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ルゥと天使と勇者~後編~

「魔王様を呼び寄せた? お前が魔王様をこの世界に転移させたのか?」


 じいじが怖い顔で天使に話しかけている。


「……」


 天使はずっと黙っているね。


「魔王様が身体ごと転移し、魔素にやられ苦しんで亡くなった時になぜ助けなかった!?」


 え?

 お父さんが……

 苦しんで……


「うぅ……」


 悔しくて涙が止まらない。

 お父さん……

 

「……殺す」


 じいじが呟いた……

 

「やめろ! 天族殺しは重罪だ!」

 

 ウリエルを攻撃しようとするじいじを、ママが止めている。

 重罪?

 どんな目に遭わされるの?


「こいつだけは赦さない!」


 じいじが叫んだ。

 お父さんを想う気持ちが伝わってくる……

 

「待ちなさい? まったくヴォジャノーイちゃんは血の気が多いんだから。あなたが今、攻撃したらルゥまで巻き込まれるわよ?」


 この声は……


「ばあば……?」

 

 声の方を見ると人間の姿になっている、ばあばがいる。


「ドラゴン……来たのか……」


 じいじが少し冷静になった?


「『ばあば』?」


「『ドラゴン』?」


 グリフォン族とウェアウルフ族が不思議そうにしている。

 ばあばは身体が大きくて違う場所に住んでいるから、会った事がなかったんだよね。


「ヴォジャノーイちゃん? 悔しいのは分かるけどこれからはルゥを守る為に生きていくんでしょ? 違うの?」


 落ち着いたじいじがわたしの所に歩いて来て、優しく抱きしめてくれる。


「そうだ……ルゥを守る為だけに生きていくのだ……」


 じいじ……

 優しいじいじの声にわたしも落ち着いてきたよ。


「ウリエル……わたしに天族殺しをさせたいの?」


 ウリエルが近づいて来る。

 手にブレスレットを持っている?

 わたしの手首にはめようとしているの?

 あれ?

 身体が動かない?

 何か術をかけられた?

 じいじも皆も動けないみたいだ。


「何をするのだ?」


 じいじ?

 術を解いたの?

 じいじがやめさせようとしたけど……

 あ……

 じいじの手首にブレスレットがはまったよ?


「おや、これは困りました。ではもうひとつ……」


 今度はわたしの手首にはめた?


 何これ?

 大きかったのにちょうどいいサイズになった?


「貴方もはめてください」


 ピーチャンの足の指にもはめているけど……

 一体何をしようとしているの?


 ウリエルが指をパチンと鳴らした?


 ……!?

 眩しい……

 ギュッと目を閉じる。

 少しして目を開けると……


「……え?」


 何これ?

 一瞬で違う場所に移動した……?


 真っ白な空間。

 光の力と闇の力が入り混じっている?

 

 じいじとピーちゃんとわたしだけ移動したの?

 このブレスレットのせい?


「う……」


 じいじが苦しそうな声を出している。

 魔族のじいじには、この空間は辛いはず。

 早く帰らないと。


「お前ら誰だ? なんだ勇者か……また来たのか? さっき帰ったばかりだろう? また、すがり付いて殺してくれって泣くのか?」


 え?

 今……

 何て言ったの?

 ピーちゃんが殺してくれって言ったの?

 こいつが、ベリアル……?


 ピーちゃんが震えている。

 こいつが……

 ピーちゃんを……


「誰かと思ったら勇者の母親か。お前の腹の子をこの勇者が乗っ取ってやるからな。どうだ? 嬉しいか? 自分の子を憑依の入れ物にされる気持ちはどうだ?」


 こいつ……

 赦さない!

 わたしだってルゥの身体を使っているんだ。

 毎日ルゥにごめんなさいって謝っているんだ。

 ピーちゃんだって辛かったはず……


 絶対、赦さない!

 

 ……え?

 ベリアルがじいじに殴られて倒れた。

 この空間はじいじには息をするのも辛いはず。

 じいじだけでも早く帰らせないと。

 ブレスレットを壊せば帰れるかも。


「ルゥ……こいつを殺すぞ? 目を閉じていろ」


 じいじ……

 

 ベリアルを殺すの?

 天族殺しは重罪なのに……


 わたし……

 わたしは……

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