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皆でかくれんぼ~後編~

「皆さん、何かありましたか?」


 廊下からダディが覗いている。


「うわあ!」


 突然のダディの声に魔族達とわたしが叫ぶ。


「ギィヤー!」

「ギュエー!」


 驚いたマンドラゴラの子供達も叫び出す。

 もう地獄絵図だ……


「何ですか? この箱は?」


 ダディが箱に気づいて触ろうとしている!?

 

「ダメ!」


 ザー


 え?

 雨が降り始めた。

 さっきまで晴れていたのに? 

 部屋が急に薄暗くなったよ。


 ゴロゴロ 

 ピカッ


 雷まで!?


「うわあぁっ!」


 ……!?

 箱の中から悲鳴が聞こえた!

 怖いよ。

 身体が震える……


 ピカッ

 

 雷の光と共に箱から何かが起き上がった!?

 薄暗い部屋に、稲光で浮かび上がる生き物の姿……

 怖い!


「うわあぁん。怖いよぉ!」


 ……え?

 この声は……

 パ……パパ?

 箱の中にいたのはパパだったの?


 部屋が静まり返る。


 まずい……

 パパの顔を見て怖がっちゃった……


 王様達もおじちゃん達もパパ相手に怯えた事にうろたえている。


「ルゥ、怖いよぉ! 雷怖いよぉ!」


 パパが泣きながら雷を怖がっている。

『一番怖いのはお前の顔だよ!』

 マンドラゴラ以外の皆の心が一つになった……


 ちなみにピーちゃんはわたしの悲鳴に驚いて外に逃げていた。

 相変わらずだね……

 

 雨がやんで空には虹が出ている。

 綺麗だな。

 

 もう二度とかくれんぼは、やらない。

 そう心に決めた涼しい夕暮れだった。



 ~皆でだるまさんが転んだ編~


「姫様、この前のかくれんぼ楽しかったですね」


 ダディがガゼボの中で話しかけてくる。


「う……うん。そうだね」 


 もう二度とやりたくない。

 

「もう一度やりませんか?」


 え?

 もう一回!?

 やりたくない……


 ちなみに今ガゼボにいるのは、あのかくれんぼの時にいた皆だ。

 嫌な予感しかしない。

 お互い顔を見合わせてなんとかやめさせようと考える。


 待てよ?

 外でできる……

 そうだ!


「だるまさんが転んだ!」


 これならパパの顔が怖くない!

 ……はず。


「姫様……」

「聖女様……」


 ウェアウルフ族とヴォジャノーイ族とグリフォン族の皆が不安そうにしているね。

 小声でパパに聞こえないように話そう。


「この遊びなら大丈夫だよ」


 ほっとした顔で皆が頷いたね。


「木の所でやるの。顔を隠して『だるまさんが転んだ』って言っている間に、他の人達は木に近づいて行くの。顔を隠している人に、動いているところを見られたら負けだよ? 顔を隠している人にタッチできたら勝ちだよ」


 一回やった方が分かりやすいかも。


「わたしが顔を隠す人をやるね」


「待ってぇ? パパがやりたい」


 え?

 パパが?

 でも……

 ……これなら怖くないよね。


「うん。もちろんいいよ」


 パパがガゼボの木の柱に顔を隠す。

 

「えーとぉ。だーるまさんがぁ、こーろんだぁ」


 パパが振り向く。


 さすが、戦士の皆は動きが速い。

 マンドラゴラ達はのんびりちょこちょこしていてかわいい。

 ピーちゃんは、参加しないんだね。


「だーるまさんがぁ、こーろんだぁ」


 パパが振り向く。


「ぎゃー!」


 パパにもう少しでタッチできそうなヴォジャノーイ族のおじちゃんが悲鳴をあげて倒れた!?


 何が起きたの!?


「はぁーい。ヴォジャノーイ族のおじちゃん。つ、か、ま、え、たぁ」


 パパがおじちゃんを抱っこで捕まえた。


「ぎぃやー!」


 島中に悲鳴が響く。



 しまった。

 この遊びはダメだった!

 でも、今やめるって言ったらパパに何でやめるのか理由を言わないと……

 顔が怖いからなんて言ったらパパが泣いちゃうよ。


「姫様! 続けましょう!」


 おじちゃん?

 大丈夫なの?

 

「姫様! 先程から前王様がこちらを見ています。ここでやめたら……あとが怖いです……」


 確かに。

 誰の目から見てもパパの顔が怖くてやめたのがバレバレだ。


 誰かがパパにタッチするしかない!


 ウェアウルフ族もグリフォン族もじいじにバカにされないように、やる気になっている。


 皆で目を見合わせて頷く。

 

「さぁ、行くよ!」


 気合いを入れると、パパに少しずつ近づいていく。

 

「ぎぃやー!」

「うわあぁ!」


 皆が次々に倒れていく。

 くっ!

 ここまでか!

 まだだ!

 わたしならやれる!


「残りはぁマンドラゴラ達とぉルゥだけだねぇ」 


 皆の犠牲をムダにはしないよ!

 わたしの本気を見せてあげる!


「だあーるま……」


 ピト


 え?

 マンドラゴラの赤ちゃんがパパにタッチした。

 かわいいっ!


 一瞬の静寂の後、歓声があがる。


「いやったー!」

「終わったぁー!」


 皆……

 心から嬉しそうだ。

 じいじが近づいて来た。

 おじちゃん達が固まったね。

 パパの顔を見て悲鳴をあげたところを見られていたからね……


「あぁ! おじちゃん達! わたしオレンジジュースが飲みたいな!」


 助け船を出さないと!


「オレンジ! オレンジを手に入れて来ます!」


 おじちゃん達が慌てて波打ち際に向かったね。

 

 これでひとまずは助かった。

 ひとまずは……ね。


「あぁ! もうこんな時間だ! 我々も帰ります」


 ウェアウルフ族とグリフォン族が帰って行く。

 いつも、もっとゆっくりしているよね?


「楽しそうだったな。ルゥ」


 え?

 じいじ?

 

「うん……楽しか……楽しかたよ」


 カタコトになっちゃった。

 

「それは良かった」


 じいじが髪を撫でてくれる。


「魔王様とやった事があった。確かだるまさんが転んだだったか……」


 お父さんと……?


「あの時も、オークの顔が怖くて皆が怯えていたな……」


 え?

 パパもいたの?

 確か戦いの最前線だよね?

 大丈夫だったのかな?


「オークはあの頃、エメラルドのオークと呼ばれるオーク族最強の戦士だった」


 エメラルドのオーク?

 

「はぁ!? エメラルドのオーク!?」


 幸せの島に帰って来たママの叫び声が島中に響いた。

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