ペルセポネの帰還~前編~
今回はハデスが主役です。
「デメテル! シームルグはいるか!?」
デメテルの宮殿に空間移動する。
良かった。
身体は裂けなかったな。
「ハデス! ……!? ペルセポネ!」
デメテルが駆け寄って来る。
「あぁ……ペルセポネ……ペルセポネ……お母様が悪かったわ」
真っ青な顔をして震えている……
「デメテル! 止血しないといけない! シームルグは!?」
「……止血!? 大変だわ! シームルグ! シームルグ!」
「ココニイルヨ。マカセテ!」
緑の小鳥ではなくシームルグの姿になって待っていてくれたのか。
これで安心だ……
「コレデ、ヘイキ。キズ、ナオッタ。デモ、シュッケツ、ヒドイ。シバラク、アンセイ」
しばらく安静にか……
……?
ペルセポネの身体に、弟の神力を感じた?
そうか……
魂の無い身体が傷まないようにしたのか。
だが、なぜ離れた場所から?
抱きしめたいだろうに。
「ボク、モウカエラナイト。オカアサン、シンパイスル」
「そうね。ゼウスに送らせ……」
デメテルの話の途中で、シームルグが話し始める。
「ダイジョウブ。ボク、ブレスレット、アル。テンカイト、マゾクノセカイ、イキキデキルカラ。ムコウデ、ブラックドラゴンカ、ベリアルニ、オネガイスルヨ」
「そうか。シームルグがいなければルゥもペルセポネも助からなかった。本当に感謝している。ペルセポネの身体は魂が抜け入れ物の状態だが、これ以上の出血は害を及ぼすからな……」
シームルグには、いつも助けられてばかりだな。
「ぐすっ」
……?
少し離れた所から誰かの泣き声が聞こえる?
弟……か。
「ルーチャンハ、イモウトミタイニ、カワイイカラネ。ヤクニタテテ、ヨカッタヨ。ジャアネ」
シームルグがブレスレットを壊し、第三地区に空間移動する。
「とりあえず、湯浴みをさせたいわ? それから、神力を注ぎましょう。ハデス、わたしでは無理だわ。ペルセポネの湯浴みを頼めるかしら」
「デメテル……」
「もう、あの時のように邪魔はしないわ? 本当に……ごめんなさい。ゼウスは……そっとしてあげましょう? 色々あったから……」
デメテルも気づいていたか。
そうだな……
本当は今すぐ抱きしめたいだろう。
だが……
あまりに酷い事をし続けてきたからな。
デメテルが浴室に案内しながらゆっくり歩き始める。
わたしもペルセポネを抱きかかえたまま並んで歩く。
「わたしこそ……無理矢理ペルセポネを冥界に連れ去って、すまなかった。前もってデメテルに話していれば……本当にすまない」
「あの時も、今のようにお互いを思いやる事ができていたら……こんな事にはならなかったのね」
「あぁ……だが……ルゥに会えた事は……わたしにとって、何よりも……」
デメテルはルゥをかわいがってはいるが、やはりこの言い方はまずいか……
わたしはルゥもペルセポネも愛している。
だが、この言い方ではわたしがペルセポネをいらないように聞こえてしまいそうだ。
「……そうね。わたしも同じ気持ちよ? ハデスがルゥもペルセポネも大切に想ってくれているのは分かっているわ? 本当にありがとう。母親として嬉しいわ。それで……ペルセポネはどういう状況だったの?」
良かった……
誤解されなかったようだ。
「最期の時からずっと水晶に閉じ込められていたようだ」
「そう……それなら乱暴な事はされていなかったのね……それでファルズフは?」
「自害した」
「……そう。自害……」
「あぁ……」
「ありがとう……嫌な事をさせてしまったわね」
無理矢理自害させたと分かったのか……
まあ、ファルズフを知っていれば自ら死を選ぶとは思えないだろう。
あれは、心が歪んでいたからな。




