皆でプリンとかくれんぼ
抱きしめてくれるじいじの身体はひんやりするけど……
心は温かい……
緊張から解放されたわたしは、じいじの腕の中で気持ちよく眠った。
魔王城に向かう時よりも、ゆっくりのスピードで幸せの島に帰って来てくれたみたい。
陸に上がると……
「ルゥ、プリンできてるよぉ?」
「怪我は? 平気か!?」
パパとママが外で待っていてくれた。
魚族長と魚族達も波打ち際に来てくれている。
無事に帰って来られてよかった。
長い夜だったよ……
ピーちゃんは?
無事に帰って来られたかな?
遠いから途中で襲われていないといいけど……
「姫様。お帰りなさい」
「キャッ」
ダディとマンドラゴラの子供達が家から出て来た。
子供達は眠そうに目を擦っている。
かわいいなぁ。
パパがプリンをいっぱい作ってくれていた。
マンドラゴラの子供達が大喜びしているね。
ガゼボで皆でプリンを食べる。
「プリンパーティーですね」
ダディは嬉しそうだね。
わたしの膝に座っておいしそうにプリンを食べている。
先に着いていたウェアウルフ王もグリフォン王もヴォジャノーイ王も一緒にプリンを食べている。
ずっと、かばってもらっていたよね。
本当にありがたいよ。
「……そうですか。王様達は温泉に入りに。あ! その前にかくれんぼをしませんか?」
ダディがプリンを食べながら楽しそうに話しているけど……
ダ……ダディ。
かくれんぼはもうやりたくない……
パパが怖過ぎるんだよ。
でも……
キラキラのつぶらな瞳でお願いされたら……
あぁ……
かわいい。
ウェアウルフ王とグリフォン王が首を横に振って止めようとしている。
ごめん。
ダディがかわい過ぎて『やりたくない』なんて言えないよ。
「外でやろう? 明るい所で!」
これなら大丈夫なはず。
パパとマンドラゴラ達が喜んでいる。
ウェアウルフ王とグリフォン王は嫌な予感がするみたい。
見学でもいいけど、ちゃんと参加してくれるんだよね……
ヴォジャノーイ王はじいじとお話し中。
「わたしが見つける人をやるね」
じいじとヴォジャノーイ王とママは見学か。
よーし!
始めるぞ!
「皆、いくよ! いーち、にーい……」
パパが明るい所に隠れていますように。
「……三十! 捜しに行くよお!」
マンドラゴラの子供達……
ヨチヨチ歩いてかわいいなぁ。
小さいから三十秒じゃ隠れられなかったんだね。
「子供達、見いつけた!」
「キャ」
「キュイ?」
あぁ……
かわい過ぎるっ!
子供達はママに抱っこしていてもらおう。
よし、他の皆は……?
……あれ?
ピーちゃんだ。
ガゼボから少し離れた木陰にピーちゃんが見える。
よかった。
無事に帰って来ていたんだね。
「ピーちゃん? 見いつけた!」
突然話しかけたから、驚かせちゃったかな?
「今ね、かくれんぼをしているの。ダディと子供達がどうしてもやりたいんだって。外ならパパの顔も怖くないでしょ?」
「オコッテナイノ?」
怒っている?
わたしが?
「え? 何を? ピーちゃんも一緒にかくれんぼしよう?」
心配はしたけど怒ってなんかいないよ。
「ピーちゃんの好きな果物をヴォジャノーイ王がくれたんだよ? 終わったら食べよう?」
あれ?
ピーちゃんの元気がない?
疲れちゃったかな?
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」
ピーちゃん?
どうして謝るの?
「謝らなくていいんだよ? わたし達は家族なんだから」
ピーちゃんを抱きしめる。
あれ?
また大きくなっている?
「ピーチャンノコト、キライニナラナイ?」
嫌いになる?
わたしが?
「絶対にならないよ! ピーちゃんは大切な家族なんだから」
「ヒメサマ……ボクヲ、キライニ、ナラナイデ……」
え?
小さい声でよく聞こえなかった。
「エヘヘ、ナンデモナイヨ」
ピーちゃん?
あれ?
向こうの木陰にパパが!
「ピーちゃん、あそこにパパがいるよ?」
「ウン、イルネ」
そっと近づく。
「パパ見いつけ……」
話しかけるとパパが振り向く。
……!?
パパの顔……
こ……
怖っ!
「キャー!」
「ウワアァ!」
わたしとピーちゃんの悲鳴が幸せの島に響いた……
やっぱり、パパの顔は怖過ぎるよ。




