ペルセポネの死の真相~前編~
「ハデス……大丈夫かな?」
第三地区の砂浜で星空を見上げながら呟く。
ハデスは、おばあちゃんと寝ていろって言ったけど、心配で眠れないよ。
無理をして怪我でもしていたら……
ああ……
心配だよ。
今は天界にいるのかな?
それとも冥界?
わたしが天使だったら一緒に行けるのに……
ハデスは大丈夫よ。
信じて待ちましょう?
ペルセポネ……?
そうだね。
ハデスはすごく強いし、頭もいいから大丈夫だよね。
それに約束したから。
帰ってくるって……
ハデスは絶対に嘘をつかないから。
ドキドキする。
ハデスを想っているからかな?
……?
何だろう?
このドキドキは……
少し苦しい……?
頭がぼーっとする。
この感じは……
ペルセポネの記憶が蘇る時みたいだ。
「お母様……わたしは魔族の世界に行くわ。ハデスの側にいたいの」
「ペルセポネ! ハデスとずっと一緒にはいられないわ? ザクロを食べたのよ?」
「それでもいいの。少しでもいいの。ハデスと一緒にいたい。離れたくないの」
「醜いカエルになったのよ!?」
「醜くなんてないわ? とてもかわいいカエルの赤ん坊よ?」
これは……
ハデスがヴォジャノーイ族の赤ちゃんに憑依させられた時の記憶?
ペルセポネはハデスとずっと一緒にいたかったんだね。
「ペルセポネ……愛しい人。これからは毎日抱きしめてあげるからね。わたし達は君の死をもって家族になれるんだよ?」
あれ?
この声は……
あの時聞こえてきた声だ。
「何を言っているの? ファルズフ……やめて!」
「大丈夫だよ? 痛いのは一瞬だからね? すぐに水晶に入れて永遠にわたしだけの物にしてあげるよ。ペルセポネもわたしを愛しているだろう?」
「……ファルズフ? あなたどうしたの?」
「わたし達は愛し合っているのに、ハデスが無理矢理連れ去った。あの愚かな男のせいで……」
「ハデスは愚かではないわ? いつも必死に生きているわ。少し不器用なだけよ」
「あぁ……ペルセポネ」
「うっ! 何を……」
痛い!
え?
胸の辺りが痛い……
まさか……刺したの?
ペルセポネの痛みが伝わってきたの?
「ペルセポネ……愛しい人。これからは毎日抱きしめてあげるからね。わたし達は君の死をもって家族になれるんだよ?」
「ふざけないで……愚かね。わたしは……あなたに殺されて冥界に行くわ。水晶に亡骸を入れる? 愚かなのはあなたの方よ。天族は死後は冥界に行くのよ? 身体と魂の両方がね。だから身体を水晶に入れるなんて、できないわ? ……うぅ」
「あぁペルセポネ、大丈夫だよ。すぐに楽になるからね。残念ながらペルセポネは自害した事になるんだよ?」
「……? 何を言っているの?」
「ペルセポネは、今自分で胸を刺したんだ」
「……刺したのはあなたよ」
「わたしがこの部屋に入った時にはもう自害していたんだよ?」
「……何を企んでいるの?」
「ペルセポネが自害したとわたしが騒ぎ、愚かなゼウスが時を戻せない状況にする。するとどうだろう……ペルセポネを愛するデメテルが魂だけでも、と身体から取り出すだろう?」
「様をつけなさい。愚か者め……」
「ふふ……では言い直しましょう。知能の足りないゼウスが時を戻せなくするんだよ」
「……クソヤロー」
「おやおや、神の娘が何て口を……これもハデスのせいだ。ペルセポネ……それで、どうなると思う?」




