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エメラルドのオークとママ

今回はママが主役です。

 あれはルゥの父親が魔王だった時の事。

 わたしは反魔王軍に追い詰められていた。

 もうダメだと思った時、現れたんだ。


 エメラルドのオークが!


 鍛え抜かれた強靭な肉体。

 精悍な顔つき。

 腕を一振りすれば五人の敵が倒れた。

 その姿にわたしは胸が高鳴った。


 そのエメラルドのオークが……

 あの勇ましかったオークが……


 このオークだとぉぉおっ!?


 嘘だ。

 だって……

 腹は出ているし顔は……まぁ怖いな。

 腕を振っても敵が倒れるどころかオークが転ぶんじゃないか? ってくらい、のろまだぞ?

 怖がりだし、すぐ泣くし。


 本当にあのエメラルドのオークなのか?


「えぇ? 昔の話だよぉ」


 おいおい。

 本当らしいな……

 何があったらこんなに変わるんだよ?

 

「パパは優しいのに、どうして最前線で戦っていたの?」


 お、さすがわたしのルゥだ。

 いい質問だ。


「んんー? そうだねぇ。あの頃はぁ知らなかったんだよぉ」


 何をだ?

 

「何を?」


 さすが、わたしのかわいいルゥだ!

 いい質問だ!


「大切なぁ誰かがぁ、死んでしまうってぇ事だよぉ」


 よく分からないな。

 どういう事だ?

 ん?

 ルゥが質問をやめた。

 何か分かったのか?


「魔王様がぁ死んじゃってぇ、すごく辛くてぇ戦うのをやめたのぉ。だってぇその相手がぁ、誰かのぉ大切なぁ存在かもぉしれないでしょお?」

 

 要する戦った相手が誰かの大切な存在かもしれないから、死んだらかわいそうって事か?

 結局こいつは優し過ぎるって事だな。

 でも……


「おい! オーク! お前強いんだろ? どうしてウェアウルフ王に負けたんだよ!? ルゥが死んでもよかったのかよ? お前のルゥに対する想いはそんなもんなのか!?」 


 下手すればオークもルゥも死んでいたんだ。

 強いのなら戦えよ。

 オークもルゥも死んだら嫌だ!

 あれ?

 どうしたんだ?

 涙が出てきた……


「ごめんねぇ。ごめん」


 オークがオロオロしている。

 酷い事を言ったのはわたしなのに……

 謝るなよ。

 自分が情けなくて、また泣けてくるだろ。


「パパ、違うよ」


 ルゥも泣いている?

 何が違うんだ?


「ママはね、パパにも生きていて欲しいって言っているんだよ」


 ルゥ……

 本当にルゥには敵わないな。


「そうだよ! わたしは……オークにも生きていて欲しいんだよ!」

 

 言っちまった……

 あぁ……

 顔が赤いのが自分でも分かる。


「ありがとう」


 え?

 オークがわたしを抱きしめながら礼を言った?

 わ……わた……わたしを抱きしめ……

 あれ?

 目の前が真っ暗……


 それからの事はよく覚えていない。

 目覚めるとベットにいた。

 ルゥがずっと手を握っていてくれたみたいだ。

 情けないな。

 どうして倒れたんだ?


「はい。ハーピー、お水だよぉ?」


 オークは優しいな。

 わたしはこんなに意地悪なのに。


「さっきはぁごめんねぇ。強くぅ抱きしめ過ぎちゃってぇ」


 やっぱり夢じゃなかったのか。

 幸せ過ぎて夢かと思った。

 って、何を考えているんだ!?

 ん? 

 じゃあ、わたしは嬉しくて気絶したんじゃなくて苦しくて気絶したのか!?


「ルゥのぉ時みたいにぃ、しちゃったからぁ」


 ……え?

 今何て言った?

 ルゥの時!?


「おい! お前、ルゥをあんなに強く抱きしめているのか!?」

 

 嘘だろ!?

 ハーピー族のわたしが気絶するくらいだぞ!?


「えぇ? いつもぉそうだよぉ?」


 いつも!?

 バカオークめ!

 でも、人間のルゥがあの力で抱きしめられたら生きていられないんじゃないか?

 ん?

 ルゥがニコニコ笑っている。

 嘘だろ……

 ルゥは小さい頃からオークと一緒にいるから、かなり頑丈に育ったのか?

 

 ルゥ……

 もしかして、強靭な肉体の持ち主……とか?

 あぁぁ!

 ルゥには、かわいくあって欲しいのに!

  

 いや、待てよ?

 じゃあいつもルゥの髪を撫でている時もあの力なのか?

 わたしだったら首が折れるぞ!? 

 ……ルゥ。

 さすが、前魔王の娘だ……


 確実にわたしより強いな……

 

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