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やっぱり宴はこうなった

 ヴォジャノーイ族のおじちゃん達が魔王城から魔王の椅子を運んでくれた。


 マンドラゴラのお父さんが魔王の椅子に座ると……

 かわいい!

 かわい過ぎる!


 ベリアルが勇者の母親として全ての生き物を愛しいと思う術をかけたらしいけど、もう術は解けているはず。

 わたしは元々モフモフした動物とかが大好きだったし……

 わたしにはベリアルの術は効いていなかったんじゃないかな?


 お父さんは次の魔王が決まるまで魔王城で魔王として暮らす事になった。

 ずっと一緒にいられなくて寂しいけど、これからはいつでも会えるから。

 それに魔王は全魔族の色々な調整とか、人間、天使とかの魔族以外との交渉の場にも立たないといけない。

 これ以上魔王の座を空けておけないんだって。


 それにしても……

 わたし、まだじいじの膝に座っているんだけど……?

 もしかして、ずっとこのまま?

 

「ヴォジャノーイ……? もう月海を膝から降ろしてもいいんじゃないかな?」


 お父さん……

 わたしもそう思うよ。


「魔王様、ルゥは赤ん坊の頃からわたしに抱っこされるのが好きなのです」


 じいじ、それさっきも言っていたよ……


「ルゥをわたしの膝から降ろせる者は降ろしてみろ」


 じいじ……

 目が赤く光っているよ?

 これ、怒っている時だよね……

 お父さんに怒っている感じじゃない。

 たぶん、この場にいる魔族達に警告しているんだ。


「ルゥに妙な事をする者は、いっそ殺してくれと懇願する事になるだろう」


 魔族達が静まり返る。

 あれ?

 お葬式じゃないよね?

 皆うつむいちゃっている。


 空気が悪いな……

 何か楽しい事を話さないと……


 結婚式……

 結婚式といえば余興。

 余興……

 前世の吉田のおじいちゃんの裸踊り……

 ダメダメ!

 あれはダメだ。


 他に何か楽しい事……


「ルゥ。プリンいっぱい作ったよぉ? 皆で食べよう?」


 パパ!

 プリンを作ってくれていたんだね。

 甘い物を食べれば空気が変わるかも。


「パパありがとう。皆でプリンを食べよう?」


 皆にプリンが配られる。

 初めて見るプリンだから魔族の皆は、よく分からないみたい。


「そういえばオーク族長は参加していないのか?」


 ウェアウルフ王がパパに尋ねた?

 王と族長は全員招待されていたんだっけ?

 オーク族長は忙しかったのかな?


「えぇ? 来てるよぉ?」


 どこにいるんだろう?


「パパ? オーク族長はどこに来ているの?」


 もしかして、パパみたいに恥ずかしがり屋さんなのかも。


「えぇ? パパがぁオーク族長だよぉ?」


 ……?

 え?

 パパが族長?

 魔族達がザワザワし始めた。


「でも、でも……今度オーク族長に会いに行こうって言っていなかった?」


 オーク族長に挨拶しながら、オーク族の赤ちゃん達に会いに行くって言っていたはずだよ?


「いまぁ、オークのぉ島にいる族長はぁ代理だよぉ?」


 族長は強い魔族が選ばれるんじゃないの?

 パパは優しいから無理なんじゃないかな?

 あれ?

 でもパパは確かエメラルドのオークだったんだっけ?


「オークよ。現在のオーク族長が代理なのは知っているが……オーク族長はあのエメラルドのオークだ。お前ではないぞ?」


 ウェアウルフ王が呆れながら話しているけど……

 あれ?

 エメラルドのオーク?

 

「だからぁパパがぁエメラルドのぉオークなんだってばぁ」


 パパの言葉に魔族達が静まり返った。


「オーク……エメラルドのオークは腕を一振りすれば五人の敵を倒すという伝説を持っている。敵ではあったが、魔力を持たぬ我らのような種族にとっては英雄でもある。嘘はいけないぞ」


 ウェアウルフ王……

 嘘じゃないよ。

 それにそんな事を言ったら、パパが泣いちゃうよ?


「うわあぁぁん。嘘つきって言われたぁぁ」


 ほら、泣いちゃった。

 頭を撫でて慰めてあげたいけど、じいじが膝から降ろしてくれない……

 困ったな。


「お前ら、オークを泣かせたな?」


 ママ?

 怒っているの?

 ママが泣き崩れているパパを抱きしめる。


「いいか? かわいいオークを泣かせたら赦さないぞ!」


 ママが大声で叫んだ?


 ……え?

 かわいいオーク?

 どういう意味?

 まさか……

 ママはパパの事が……?


「って、何言ってんだわたしは!?」


 あぁ……

 ママが一人で大慌てしているよ。

 ママがパパの事を好きなのが一目瞭然だ……

 わたしもこんな風に周りから見えていたのかな。

 恥ずかしい……


「ハーピー……皆がぁパパがぁ嘘つきだってぇ言うよぉ」


 パパ……

 泣きべそをかいている。

 伝説のエメラルドのオークなんだよね……?


「もう泣くな! これからはわたしが、オークをいじめる奴をやっつけてやるからな! あと、お前ら、オークは本当にエメラルドのオークだからな!」


 わたし達は今一体何を見させられているの……

 ママのツンデレ劇場……?

 パパとママは、いつの間に仲良しになっていたんだろう?


 でも……

 二人が仲良しだと嬉しいな。

 パパもママの事が好きだって言っていたし。

 わたし達の次はパパとママの結婚式だったりして。

 

 こうして、よく分からないうちにつがいの宴は終わっていった……

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