じいじの気持ち~後編~
今回はじいじが主役です。
ルゥを水の防御膜から出す。
「さぁ、全魔族王会議が始まるが……まさか立たせたままではないだろうな?」
そう長くは、ならないだろうが……
「椅子……椅子を持って来ます!」
ヴォジャノーイ王……
まだ震えているのか。
「じいじ、わたしも手伝ってくるね」
ルゥとヴォジャノーイ王が奥の部屋に椅子を取りに行ったな。
奥の部屋から話し声が聞こえてきたが……
「姫様……無理矢理、伯父上につがいにされるのですか?」
ヴォジャノーイ王よ。
小声だが全て聞こえているぞ。
他の王達にも聞こえているようだな。
「違うよ。無理矢理じゃないの」
ルゥの言う通りだ。
無理矢理ではない。
「姫様……前から思っていたのですが。伯父上は姫様に酷く執着しています。姫様には優しいですが、本当はすごく恐ろしいのです……気をつけてください。伯父上はドラゴンを一撃で倒せるくらい強いのです……」
執着か……
まぁ、そうかもしれないな。
……?
ベリス王が奥の部屋に向かおうとしている?
「どこに行くのだ?」
ルゥに近づいて強く魅了の術をかけようとしているのだろう。
「聖女様とお話があるのですよ。何度も島に訪れようとしたのに、そのたびに邪魔が入りましたので」
当然だ。
ルゥを手に入れて魔王になろうとしているのは分かりきっているからな。
そんな奴にルゥを幸せにする事はできない。
「まさか今日も邪魔をしようとしているのですか?」
……そうだな。
ルゥには赤ん坊の頃から自分の身は自分で守れるように教え込んである。
この程度の事なら、なんとかできるだろう。
いざとなれば、わたしが助けに入ればいい。
「それでは失礼」
ベリス王め……
いつも、にやけているな。
気に入らない……
「前王様! あいつは聖女様をずっと魅了しようとしていました。危険です!」
「止めなくてよろしいのですか?」
ウェアウルフ王、グリフォン王……
心配なのはわたしも同じだ。
だが、守られてばかりではルゥの為にはならないからな。
「聖女様。はじめまして、わたしはベリス王です」
奥の部屋で、ベリス王がルゥに話しかけている声が聞こえてくる。
「はじめまして、ベリス王。何か用?」
ルゥ。
気を抜くなよ。
かなり強く魅了の力を使っている。
油断すると完全にベリス王の支配下に置かれるぞ。
「わたしは聖女様が心配なのですよ。前王は悪の象徴のような方です。騙されているのではないかと……」
愚か者めが。
人間の聖女といえどもルゥは魔族の中で育ったのだ。
そんな話には惑わされない。
「じいじは魔族だよ? 悪の象徴だとしたら魔族らしくていいと思うけど? 口から出る言葉と今やっている事が、ずいぶん違うみたいだね。わたしにはあなたの方が信頼できないよ」
いつもより低い声。
冷静に対応しているな。
さすがルゥだ。
「いやぁ、これは参りました……」
ベリス王め。
何が『参りました』だ。
すぐにまた仕掛けてくるだろう。
一刻も早くルゥとつがいになった事を周知しなければ……
そうだ。
盛大に宴を開こう。
うるさいイフリート族とベリス族の王子もこれで静かになるだろう。
これからもルゥと穏やかに幸せの島で暮らす為だ。
しかし、そうなると『あいつら』も来るのか……
大きいからな。
幸せの島では無理か……
そうだ。
この魔王城なら広いから『あいつら』が来ても大丈夫だな。
よし、幸せの島に帰ったら早速準備に取りかかろう。
第一部 魔族編
『おばあちゃんの記憶と告白』
2022/09/09 13:06 (2025/03/30 23:37 改稿)
『魔王城』
2022/09/09 19:02 (2025/03/31 08:34 改稿)
『これが全魔族王会議……?』
2022/09/10 13:01 (2025/03/31 18:58 改稿)
『前王と前王妃』
2022/09/10 19:22 (2025/04/01 06:59 改稿)
の時のじいじが主役の物語です。




