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一緒に前に進もうよ

「ハデス? ハデスも冥界のケルベロスも生きているのにどうして冥界に入れるの?」


 ペルセポネも生きていたのに天界と冥界を行き来していたんだよね?

 冥界は天使の死後の世界なんじゃないのかな?


「そうだな……死者をまとめる者が必要だからな。冥界と聞けば恐ろしい場所と思われる事が多いがそうではない。穏やかな光に包まれた美しい場所だ。魔族と同様に天族も寿命というものが無い。病や怪我等で命を落とした者は壮絶な最期を迎える事が多い。だからこそ、冥界は穏やかに過ごせる場所でなければならないのだ」


「まとめ役は自由に出入りできるんだね。じゃあ……ファルズフはやっぱり亡くなっているのかな?」


「どうだろうな。ファルズフは医師だった。冥界にいる者は魂だけでなく身体も生前のままだ。冥界の入り口で健康だった時の身体に戻る作業がある。だが、時間の経過と共に不具合を生じる事もある。そういう時には医師が呼ばれる事もあるのだ」


「そうなんだね……じゃあ、ファルズフは医師の立場を利用してペルセポネの身体を持って冥界に入り込んでそのまま隠れ住んでいるっていう事?」


「冥界は広い上に皆、疑う事を知らない。身体が思うようにならず困った時に助けてくれる優しい者とでも思っているかもしれないな」


「……ハデス、冥界に行って確かめるの?」


「ああ、その前に天界のファルズフの監禁場所に行って来る」


「……ファルズフは狡猾なんでしょう? 大丈夫かな? わたしも……行きたかった」


「危険だ。もしルゥの魂がペルセポネの記憶を取り戻しかけていると知れば、どんな事をされるか。奴は、数千年もの間、動かないペルセポネの側にいた。ルゥの魂を入れ込んで動かしたいと思うかもしれない」


「……わたしの魂は最終的にはペルセポネの身体に入るんだよね?」


「そうなる可能性は高いが……まだ身体の状態が分からない。それに、そうなる時にペルセポネの身体をファルズフに持たせておくわけにはいかない」


「……そうだね」


 帰って来るわよね?

 今度はちゃんと帰って来るわよね?

 離れたくない。

 怖いの。

 あの時みたいに、二度と会えなくなるんじゃないかって……

 ハデスがヴォジャノーイ族に憑依して魔族の世界に行ってしまって、後を追おうとしたけれど悲しむお母様を放っておけなくて、あんな事に……

 

 ……?

 ペルセポネなの?

 あんな事にって……?

 もう少しで思い出しそうなのに。

 かなり辛い事があって思い出したくなくて、気持ちに蓋をしているのかな?

 でも……

 もう引き返す事はできないんだよ?

 ペルセポネの身体があるなら取り返さないと。

 大好きなハデスが……

 お母様も……

 皆がそれを望んでいるんだよ?

 お願い、ペルセポネ。

 あなたはわたしで、わたしはあなた、なんだよ?

 一人で抱え込まないで一緒に前に進もうよ。

 やっと、大好きなハデスと笑って暮らせる日が来たんだよ?

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