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オレ様王子とルゥ ~王子が主役の物語、後編~

オレ様王子とルゥ ~ルゥが主役の物語~ の王子が主役のお話です。

「お前、何の話だと思ってるんだ?」


 話が噛み合わないぞ?

 魔王の娘は何か勘違いしているのか?


「え? 家具を取り返しに来たんでしょ?」


「家具!? え? あ……そういう事か!」


 家具を取り返しに来たと思っていたのか……


「オレが欲しいのは家具じゃなくて……その……」


 ゴロゴロ

 ピカッ


 雷?

 

「とりあえず、家に入ろう? 下ろして?」


 家に避難するのか。

 そうだな。

 魔王の娘は人間だから簡単に死ぬからな。

 抱き上げていた魔王の娘をゆっくり下ろす。

 できればこのまま連れ去りたい……

 でもそんな事をしたらもっと嫌われるよな。


「行こう」

 

 え?

 オレも誘ってくれるのか?

 魔王の娘が手を差し出してくれている。


「行こう!」


 この手……

 握っていいのか?

 うぅ……

 また胸がドキドキ騒ぎ始めた。

 落ち着け!

 オレのドキドキ!

 差し出された手を握ると……

 うわあぁ!

 もっとドキドキが速くなった!

 

 ダメだ。

 このまま死ぬんじゃないかってくらいドキドキして苦しい……

 

 雨の中を手を繋いで走る。

 後ろからジャバウォックも付いて来る。  

 柔らかくて小さい手だ。

 でも剣だこができているな……


 玄関を開けて中に入る。

 手を繋いだまま奥に入って行く。

 

 魔王の娘が部屋の扉をそっと開けた?

 どうしたんだ?

 ずいぶん慎重に開けている。

 ん?

 ほっとした顔になった?

 あれ?

 魔王の娘が、オレと繋いでいる手をじっと見ている。

 

 あ……

 繋ぎっぱなしだった……

 恥ずかしくなって慌てて手を離す。

 

 しっかりしろ!

 頑張れ!

 今だ!

 気持ちを伝えるんだ!

 

「あの……」  


 ダメだ!

 言えない……

 って、あれ?

 部屋の中に見慣れた箱がある。

 この箱はオレのおもちゃ入れ?


「あ! あ……この箱、小さい時によくおもちゃを入れて……」


 今こんな話はどうでもいいだろ?

 オレの意気地無し!

 はぁ……

 気持ちを落ち着かせよう。

 それにしても懐かしいな。

 まだおもちゃは入っているのか?


 箱を開けようと手を伸ばす。


「開けちゃダメー!」


 え?

 何で?

 勝手に開けようとしたから怒らせたのか?


「え? 何で?」


 もう開けたけど……

 ダメだったのか?

 あれ?


 箱の中が稲光で照らされて……

 何かが箱の中に……

 ……!?

 箱の中で恐ろしい生き物が目を見開いている!?


「うわあ!」


 オレの悲鳴が響き渡る。

 怖っ!

 魔王の娘もきっと怖がっているはず……

 ……!?

 どうしてだ!?

 魔王の娘が遠い目になっている!?


 箱の中の何かが動き始めた!?

 まさか、恐ろしい化け物が封印から解かれたのか!?

 それとも前ヴォジャノーイ王が何かを捕まえてこの箱に閉じ込めたとか!?

 あいつは恐ろしい奴だからあり得る……


「んん? どうしたのぉ?」


 化け物が目覚めて稲光に照らされながら起き上がった!?


「に……逃げるぞ!」


 魔王の娘の手を握って部屋から出ようとする。


「待って! パパだよ!」


 ……パパ?

 魔王の娘の父親は魔王だろ?

 これが魔王!?

 確かに恐ろしい顔だけど魔王じゃないだろ?

 まさか……

 魔王が生きていたのか?

 いや、そんなはずは……

 って言うか顔が異常に怖い、太っているオークにしか見えないぞ?

 

「何を言ってるんだ? こんな怖い顔がパパって何だよ!?」


 聞き間違えたのか?

 パパじゃなくて何か違う事を言ったのをオレが聞き間違えたんだ。

 きっとそうだ。

 あれ?

 魔王の娘の顔がひきつった?

 どうしたんだ?


「うわああん! 怖い顔って言われたぁー!」


 おいおい。

 オークがガチ泣きしているぞ……

 魔王の娘がオークの頭を撫でながら励ましている……?


「大丈夫だよ。パパの顔大好きだよ」


 やっぱりパパって言っている。

 ……パパ?

 こいつがパパ?

 絶対魔王じゃないだろ!

 ……まずい。

 父親代理か何かなのかも……

 怖い顔とか言ったし、また嫌われそうだ。

 あと、オークの顔が怖過ぎるっ!

 

「き……今日は帰る……」


 無理矢理ジャバウォックを部屋から押し出すと走って家から逃げる。

 ジャバウォックは、ちゃんと後から付いて来ているか?

 振り返ると残念な目でオレを見ている。


 仕方ないだろ!

 怖いんだよ!

 今日は帰ろう……


 ジャバウォックに乗りイフリート王国に戻る。

 

 王国に着くまでジャバウォックのナマズみたいな髭が風になびいて、ずっとオレを叩いている。

 ジャバウォックが髭に叩かれるオレの姿を振り返って何度も見る。

 あきらかに、にやけているな……


 こいつ絶対わざとやっている。

 疑いが確信に変わった……

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