだよね。
赤ちゃんはハーピーなのかな?
オークなのかな?
「ハーピー族は妊娠からだいたい十五日で卵を産んで、その卵を十五日温めると子が出てくるの。この前の満月からまだ十日だから……あと五日はお腹に入っているはずね」
ばあばがママのお腹をさすりながら話しているけど……
三十日!?
そんなに早く産まれてくるの?
でも、こんなに苦しそうにしているけど……
「ばあば……ママはどうしてこんなに苦しそうなの?」
「初産だからかしら。それに子孫繁栄の実を食べたでしょう? 異種族間の出産は難産になる事もあるの」
難産!?
前世のお母さんも、今世のルゥのお母さんも出産後に亡くなった……
ママは大丈夫だよね……?
そんな事になったら絶対にダメだよ……
「ばあば……わたしにできる事はあるかな?」
「じゃあ……手を握ってあげなさい。ルゥの力で少し楽になるかもしれないわ」
わたしの力が役に立つの?
「パパ……ママを部屋に運べる? ベットに寝かせて欲しいの」
「うん。ゆっくり運ぶよぉ」
ママが、パパの大きいベットに横になる。
すごく辛そうだ……
ママの手を握って光の力を使う準備をする。
ママが苦しみませんように……
赤ちゃんが元気に産まれてきますように。
わたしは魔力を使う時、その魔術を使った後の状態をイメージする。
パパとママと赤ちゃんが幸せに暮らしている姿……
パパとママの嬉しそうな笑顔……
わたしの手から光が溢れると温かい光がママを包み込む。
ママの呼吸が楽になってきたみたい。
よかった。
気持ち良さそうに眠っている。
「ばあば……ママはもう大丈夫かな?」
心配で堪らない。
ママにはずっと元気でいて欲しいの。
お母さん達みたいに出産で苦しんで亡くなるなんて絶対にダメ!
「大丈夫よ。魔族は丈夫だから。寝不足もあるみたいね。オーク……これからは夜もよく寝かせてあげて、お昼寝もさせてね? 分かる?」
ママは寝不足だったの?
疲れていたんだ。
ぐっすり眠れるように……
わたしにできる事はあるかな?
うーん。
心を落ち着かせる何か?
ラベンダーとか?
クロモジの木とかは、この世界にもあるのかな?
「分かったぁ。一緒にお昼寝するねぇ。でもぉ、お昼ご飯どうしよう?」
パパがベットでママを抱っこしながら話しているけど……
パパも一緒に寝るみたいだ。
その方がママも安心だよね。
「わたしが作るから大丈夫だよ。パパはママの隣にいてあげて?」
前世では、おばあちゃんのお手伝いをしていたし今世でもパパと一緒に料理しているから大丈夫。
「よろしくねぇ……」
パパ!?
もう寝ちゃった……
疲れていたんだね。
これからはもっとお手伝いをしよう。
赤ちゃんが生まれてきたらパパもママも忙しくなるだろうし。
あぁ……
お姉ちゃんになるのか……
嬉しいな。
もうひとりぼっちじゃないんだ。
お父さんも魔族の家族もいてくれる。
幸せ過ぎて怖いくらいだ……
ママが出産するまで落ち着いて過ごせるように、わたしにできる事は何だろう?
とりあえず今はお昼ご飯作りだね。
マンドラゴラの子供達がお手伝いをしてくれるみたい。
エプロンをつけて欲しそうにキッチンから持って来たよ。
かわいいな。
マンドラゴラの子供達もお姉ちゃんとお兄ちゃんになるのが嬉しいんだろうね。
ばあばとお父さんとじいじは仕事を片付けに魔王城に戻った。
もう少しで一段落するらしいけど……
この前、覗いてみたらすごい書類の山だったのに。
すごいな……
たった十日で処理するなんて。
そういえば、前世のおばあちゃんがお父さんは里芋の煮っころがしが好きだって言っていたよね。
里芋に似た芋もあるし作ったら喜んでくれるかな?
とりあえず、ご飯を食べるのはわたしとマンドラゴラの子供達とお父さんとパパか……
あとの魔族達は……
たぶん肉を食べて来ているはず。
……うん。
何の肉かは考えないでおこう。
ママのご飯はどうしようかな?
最近お出かけしていないし、ちゃんと食べているのかな?
プリンなら食べられるかも。
こうして、わたしとマンドラゴラの子供達のご飯作りが始まった。




