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前王と前王妃

「伯父上? つ……つがいですか?」


 ヴォジャノーイ王がじいじに尋ねている。


「あぁ。そうだ。ハエどもがうるさいからな」


 ハエ?

 つがい?

 何だろう?


「前ヴォジャノーイ王よ。聖女様はよく分かっていないようですが?」


 今話した、あの魔族の顔……

 ベリス王子にそっくりだね。

 ベリス王か。


「ルゥ。どうした?」


 じいじが尋ねてくる。


「つがいって何?」


「つがいとは人間でいう結婚するという事だ」


 け……結婚?

 わたしとじいじが!?

 でもさっき、魔族は結婚しないって……


「つがいになれば愚か者どもがルゥにすり寄らないだろう」


 え?

 じいじ……

 もしかして嫉妬してくれたの!?

 でも……


「わたし……もうモフモフしたり肉球をプニプニしたらダメなのかな?」


「犬猫は、ただのモフモフ対象だからいいが……そうでないものはダメだ」


 犬猫?


「犬……」


 ウェアウルフ王が呟く。


「猫?」


 グリフォン王が自分の事かと首を傾げている。


 じいじ……

 犬と猫だと思っているの?


 ヴォジャノーイ王が慌て始める。


「お……伯父上。あの……犬と猫ではない……あの……伯父上?」


「ルゥ? 少しの間、防御膜の中に入って目を閉じていなさい」


 じいじ……

 ヴォジャノーイ王を完全に無視した……


「じい……」


 途中まで言いかけたところで防御膜の中に入れられる。

 あぁ……

 とりあえず、目を閉じよう……


 ザー……


 水の防御膜の中に入ると、水の音しか聞こえなくなる。

 何を話しているんだろう?


 まさか皆を殺……

 まさかね。


 二分くらいで防御膜が消えた。

 王様達が椅子に座っている。


 あれ?

 ヴォジャノーイ王が震えている?


「じ……じいじ?」


 何をしたんだろう?

 訊くのが怖いよ。

 

「さぁ、全魔族王会議が始まるが……まさか立たせたままではないだろうな?」


 じいじ……

 顔が怖いよ。


「椅子……椅子を持って来ます!」


 ヴォジャノーイ王……

 怒られたのかな?

 かわいそうに……


「じいじ、わたしも手伝ってくるね」


 ヴォジャノーイ王と奥の部屋に椅子を取りに行く。


「姫様……無理矢理、伯父上につがいにされるのですか?」


 じいじに聞こえないくらいの小声で尋ねられる。

 無理矢理じゃないんだけどな……


「違うよ。無理矢理じゃないの」


「姫様……前から思っていたのですが。伯父上は姫様に酷く執着しています。姫様には優しいですが、本当はすごく恐ろしいのです……気をつけてください。伯父上はドラゴンを一撃で倒せるくらい強いのです……」


 ドラゴンを一撃で……

 知っているよ。

 目の前で見たからね。


「心配してくれてありがとう。でもね、わたし……」


「聖女様。はじめまして、わたしはベリス王です」


 いつの間にかベリス王が背後に立っている?

 気配を感じなかった……

 さすが種族王だね。


「はじめまして、ベリス王。何か用?」


 すごい……

 気を抜いたら魅了される。

 魅了の力を使えるのか……


「わたしは聖女様が心配なのですよ。前王は悪の象徴のような方です。聖女様は騙されているのではないかと……」


 ベリス王がかなり強く魅了の力を使っている……

 わたしを魅了しようとしているみたいだ。


「じいじは魔族だよ? 悪の象徴だとしたら魔族らしくていいと思うけど? 口から出る言葉と今やっている事が、ずいぶん違うみたいだね。わたしにはあなたの方が信頼できないよ」

 

 低い声で冷静に……

 魅了されちゃうから気を抜かずに!

 落ち着いて、わたし!


「いやぁ、これは参りました……」


 ベリス王が笑いながら戻って行く。

 でも、目は笑っていなかった。

 小娘くらい簡単に丸め込めると思ったみたいだけど、上手くいかなかったから怒っているみたい。

 気をつけよう。

 他の王様も何か仕掛けてくるかもしれない。

 それにしても、今の声の大きさだったら皆にも聞こえていただろうな。

 魔族は耳がいいから。

 ベリス王は、じいじを挑発しているのかな?

 じいじの機嫌が悪くなっていないといいけど。

 

 椅子を持って戻ると……

 あれ?

 じいじの機嫌が良さそうだね。

 どうしたんだろう?


「じいじ?」


「さすが前王妃だ。立派だったぞ?」


 やっぱり聞こえていたんだね。

 でも……

 前王妃? 

 わたしが?

 じいじ……

 やっぱりつがいになるつもりなんだ。

 これからどうなるんだろう?

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