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ファルズフの居場所

「ごめんね。ハデス……少しでも早くペルセポネの身体を取り戻したいよね?」


 どうして思い出せないのかな?

 思い出したくない何かがあるのかな?


「ルゥ……ファルズフがペルセポネを愛しているなら傷つけはしないはずだ。思い出す為に無理をしてはいけない。ルゥの身体はもう長くはない……」


 ハデスが悲しそうな顔をしている。


「……うん。ルゥを命がけで産んでくれたルゥのお母さんの為にも無理はしないよ……でも、あのね? 誰か知らないかな? 過去の記憶を思い出せる方法を」


 今、第三地区には大勢来てくれているから、誰か方法を知っているかも。


「今までは過去の記憶を思い出した事は無いのですか?」


 イフリート王が尋ねてくる。


「今まで……? 今までは……誰かと話している時……とか? そうだ! 過去と似たような会話をした時かもしれない!」


「似たような会話……? なるほど。では、色々な会話をするのはどうでしょう。それなら身体への負担も少ないはずです」


「なるほど……そうだね。少しでも早く思い出さないといけないって焦っちゃって……あのね? 他の思い出した記憶にはモヤがかかっていないの。何か思い出したくない事があったのかも。すごく傷ついて思い出したくない……とか」


「記憶にモヤがかかる……ですか。……その記憶には音はないのですか?」


「音……? あ……」


 そういえば、さっき何か聞こえてきた……


「聖女様……教えていただけませんか?」


「……ファルズフかは、分からないけど『ペルセポネ……愛しい人。これからは毎日抱きしめてあげるからね。わたし達は君の死をもって家族になれるんだよ? 』っていう声が聞こえたの。あと思い出したのは……そうだ! たぶんペルセポネが亡くなった時……誰かが部屋に入って来て、話しかけられて……その後、胸の辺りが痛くなったの」


「なるほど……聞けば聞くほどその男が怪しいですね」


 イフリート王の言う通りだね。

 ファルズフか……


 あれ?

 でも……


「ねぇ? ハデス? 今、思ったんだけど……ペルセポネって一年の三分の一は冥界にいないといけないんだよね?」


「そうだ。冥界のザクロを食べたからな」


「残りの三分の二はどこにいてもいいの? 天界でも冥界でも問題ないの?」


「ああ、三分の一の時間を冥界で過ごせば、残りはどこにいても大丈夫だ」


「でも……今は何千年も天界のファルズフの家にいるんだよね?」


「……? そうだな……おかしいな」


「魂が無いから……とかかな? ペルセポネの身体は魂が抜けているよね? もう亡くなっているんだよね? でも、ペルセポネの魂のわたしは冥界には行っていないし……ザクロの呪いは解けたのかな?」


「……呪いは身体と魂の両方にかかったはず。ペルセポネの魂であるルゥの魂が冥界に行っていないとすれば、まさか……身体が冥界に?」


「ファルズフは本当に家の中にいるのかな? お母様は軟禁だったから簡単に抜け出せたのかな? 監禁はもっと厳しいんだよね? 家から抜け出すのは無理かな?」


「……ルゥ、今から天界に行ってファルズフが監禁されているか確認して来よう。犯罪者が監禁場所から抜け出していないかの確認ならば罪には問われないだろう」


 ハデスが慌てて天界に帰ろうとする。


 空間移動をするんだね。

 失敗しないよね?

 身体が二つに裂けないか心配だよ。


「ハデス……待って! もし、家にいなかったら……ファルズフがいるのは……」


「「冥界!」」


 わたしとハデスの声が重なる。

 この考えが合っているなら……

 もうファルズフは亡くなっている……?


 あれ?

 でも、ハデスも冥界のケルベロスも生きているんだよね?

 冥界は亡くなった後に行く場所だよね?

 仕事をする人は生きていても行けるのかな?


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