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魔王城

 魔王城に着くまで、ずっとじいじに抱きしめられていた。

 ボーっと海を見ながら……

 ただ、じいじの温もりだけを感じていた。

 温もり……

 心は温かいけど、じいじの身体はひんやりしているんだよね……


「ルゥ、着いたぞ? 眠くなったか?」


 じいじの言葉に急に恥ずかしくなる。


「だ……大丈夫だよ」


 真っ赤になって、じいじから離れる。

 じいじの顔が見られないよ。  

 

「ルゥ? どうした?」


 見つめられているのが分かる。

 でも、恥ずかしくてじいじの顔を見られない……


「じいじの事が好き過ぎて、こんなに赤くなっているのか?」


 じいじがわたしの赤くなっているほっぺたに触った?

 勇気を出してじいじを見ると……

 じいじも顔が少し赤くなっているね。

 赤い顔を見られて恥ずかしいのか、もう一度抱きしめられる。

 

「この気持ちを幸せというのだな」


 じいじの言葉に心が温かくなる。


「うん……」


 すごく穏やかな気持ちだよ……


「ナカヨシダネ、スグ、ロスタム、ナッチャウヨ」


 ピーちゃん?

 ロスタムなっちゃう?

 何がロスタムになるの?


 じいじもピーちゃんを見ている。


 ピーちゃんにはまだ話していない事がありそうだ。

 いつも話をはぐらかされるし。

 話せない理由があるのかな?


 ゴオーン

 ゴオーン……


 低い鐘の音が海の中に響き渡る。

 魔王城の鐘なのかな?


「行こう。時間だ」


 じいじが真剣な顔になる。

 

「マッテ、ヒメサマ!」


 ピーちゃんが、翼の艶やかな羽根でわたしの顔を撫でた?


 あれ?

 泣いて腫れているまぶたが重くなくなった?


「ピーチャン、ヒメサマ、ナオセル」


 腫れを取ってくれたんだね。


「ありがとう。ピーちゃん」


 背が大きくなったピーちゃんの顔を撫でる。

 前よりもフワフワで温かい。

 ピーちゃんが嬉しそうな顔をしている。

 でも、少し寂しそうにも見える……?



 魔王城は魔素に包まれている。

 薄暗いモヤに包まれた大きい魔王城。

 西洋のお城みたいだ。

 松明たいまつかな?

 赤い炎が見える。

 かなり不気味だ。


 ついに始まるのか。

 全魔族王会議が……


 魔王城の中に入ると、甘い香りがする。


 コツコツコツ……


 静かな城内に靴の音だけが響く。

 松明だと思っていたのは密蝋入りのロウソクだったみたい。

 甘い香りで少し心が落ち着く。

 長い廊下の両脇の壁に掛かっていて、石造りの薄暗い廊下が照らし出されている。

 

 赤く輝く炎。

 

「綺麗……」


 じいじが、足を止めて見入っているわたしの髪を撫でてくれる。


「今度、密蝋のロウソクをオークに作ってもらおう」


「うん。わたしも一緒に作りたいな」


「怪我をしないように気をつけるのだぞ?」


「うん。気をつけるね」

 

 じいじは優しいな。

 幸せの島に帰っても今までと変わらず優しくしてくれるんだろうな……

 ……?

 あれ?

 心がモヤモヤする。


 しばらく歩くと、じいじが足を止める。

 ここが会議をする部屋?

 重厚な扉……

 これから始まる会議に不安になる。


「さぁ、行こう」



 ギィィー


 じいじの魔術で扉が開く。

 コの字型の大きなテーブル。

 椅子に座っている七人の王様達。

 すごい威圧感だ……


 ついに始まった。

 全魔族王会議が……

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