シームルグとルゥ
「ヒメサマ! オハヨ」
ん?
朝か……
ピーちゃんが起こしに来てくれたの?
珍しいね……
「おはよう。ピーちゃん……」
……!?
目を開けると、わたしより大きい緑色の鳥がいる!?
あれ?
なんだ。
夢か……
もう一回寝よう……
「ヒメサマ! オハヨ」
……?
やっぱりピーちゃんの声だ。
もう一度、目を開ける。
「ヒメサマ! ピーチャン、オオキクナッタヨ。カッコイイ?」
え……?
「ええーー!?」
わたしの大声にじいじが慌てて部屋に入って来た。
「ルゥ!? どうした? ……なんだ? この鳥は……?」
「じいじ、ピーちゃんが大きくなっちゃった!」
「ピーチャン、シームルグニ、ナッタヨ!」
ピーちゃんが話し始めたけど……
シームルグ?
何だろう?
「シームルグだと!?」
じいじが怖い顔になった?
「じいじ? どうしたの?」
「ルゥ、この鳥と従魔契約をしていたな?」
「うん……しているけど、どうしたの?」
何かよくない事かな?
いつも冷静なじいじが慌てている。
「シームルグは勇者が誕生する時に現れる鳥だ。前ハーピー族長と契約した時は命の危険があったから仕方ないとしても、ルゥの時は違ったはずだ。まさか……」
え?
ちょっと待って?
わたしが勇者だっていう事!?
「スコシ、チガウヨ? ヒメサマノ、コドモガ、ユウシャダヨ」
え!?
わたしの子供?
産んでないけど!?
「シームルグは鳥の王だ。まさか実在したとは」
どういう事?
ハーピー族長は、出来損ないだから食べられそうになったって言っていたよね?
「ヒメサマハ、ロスタムノ、オカアサンニ、ナルノ」
ロスタムのお母さん?
「ルゥが産んだ子が勇者になるのか?」
「ソウダヨ。ピーチャンハ、ヒメサマガ、ロスタムヲ、ウムトキニ、オテツダイ、スルノ」
わたしが産む子がロスタムって名前で、その出産の手伝いをする?
え?
助産師さん?
ピーちゃんが?
どうやって?
「ヒメサマ、ジブンノキズ、ナオセナイ。ピーチャンナラ、ナオセル」
ピーちゃんには治癒の力があるの?
魔族じゃなかったの?
「ピーチャンハ、セイジュウ、シームルグ!」
バサバサ……
ピーちゃんが翼を広げる。
鮮やかな緑色の艶やかな翼。
尾羽はクジャクみたいに長くて綺麗……
「ルゥの産む子が勇者に……?」
じいじが考え込んでいる。
勇者は魔族の敵だから。
でも、まだ結婚もしていないし……
急展開過ぎるよ。
「全魔族王会議を開くぞ。ルゥとシームルグも参加するのだ」
「全魔族王会議? 何それ?」
「魔族の王が集まり話し合うのだ。全てはルゥの子を守る為だ。公にしておかないと後で面倒な事になるかもしれない」
じいじ?
なんだか大変な事になりそう……
「怖いよ……」
「大丈夫だ。ルゥの事は、何があっても守るからな」
じいじ……
うん。
そうだよ。
じいじは嘘を言った事は一度もない。
いつもわたしを一番に考えてくれた……
「うん。じいじが隣にいてくれれば安心だよ」
不安だけど、死の島の時みたいに攻め込まれたら嫌だし。
それに、じいじがいてくれるだけで心強いよ。
子供って言われてもよく分からないけど、わたしは今できる事をやろう。
それに、もしわたしに子供が産まれるなら……
わたしは長くは生きられないだろうから、残される子供の為にも色々やっておかないと。
誰にも殺されないように準備しておくんだ。
魔族の種族王が全員そろうのか……
魔王だったお父さんと対立していた種族王もいるはず。
生きて帰って来られるよね……?




