家族で穴掘り~ルゥが主役の物語、後編~
それはそうと……
パパも掘っているから、穴が三つ。
人間の死体は二つだから……
誰が掘った穴に埋めるのか揉める予感。
おじちゃん達もそれに気がついたみたい。
「よぉーしぃ。穴堀り完了っとぉ。死体を埋めるぞぉ。うぅ……」
パパが死体の方を見て吐きそうになっている。
やっぱりパパに死体は触れないよね。
え?
パパ?
ヨダレ?
見間違いだよね?
涙とか汗だよね?
あ!
おじちゃん達が自分が掘った穴に死体を入れちゃった。
しかも褒めて欲しそう。
はぁ……
死体も運んでもらったし。
「おじちゃん達、ありがとう」
ニコッと笑顔でお礼を言っておこう。
今日は色々手伝ってもらったからね。
「はい! 姫様! あの……」
ヴォジャノーイ族の英雄らしいけど。
モジモジしている……
やっぱり、頭を撫でて欲しいんだね。
わたしが小さい時に、おじちゃん達の頭を撫でてあげたら嬉しかったみたいで……
それからは、わたしの喜ぶ事をして撫でて欲しがるんだよね。
身体は大きいし地位も高いのに小さい子みたいでかわいいかも。
「姫様! 撫でてください」
おじちゃん達が恥ずかしそうに顔を赤くしている。
やっぱり撫でて欲しいんだ。
おじちゃん達は背が高いから、わたしの手が届くようにひざまずいてくれたね。
嬉しそうにソワソワしてかわいいなぁ。
優しく撫でると……
少しひんやりして気持ちいいかも。
「皆に姫様に撫でてもらったと自慢します! 勲章をもらうより嬉しいです!」
いや、勲章の方が嬉しいでしょ……
そういえば前世のおばあちゃんも、どんなに偉い人に賞状をもらうよりわたしに『ありがとう』って言われる方が嬉しいって言っていたね。
おじちゃん達に大切に思われているのは分かっているんだ。
じいじが王族だから、わたしにも優しいのかもって思う事もあるけど……
こういう姿を見ると本当にわたしをかわいがってくれているのが分かる。
嬉しいな。
って、パパ!?
砂浜に打ち上げられていた小魚を、掘った穴に埋めている?
「見て見てぇー? お魚のお墓だよぉー?」
パパ……
本当に優しい。
でも、笑っているはずなのに……
顔が怖い!
「はい、このお花ルゥにあげるねぇ。二つあったのぉ。お魚の横に落ちてたのぉ」
パパが花を一輪くれたね。
どこからか流れ着いたのかな?
この島の物ではなさそうだけど。
「うわぁ。ありがとうパパ!」
前世でも同じ様な花があったね。
白くてかわいいよ。
顔に花を近づけると……
うわぁ……
いい香り。
「姫様ぁ! まるで女神だ!」
「なに言ってるんだ!? 女神よりも、もっと……そう! 姫様は宝だ! 生きる宝石だ! 女神なんて天族だろう!? あんなものと一緒にするな!」
おじちゃん達が興奮して、わたしを褒め始めた。
また始まったね……
「ねぇねぇ。パパも腰巻きに花を挿したんだよぉ?」
確かに、いつも腰に巻いている布に花が挿し込んである。
ニコニコ笑ってかわいいな。
すごくご機嫌だね。
「似合っているよ! パパ」
わたしが褒めると、恥ずかしくてパパのほっぺたがピンクになった。
かわいいんだけど……
うぅ……
やっぱり顔が怖い。
「そろそろ帰るか」
じいじが、わたしの髪を優しく撫でてくれる。
いつも通りのじいじだね。
さっきは遠くを見て険しい顔をしていたけど……
気のせいだったのかな?
「うん! えへへ。お腹空いちゃった」
「そうか。帰ったら食事だな」
じいじが優しく微笑みながら髪を撫でてくれたね。
おじちゃん達は他に用があるらしくて、ここでお別れみたい。
「姫様! 姫様ああぁ!」
かなり離れても声が聞こえてくる……
……愛が重いよ。
「パパのお花が無い! うわあぁん」
死の島に着くとパパが泣き出した。
帰ってくる途中で腰巻きの花を落としちゃったみたいだ。
「はい。わたしの花をあげるね。パパに良く似合っているよ?」
これで泣き止んでくれるかな?
もうひとつあって良かったよ。
パパの腰巻きに挿したけど、どうだろう?
「ありがとうぅぅ! うわあぁん!」
どっちにしろ泣くんだね……
数時間後___
綺麗な満天の星空。
夜の砂浜は静かだ。
波の音だけが聞こえてくる。
砂浜に寝転がって星に手を伸ばす。
……やっぱり掴めないよね。
今日は久々に死の島から出たなぁ。
今世で初めて人間も見たし。
あれ?
わたし、お墓を作りに行ったのに何もしていなかった。
また皆でお出かけしたいな。
すごく楽しかったよ……
静かに目を閉じると、波の音がより鮮明に聞こえる。
あぁ……
眠くなってきた。
常夏の島も夜は涼しくて……
気持ちいい……




