次回が最終話だけど、今になって吉田のおじいちゃんが天才だと判明する
「……その事ですが、ペルセポネ様のお身体は何千年も冥界にあったのですよね? それを一年の三分の一に代替する事はできないのですか?」
イフリート王……?
確かに!
どうなのかな?
「『一年の』となっているからな。今年の四か月はいいとしても来年からの四か月は冥界にいる事になる」
ハデスがイフリート王の問いに答えると、吉田のおじいちゃんが話し始める。
「じいちゃん、考えたんだけどなぁ。一年間の三分の一を冥界にいればいいんだろう? って事は一日の三分の一の八時間を冥界にいればいいんじゃねぇか?」
え?
そんな風に考えた事がなかったよ。
「だから、ルーとハデスちゃんが夜の十時に冥界に行くだろ? で、夜をイチャイチャ過ごして、朝の六時に第三地区に来て朝飯を食べて、また夜の十時になったら冥界に行けばいいだろ?」
「……吉田のおじいちゃん! 天才だよ!」
すごい!
ただの変態じゃなかったんだね!
「だろう? じいちゃんは天才なんだ! あははは!」
「月海……」
おばあちゃんが優しく抱きしめてくれる。
「……うん」
何も言わなくても伝わってくる。
おばあちゃん……
これからも、毎日会えるんだね。
嬉しいよ……
……あれ?
誰か空間移動して来るのかな?
第三地区が光り始める。
でも、目が開けていられる優しい光だ。
「……これは!」
「浄化か?」
「すごい! 今までとは比べ物にならない程の神力だ」
「不思議だ。魔族の我々にも心地いい神力とは……」
魔族の皆が騒いでいる。
浄化……?
また無意識にやったのかな。
ペルセポネの記憶が戻ったからなのかな?
力の使い方が上手くなった感じがする。
「ルゥ、この神力なら、この世界のほとんどの場所を浄化できただろう。まだ、魔素の残る場所には直接浄化に赴いた方がいいだろうが、それもすぐに終わるだろう。よく頑張ったな。これで、聖女の役目も終える事ができる」
「……いつでもペルセポネの身体に戻れるっていう事?」
「寂しいか?」
「十五年間ルゥの身体で過ごしたから……」
「そうだな……」
「ハデス? わたしね、ずっと考えていたの。この世界に来た理由を……」
「この世界に来た理由?」
「うん。わたしはハデスにもう一度逢う為に……ペルセポネが頑張ったから……上手く言えないけど、ペルセポネの小指とハデスの小指に結び付いていた赤い糸が世界を越えて引き寄せ合って、わたしが産まれたと思うんだ。たくさんの人達に助けてもらいながら、わたし達はまた出逢えたの」
「あぁ……そうだな」
「皆、ありがとう! 今まで……皆がどれだけ温かい心でわたしを支えてくれていたか……感謝で胸がいっぱいで、苦しいくらいだよ? もうルゥの身体ではいられないけど、ペルセポネの身体でも仲良くしてくれる?」
「もちろんです!」
「容姿が変わろうと姫様は姫様です」
前ウェアウルフ王のお兄ちゃんと魚族長が涙を流しながら微笑んでくれる。
「当然だ。月海はずっと、ばあちゃんのかわいい孫だ」
おばあちゃんが涙を流しながら髪を撫でてくれる。
「うん……うん。もう一人……挨拶しないといけない人がいるの……」
そう。
すごく大切な人……




