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冥王ハデス、完全復活~後編~

今回はハデスが主役です。

「ハデス様? 確かにわたしはファルズフですが、ペルセポネ様の身体とは? ペルセポネ様は自害……うっ!」


 ファルズフの身体を闇に近いモヤで包み込む。

 

 このモヤは天族には毒になる。

 苦しいだろう。

 内臓がジリジリと焼かれるように痛いだろう。

 だが、わたしやデメテル、そしてルゥが受けた心の傷に比べればこの程度は痛みのうちには入らない。


「ファルズフよ……お前の口からペルセポネの名を聞くのは不愉快だ」


「ハデスさ……誤解……」


「何が誤解なのだ?」


「ペ……あ……わたしには何の事だか……まるで……」


「ほう。分からないと言うのか。では家の中を調べさせてもらおう」


「……! お待ち……くださ……」


「待つ必要があるのか? この冥界の法はわたしだ。そのわたしに待てと? 愚かな。わたしのいない冥界が一番安全だと考えたか? 天界には神もデメテルもいるからな」


「そんな……誤解……」


「誤解かどうかは家を調べれば分かる事だ」


 うつ伏せに倒れモヤに包まれるファルズフを横目で見ながら家の扉を開ける。


 ペルセポネはどこだ?

 

 小さな家に入ると……

 水晶?

 わたしの背丈より少し小さいくらいの……

 そんな……

 まさか……

 ペルセポネ……?


「ペルセポネ様!? なぜこんなお姿に!」

「ペルセポネ様だ!」

「ペルセポネ様!」


 ケルベロスの三つの頭が騒ぎ出す。


「あぁ……ペルセポネ……ペルセポネ……」


 水晶に触れると……冷たい。

 水晶に閉じ込められたのか?

 腐らないように?

 永遠に美しいまま側に置こうとしたのか……


 愚かな……

 ペルセポネは……

 ペルセポネは……


 外に出て、苦しむファルズフの顔を踏みつける。


「いいか? よく聞け……ペルセポネが愛したのはわたしだけだ。過去も……今も……これから先も……わたしだけだ!」


「愚かだな……もうペルセポネは……わたしのペルセポネは……動く事は……無い……感情も……」


「ペルセポネの魂は生きている。お前はわたし達を出し抜いたと考えたのだろう? 残念だったな。お前が動かぬペルセポネと冥界にいた間、わたしはペルセポネの魂と共に過ごしていたのだ!」


「そんな……あり得ない……」


「今から……お前には自害してもらう……二度とペルセポネの前に現れぬようにな」


「……待て……本当に……ペルセポネが……?」


「良い事を教えてやろう。ペルセポネの魂はわたしやデメテル、ケルベロスの事を覚えていたが……お前の事は微塵も覚えていなかったぞ? ……哀れだな」


「そん……な……ペルセポネ……わたしの……ペル……」


「お前のペルセポネではない。わたしのペルセポネだ」


 闇のモヤでファルズフの手を操る。

 そして……


「ファルズフよ。自ら首を締めて……死ね」


「う……う……」


 ……息が止まったな。

 身体が透けて……

 完全に消えた。

 これが消滅か。

 実際見たのは初めてだ……


「冥王様! ペルセポネ様が!」


 家の中からケルベロスの慌てる声が聞こえてくる。


「どうした!?」


 家に入ると……

 水晶が消えた?

 そうか。

 ファルズフの神力で創った水晶だったのか。

 

「しまった!」


 ペルセポネの胸元から血が……

 水晶で時を止めていたのか。

 弟が天界にシームルグを呼んでおくと言っていたな。

 天界にも治癒の力を持つ者がいるが、シームルグには及ばないからな。

 

 ペルセポネを抱きかかえて天界へ空間移動する。


 間に合ってくれ。

 身体の損傷が酷ければルゥの魂が入れなくなってしまう! 

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